割増賃金の計算方法を紹介 時間外・休日・深夜の割増率が重なる場合も
会社が従業員に残業してもらうには、労働組合との協定に加え、割増賃金を支払う必要があります。割増賃金とは、会社が時間外・休日・深夜労働をさせた場合、労働者に労働基準法で定める割合以上に支払う必要がある賃金のことです。時間外・休日・深夜で割増率は異なる上、それらが重なることもあります。そこで、具体的な計算方法と注意すべき労働基準法の改正を紹介します。
会社が従業員に残業してもらうには、労働組合との協定に加え、割増賃金を支払う必要があります。割増賃金とは、会社が時間外・休日・深夜労働をさせた場合、労働者に労働基準法で定める割合以上に支払う必要がある賃金のことです。時間外・休日・深夜で割増率は異なる上、それらが重なることもあります。そこで、具体的な計算方法と注意すべき労働基準法の改正を紹介します。
厚生労働省の公式サイトによると、労働基準法では、基本的に1日8時間、1週40時間を法定労働時間と定めています。会社は、労使協定を結び、労働基準監督署に届け出れば、この法定労働時間を超えて労働してもらえます。これを「時間外労働」といいます。
時間外労働には限度が定められており、原則として1カ月45時間、1年360時間を超えないものとしなければなりません。
また、時間外労働に加え、休日労働、深夜労働でも割増賃金を支払う必要があります。詳しくは、労働基準法第37条に書かれています。時間外労働と深夜業が重なった場合、休日労働が深夜業となった場合など、割増賃金は重複することがあります。
労働の種類 | 労働時間 | 割増率 |
---|---|---|
時間外労働(法内残業)※就業規則上の所定労働時間は超えるが法定労働時間は超えない | 1日8時間、週40時間以内 | なし |
時間外労働(法外残業) | 1日8時間、週40時間を超える | 1.25倍 |
深夜労働 | 22:00~翌5:00の労働時間 | 1.25倍 |
法定休日労働 | 法定休日の労働時間 | 1.35倍 |
時間外労働(限度時間内) +深夜労働 | 月60時間を超えない時間外労働+深夜労働の時間 | 1.5倍 |
月60時間を超える時間外労働※ | 月60時間を超える時間外労働の時間 | 1.5倍 |
法定休日労働 + 深夜労働 | 休日労働+深夜労働の時間 | 1.6倍 |
月60時間を超える時間外労働※+深夜労働 | 月60時間を超える時間外労働+深夜労働 | 1.75倍 |
※中小企業への適用は2023年4月1日から
労働基準法の改正で1カ月60時間を超える法定時間外労働に対して、会社は50%以上の割増賃金を支払わなければなりません。これまで大企業だけに適用されており、中小企業は「25%以上」とされていましたが、2023年4月1日から中小企業にも「50%以上」が適用されます。
深夜(22:00~5:00)の時間帯に1カ月60時間を超える法定時間外労働をさせた場合は、深夜割増賃金率25%以上+時間外割増賃金率50%以上で割増率が75%以上になります。
月60時間の法定時間外労働の算定には、法定休日の労働は含まれませんが、それ以外の休日の法定時間外労働は含まれます。割増賃金の計算を簡単にするためにも法定休日とそれ以外の休日を明確に分けておきましょう。
月60時間を超える法定時間外労働を行った労働者の方の健康を確保するため、引き上げ分の割増賃金の代わりに有給の休暇(代替休暇)を付与することができます。
労働基準法の改正で、月60時間を超える割増賃金率が引き上げられるときに新しくつくられた制度です。
代替休暇制度を導入するには、労使協定が必要です。労使協定では次の項目を定めておきましょう。
ただし、労使協定は、それぞれ労働者に対して、代替休暇の取得を義務づけるものではありません。それぞれの労働者が実際に代替休暇を取得するか否かは、労働者の意思で決めるものです。
割増賃金額=1時間あたりの賃金額×時間外・休日・深夜労働させた時間数×割増賃金率
ここでいう1時間あたりの賃金額とは、月給制の場合、月の所定賃金額÷1カ月の(平均)所定労働時間です。
東京労働局のリーフレットが示している例を見てみましょう。
基本給23万5000円、皆勤手当8000円。年間所定休日が122日、1日の所定労働時間が8時間とします。(家族手当2万円と通勤手当1万5000円は扶養家族の人数や距離に応じて支払っているため、後段で説明する通り計算から除外します)
厚生労働省の公式サイトによると、割増賃金の基礎になるのは、1時間あたりの賃金額です。下記の7つについては、労働との直接的な関連が薄いため、基礎となる賃金から除外されます。
ただし、上記の名称であれば、すべて除外できるわけではありません。一律で支給している場合は除外されません。
残業代を支払わない場合、労働基準法に違反となります。労働基準監督署による是正勧告を受けるほか、罰則を受ける可能性もあります。労働基準法によると、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金です。
労働者側から裁判を起こされた場合、残業代の未払い分に加えて、付加金の支払いを命じられることもありますので注意してください。
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