目次

  1. 評価は上司が行うもの
  2. 生産性の低下を招く理由
  3. 中間管理職の評価はチーム成績
  4. 経営者が評価で果たすべき役割

 筆者は、360度評価を導入していた会社のコンサルティングを請け負ったことが何度もあります。そういう会社は上司を評価したり指示に従わなかったりする社員が必ずと言っていいほどいて、上層部が存在に手を焼いています。そもそも評価というものは、上の立場にいる人が下の位置にいる人に行うものです。上司より責任が軽い社員が、上の立場の人を評価するなんておかしな話ですよね。

 「あなたにとって上司はよい上司ですか」という問いがあったとしましょう。この質問を投げかけられた部下は、上司のよしあしを自分の尺度で評価できると思ってしまう、言い換えれば無意識のうちに「自分は上司よりも上の立場にいる」という経験を重ねてしまうわけです。360度評価を続けるほど、その意識は濃くなっていきます。

 そのうちに、部下は「自分の考えに合わない」、「これをやると大変だからやりたくない」、あるいは「自分にメリットがない」などと言い始め、上司の指示に従おうとしなくなるでしょう。指示された内容をやるかやらないかの選択権が自分にあると勘違いしてしまうようになるわけです。

 本来、社員は上司が望む成果を出すために集中すべきです。しかし、360度評価が浸透している会社では、誰もが上司以外の評価を意識しなければならなくなるため集中力がそがれ、組織全体の生産性が低下してしまいます。

 それに、部下から高い評価を得ている社員が、必ずしも会社にとって有益な人材とは限りません。会社のトップである経営者は、売り上げや利益といった成果につながる働きをする社員が必要だと考えているでしょう。しかし、部下にとっての理想的な上司は、できるだけストレスをかけずに働かせてくれる人、仕事がうまくいかなくても何も言わないでいてくれる人などということがあり得ます。

和田垣幸生さんの寄稿をもとに編集部作成

 厄介なのはこのような問題が組織内で起きていたとしても、360度評価のせいとは気が付きにくいことです。それは因果関係が分かりにくいからです。

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