目次

  1. 残業代の未払いとは
  2. 2021年度の是正企業は1000社余り
  3. 賃金不払い、建設業の是正事例
  4. 民法改正の影響に注意
    1. 賃金請求権の消滅時効期間の延長
    2. 賃金台帳などの記録の保存期間の延長
    3. 付加金の請求期間の延長

 厚生労働省の公式サイトによると、労働基準法では、基本的に1日8時間、1週40時間を法定労働時間と定めています。会社は、労使協定を結び、労働基準監督署に届け出れば、この法定労働時間を超えて労働してもらうことができます。これを「時間外労働」といいます。このほか、休日労働、深夜労働でも割増賃金を支払う必要があります。

割増率の考え方(東京労働局の公式サイトから引用https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/content/contents/000501860.pdf)

 厚生労働省の公式サイトによると、残業代の未払いとは、労働者に時間外労働をさせたのにその労働時間の一部または全部に対し、決められた賃金や割増賃金を支払うことなく労働を行わせることを言います。

 残業代の未払いは、労働基準法37条に違反するため、発覚した企業は、労基署から指導・勧告を受けます。裁判となって未払い分を請求された場合、企業側は遅延損害金や付加金も上乗せして倍以上の額を払わなければならない可能性がありますので注意しましょう。

 厚生労働省は、労基署が監督指導を行った結果、2021度に、不払いだった割増賃金が支払われたもののうち、支払額が1企業で合計100万円以上となった件数などをまとめ、公式サイトで公表しました。

 それによると、是正企業は1069社、対象となった労働者数は6万4968人、支払われた割増賃金の合計額は65億781万円(1社あたり609万円)となりました。

 厚生労働省は是正事例を公表しています。このうち、建設業の事例を紹介します。

「一定時間以上の残業時間に対する残業代が支払われない」との情報を基に、労基署が監督指導を実施。 労働時間は、出退勤時間を勤怠システム、残業時間を残業申請書により把握していた。

残業申請書において残業時間として申請されていない時間に、パソコンを使用した記録が残されていた。また、勤怠システムの退勤時刻の記録と施設警備システムに記録された時間に乖離が認められたため、労働時間記録とパソコンの使用記録等との乖離の原因及び不払となっている割増賃金の有無について調査を行い、不払が生じている場合には割増賃金を支払うよう指導。

パソコンの使用記録や施設の警備システム記録、労働者へのヒアリングなどを基に乖離の原因や割増賃金の不払の有無について調査を行い、不払となっていた割増賃金を支払った。

賃金不払残業の解消のために次の取組を実施した。

①賃金不払残業が発生した1つの要因として、残業時間が長くなると個人の評価に影響があると考え、残業時間を過小に申告していたことが実態調査において判明した。

そのため、適正な労働時間管理に関することを人事評価の項目として新しく設けることや管理者が労働者に労働時間を正しく記録することについて継続的に指導を実施し、労働時間を適正に記録する意識の醸成を行った。

②専属で勤怠管理を行う者を配置し、勤怠記録に乖離がないか逐一確認出来る体制を整備した。

賃金不払残業の解消のための取組事例(厚労省の公式サイト)

 残業代の不払いは、2020年4月施行の民法改正の影響を受けています。消滅時効期間の延長などが主な内容ですが、遅延損害金も影響を受けます。遅延損害金は2020年3月31日までは年6%が適用されていましたが、2020年4月1日からは年3%が適用されます。

 ただし、退職後の賃金請求については、年14.6%の請求をされますので注意しましょう。

 厚労省の公式サイト(PDF方式)によると、このほかの変更点は次の通りです。

 賃金請求権の消滅時効期間を5年(旧法では2年)に延長しつつ、当分の間はその期間が3年とされています。

 賃金台帳などの記録の保存期間を5年(旧法では3年)に延長しつつ、当分の間はその期間が3年とされています。

 付加金を請求できる期間を5年(旧法では2年)に延長しつつ、当分の間はその期間が3年とされています。