目次

  1. カゴ落ちとは 英語ではCart Abandonment
    1. カゴ落ち率の平均値と対策の必要性
    2. カゴ落ち率の計算方法
  2. カゴ落ちが起こる原因
    1. 高額な商品
    2. 想定外の配送料金
    3. 支払い方法の制限
    4. クーポンなど割引の不足
    5. 在庫の不足
    6. 入力フォームの使い勝手の悪さ
    7. 商品情報の不足
    8. セキュリティの不安さ
    9. 顧客対応の有無・良し悪し
    10. 他社との比較検討
  3. カゴ落ち対策の方法
    1. 高額な商品購入への特典の用意
    2. 配送料金をわかりやすく提示
    3. 多様な支払い方法の準備
    4. クーポンの配布方法の工夫
    5. 在庫情報の迅速な情報共有
    6. 入力フォームの使い勝手の改善
    7. 商品情報の充実化
    8. セキュリティが万全であることのアピール
    9. 顧客対応の質の向上
    10. 比較検討のしやすさと弱みへのカバー
    11. 原因に関係なく役に立つ対策
  4. カゴ落ちメールを送るコツ
    1. 適切なタイミングで送信する
    2. パーソナライズなメール(ユーザー名や商品の特定)を送信する
    3. 時間制限を設定する
    4. 優れたコールトゥアクションを取り入れる
    5. 追加の価値を提供する
  5. カゴ落ちメールの文例
    1. カゴ落ちから1日程度経過した場合の文例
    2. カゴ落ちから数日経過した場合の文例
  6. 課題を掴むには「顧客体験」から

 カゴ落ちとは、ネットショッピングにおいて顧客が商品を購入しようとして「カゴ」に入れていたにもかかわらず、最終的な購入手続きを途中でやめてしまうことを指します。顧客が商品を「カゴ」に入れた状態で放置することから、「カート放棄」とも呼ばれます。英語では”Cart Abandonment”と表現します。

 カゴ落ちが発生する原因はさまざまですが、主に以下が挙げられます。

  • 商品価格や送料、手数料などの費用が高く感じる
  • 支払い方法が限定されている
  • 送付先や受取人情報の入力が煩雑だと感じる
  • 上記を解決するほど欲しい商品だと感じなかった
  • 商品の在庫切れ

 カゴ落ちはECサイトを運営する企業にとって、非常に大きな機会損失です。下記のような対策を講じ、カゴ落ちをなるべく防ぐための工夫をすることが、ECサイトを継続していくうえで重要となります。

  • 価格設定や送料の見直し
  • 支払い方法の拡充
  • 購入手続きの簡略化

 他にも、顧客の意見や要望に耳を傾け、改善に取り組むことも必要です。

 一般的なネットショッピングのカゴ落ち率は、業種や企業によって異なりますが、平均して60〜80%程度と言われています。

 例えば、月に10,000人が訪れるサイトにおいて、仮に5%に相当する500人全員がカゴ落ちをせずに購入した場合、顧客1人当たりの購入金額が5,000円であれば、250万円が売上につながります。しかし、500人のうち、60%にあたる300人がカゴ落ちしているとなれば、100万円しか売上を上げられないことになります。

 このことからも、ECサイトの運営では、カゴ落ちの対策が必須であることがわかるでしょう。

 前述したカゴ落ち率は、あくまで平均値であり、実際はサイトごとによって大きく異なります。カゴ落ち対策をする際には、まず自社サイトのカゴ落ち状況を把握することが大切です。

 カゴ落ち率の計算方法は、以下の公式で導くことができます。

カゴ落ち率の公式
カゴ落ち率=1 -(購入完了数 ÷ 作成されたカート数)÷ 100

 作成されたカート数とは、サイト内の「カートに入れる」というボタンを顧客が押した件数を指します。例えば、作成されたカート数が1,000件、購入完了数が300件であれば、公式に当てはめるとカゴ落ち率は67%となります。

 カゴ落ちが起こる原因として、考えられる内容は10項目あります。

 顧客は、高額商品ほど購入前にあらためて購入金額を確認します。決済のタイミングで金額を再度見て躊躇(ちゅうちょ)し、結局購入を断念することがあります。

 購入金額の確認で、配送料金込みの金額を確認したときに自分の想定していた金額よりも多い(もしくは、配送料金まで頭に入っていなかった)と購入を断念することがあります。また、個別表示であっても、配送料金そのものが高い場合、同様に躊躇してしまいます。

 支払い方法が、クレジットカードのみであったり、支払い方法の選択肢が限定されていたりした場合、購入をためらってしまいます。また、クレジットカードが手元になく、番号の入力への面倒さが勝ってしまうこともあります。

 顧客がクーポンなどの割引を利用できない場合に、購入を躊躇してしまうケースです。それ以外にも、購入ページにクーポンコードを入力する欄を見たときに、顧客の手元にクーポンなどの割引手段がなかった場合、「割引価格で買えるのかもしれない」と定価で買うことへ損をしたような心理が働き、購入を断念するケースもあります。

 商品が品切れなのかあらかじめわからなかったり、顧客がカートに入れるも在庫を確保できなかったりして、カートに入れた後に品切れの表示がされて購入ができずに断念せざるを得ないときがあります。

 スマートフォンを使用して購入する顧客は多く、購入に必要な会員情報(氏名、住所、メールアドレスなど)などの入力項目の多さや、入力がしにくいといったサイトの使い勝手の悪さから、購入したい気持ちよりも入力をする面倒さが勝ってしまい、購入を断念してしまうことがあります。

 割引適用などのキャンペーンにより反射的に購入したくなるも、冷静になって商品の情報を調べたところ、その商品の魅力や、どのような部分が他の顧客から評価されているのかわからなかった場合に断念するケースがしばしば見られます。また、アパレルの場合はサイズや質感がわからず、本当に自分に合うのか不明瞭であると、購入に不安を覚えて断念することもあります。

 個人情報やクレジットカード情報の入力をするにあたって、サイトのセキュリティ対策への不安が勝ると断念する可能性が出てきます。要因として、セキュリティポリシーなどが目につくところになく、確認ができないなどが考えられます。

 購入前後ともに、疑問が生じた際に電話やメールでの問い合わせ対応があるか否かで判断をすることがあります。特に、購入後に商品に不具合があった場合に、返品交換や返金対応をしてもらえるのかなどの不安が勝って断念することが少なくありません。Amazonや楽天市場などのショッピングモールでは、「対応が不十分」といった顧客からの評価が低い口コミが掲載されて、他社への流入を促すきっかけになってしまうケースがあります。

 同じ商品を販売している他社サイトと比較し、配送料込みの金額や配送までの早さ、顧客からの評価(星の多さ)などを理由に、他社の方が優位だと判断された際に、しばしばカゴ落ちが発生します。

 「カゴ落ちが起こる原因」に対して、どのような対策を講じるべきなのでしょうか。有効なのは、購入の妨げとなる主原因から逆算した対策です。具体的には次のような取り組みをすると良いでしょう。

 ◯円以上の購入で分割支払いを可能としたり、手数料を事業側負担としたりすることにより、顧客の経済負担を減らす工夫です。キャンペーンによる割引やクーポンなどのプレゼントをすると、さらにその効果を高めることができます。

 全国一律の配送料金の場合には、顧客が支払う総額に手続き前後でブレを生じさせないよう、配送料込の金額を提示します。地域別の配送料金を導入している場合は、顧客情報の入力後に表示がされるため、事前に配送料の情報を速やかに確認できるよう配送料に関するページを作っておきましょう。

 クレジットカードやコンビニ後払いの方法など、多様な支払い方法を用意しておきます。他にも、携帯端末上にすでに個人情報やクレジットカード情報を登録している利用者向けに、ワンクリックで手続きが済み、入力の手間が省ける支払い方法を取り入れるのも有効です。これは、Amazon Pay(Amazon以外のサイトで、Amazonに登録している住所情報とクレジットカード情報を利用して支払う方法)やキャリア決済(携帯料金の引き落とし時に一緒に支払う方法)が代表的です。

 今回購入したい分のクーポンがない場合でも、次回に必ず使えるクーポンを顧客にプレゼントするなどの工夫によって、購入を断念させるだけでなく、次回の購入にもつなげる効果も期待できます。顧客が抱く期待感を損ねないことが大切です。

 商品在庫の有無をリアルタイムで確認できるよう、迅速な情報共有・発信が可能なシステムの導入を検討しましょう。

①EFO(Entry Form Optimization)のツールを導入する

 EFO(Entry Form Optimization)とは、顧客の入力漏れや手間と感じる面倒さを防ぐために、あと何項目入力すれば良いのかを表示したり、必須項目の漏れがあればすぐにアラートを出したりする便利なツールです。ツールを導入することで、「どの項目で購入を諦めたのか」などの分析もできるため、入力ステップを減らしたり、項目を見直したりなど、具体的な数値から原因を分析して改善策を施せます。

②ゲスト(会員登録不要)で購入可能にする

 ECサイトのアカウントを持っていないユーザーでも、必要最低限の商品発送情報を入力するだけのゲスト注文を可能とすることで、注文手続きの簡素化を図れます。「会員登録」という言葉や顧客情報を登録するフローに懸念がある顧客にも効果的であり、前述したAmazon Payやキャリア決済などにも通じます。

 ページ内に商品の寸法や色味、素材など詳細な情報を明記しながら、複数枚の商品の写真や動画などを掲載して、顧客の商品イメージと実物がかけ離れないようにします。

 プライバシーポリシーは目に留まりやすい位置に目立つよう表示すると、顧客に安心感を与えます。単にアピールするだけでなく、実際にSSLサーバー証明書などを使用したシステム面での安全性の確保は必須です。顧客の個人情報を守ることを第一としましょう。

 何か疑問や不満な点が生じた顧客に向けて、電話やメールで問い合わせができる窓口を設けましょう。質問や疑問に迅速かつ丁寧に対応ができるよう環境を整えることも重要です。また、チャットによる対応を取り入れて利便性を高めることも方法のひとつです。

 同じ商品を販売している他社があると、顧客は比較検討をするため、価格や特典などをわかりやすく明示しましょう。他社と比較して弱みとなる部分はカゴ落ちとなる原因となるので、迅速に調査を行い、対策を練ることが必要です。

 最後に、原因に関係なく役に立つ対策をご紹介します。ぜひ上記と組み合わせて活用することをおすすめします。

 また、カゴ落ちへの対策は、原因に合わせて行うのが効率的ですが、現実的にはユーザーからリアルタイムでカゴ落ちした理由を聞くことは難しく、原因を特定するのに時間がかかったり、時間をかけても明確にできなかったりする場合もあります。下記で紹介するのは、そのような場合にも対策になるソリューションです。

①カゴ落ち時のポップアップ表示

 購入過程のページから別のページに移る瞬間に、ユーザーの画面上に注文前である表示をポップアップさせ、注文がまだ完了していない状態を顧客に知らせることでカゴ落ちを防ぐ方法です。

 ユーザーによっては意図的にページを離れている人も想定されるので、商品購入の最終確認画面から離れる場合には、今だけのお得なキャンペーン情報も掲載することで「今買わないと損になる」と訴求して、ユーザーの注文意欲を高める手法もあります。

②カゴ落ちメールの配信

 カゴ落ちになってしまったユーザーに、購入を再検討してもらい、注文を完了させるよう促すメール(カゴ落ちメール)を配信する方法です。カゴ落ちメールの内容には、現在のカートの中身だけでなく、ユーザーの注文意欲をより高めるために、お得なキャンペーン情報も掲載することもあります。カゴ落ちメールの具体的なポイントや内容は、次の章でご紹介します。

 カゴ落ちメールとは、カゴ落ちとなったユーザーに対して配信するメールのことです。カゴ落ちメールの配信は、ユーザーにカゴ落ちを認識してもらい、最終的な購入を促す目的で行われます。

 カゴ落ちメールは、カゴ落ちになったユーザーに自動的にメールを配信できるITツールを用いるのが一般的です。カゴ落ちメールを送るにあたって重要な点をお伝えします。

 カゴ落ちメールは、カゴ落ち後すぐに送信すると、ユーザーに過剰な追跡とみなされ、不快感を与えてしまいます。そのため、ある程度時間を置いてから送信する配慮が必要です。

 カゴ落ちメールは、よりパーソナライズな内容のほうが効果的です。カゴ落ちメールを配信できるツールの多くは、配信の対象者が会員登録をしている場合、メールの内容をユーザーの氏名+カゴ落ち商品のセットにできるので活用してみると良いでしょう。可能であれば、カゴ落ち商品の情報から予測した、該当ユーザーが興味を持ちそうな他の商品の情報を追記するのもおすすめです。

 注文を完了させるまでの時間制限を設けることで、ユーザーを追い立てる効果があります。例えば、カゴ落ちメールを1~3時間後など早めに送信をして、カゴ落ちから24時間以内に注文を完了すると割引が適用される、といった方法があります。

 カゴ落ちメールの本文には、ユーザーが簡単に注文を再開できるように明確で効果的なコールトゥアクション(行動呼びかけ)を設置することが重要です。例えば、「今すぐ注文確定する」「買い物を続ける」など具体的なアクションを促す文言が良いでしょう。

 本文には、カゴ落ちした商品の情報だけではなく、当サイトで購入する価値を追加でアピールすることも重要です。

 ここで最も重要な点は、「ユーザーは注文を忘れているのではなく、意図的に断念したのかもしれない」という視点を念頭に入れておくことです。カゴ落ちメールの「お買い物をお忘れでないでしょうか」というタイトルは一般的に使われていますが、現代ではオンラインショッピングは一般的になり、ユーザーの不慣れな状況はすでに珍しいと言えます。

 「追加の価値」を提供するときは、この点を前提に内容を考えることが重要です。以下、多くのECサイトでよく用いられている「追加の価値」です。

メール内容 備考
お得なキャンペーン情報 定価で断念したユーザーや初めてのユーザーに効果的な手法。例えば、期間限定のクーポンや送料無料などの特典を提供するなど
注文手続きの簡素化のアピール 注文手続きが簡単であることをアピールして、ユーザーの注文手続きに対するハードルを下げる手法。例えば、クレジットカードの登録不要や、ゲスト注文可能など
アフターサポートの案内 「商品の返品・交換、もしくは返金への対応」に関する情報を詳細に明記する手法。ユーザーの不安要素を払拭して購入の再検討を促す

 ここで、実際のカゴ落ちメールの文例を2パターンご紹介します。

 以下のようなケースでカゴ落ちから1日程度が経過したユーザーに、リマインドを送る文例です。

  • オンライン購入が不慣れで、購入したつもりで未完了のままになっているケース
  • 購入過程で何らかの入力不備や不明点がクリアにならずに、手続きを停止したままになっているケース
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この度は、[商品名][商品画像] をショッピングカートに追加していただき、誠にありがとうございます。
しかし、現時点でご注文は完了されていないようです。

ご注文を完了するためには、以下のリンクをクリックしてショッピングカートにアクセスし、お支払い手続きをお済ませください。
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もし何かご不明な点がございましたら、弊社のサポートチームがお手伝いいたしますので、お気軽にお問い合わせください。

またのご利用をお待ちしております。
[企業名]

 購入前に躊躇し、そのまま購入意欲が低下してしまって数日が経過しているケースは多くあります。その場合に、顧客へ期限付きクーポンの発行など追加価値の提供を試みる文例です。

件名: [ユーザー名] 様、お探しの商品を特別特典でご検討いただけます

本文:
いつも[企業名]をご利用いただき、誠にありがとうございます。

この度は、[商品名][商品画像]をご検討いただき、誠にありがとうございます。
もし、商品をまだご検討いただいていましたら、この度、本日限りの特別なクーポンをご用意いたしましたのでご活用ください。

クーポンは、以下の専用サイトから【クーポンコード】をご入力いただけますと、ご利用が可能となっています。
なお、クーポンのご利用は、本日23:59までとなりますので、お早めにサイトにアクセスください。
[注文確定リンク]

もし何かご不明な点がございましたら、弊社のサポートチームがお手伝いいたしますので、お気軽にお問い合わせください。

またのご利用をお待ちしております。
[企業名]

 自社のECサイトにおいて、カゴ落ち対策を講じるべき課題は何であるのかを考えるときは、まず自ら顧客となり、実際にサイトで商品を購入するまでの体験を何度か行うことをおすすめします。

 顧客の目線で、顧客と同じ体験をすることによって、何を課題と感じるかを明確に認識できるでしょう。その課題の具体的な対策について悩んだら、ぜひこの記事で紹介した内容を参考にしていただきたいと思います。