目次

  1. 中小企業こそ求められる健康経営
  2. 小規模企業の健康経営もサポート
  3. 表彰企業の取組みと成果は
  4. 健康経営で明るい日本の未来を

 少子高齢化による労働人口の減少傾向が続くなか、中小企業でも人材確保・生産性向上に向けた従業員の健康維持・増進の重要性が高まっています。経済産業省は、2017年から「健康経営優良法人(中小規模法人部門)」の認定を開始。中小企業で働く方の健康管理を経営的な視点で考え、取り組む企業を支援しています。

 大同生命はこうした社会的背景を踏まえ、中小企業の健康経営の取組みを表彰する「DAIDO KENCO AWARD」を創設しました。アワードの創設メンバーや現在の企画・運営に携わる大同生命の担当者に話を聞きました。

大同生命健康経営推進課係長の岡村麻矢さん

 岡村麻矢さんは、「中小企業こそ健康経営が求められています」と強調します。

 「中小企業では、大企業と比べて従業員一人ひとりが果たす役割は大きく、企業規模が小さいほど、従業員の方が健康を害した場合の業績への影響が大きくなります。そのため、従業員の健康維持・増進は、中小企業経営の重要な要素の一つになっています。当社は保障だけではなく、KSP等の健康支援サービスを提供することで、中小企業の健康に関する課題の解決に寄り添いたいと考えています」と話します。

 大同生命では2016年から、中小企業の健康経営の実践支援に向けた取組み「DAIDO KENCOアクション」を推進しています。

 その取組みのなかで、2017年から健康経営実践ツール「KSP」の提供を開始。サービスの利用は無料で、従業員の健康診断結果の集計・履歴管理、ヨガ・ストレッチなど月3千のレッスンから自由に選択して受講できるオンライン運動レッスン、オンライン上で健康相談等ができる産業保健支援サービス、歩数を記録し楽しく競い合うウォーキングキャンペーンなど、健康増進に向けた様々なメニューが揃っています。そして2023年6月には、KSPの導入企業が約3万5千社を突破。中小企業経営者に好評を得ています。

 少し遡りますが、2022年1月からは「KSPによる病気の予防」と「保障」を一体化した健康増進型保険「会社みんなでKENCO+」の発売を始めています。低廉な保険料で「死亡」「障がい状態」「重大疾病(がん・急性心筋梗塞・脳卒中)」を幅広く保障。この保険商品は、1日あたりの平均歩数が8千歩以上の場合に翌年の保険料が割り引かれるなど、健康増進へのモチベーションを高める内容となっています。

大同生命健康経営推進課長の大橋慶也さん

 岡村さんの上司である大橋慶也さんは、「中小企業は、ヒト・モノ・カネといったリソースが大企業と比べると決して多いとは言えず、健康経営が重要と分かっていても、日々の経営に追われるのが現状です。国も中小企業の健康経営を進めていますが、実際に取り組んでいるのは従業員数が50名以上の中規模の法人が中心です。そのようななか、従業員規模が比較的小さい企業でも、手軽に・簡単に健康経営に取り組んでいただけるよう、毎年KSPの機能や健康支援サービスを充実させています」と話します。

 具体的な成果につながったケースも出始めているそうです。

 岡村さんは、「以前、営業担当だった頃に携わった20人規模の製造業のお客さまは、KSPを活用して健康診断結果の管理を進め、社長自らが積極的に従業員へ健康増進の声かけをされたことで、社内で様々な取組みが行われるようになりました。そして、経済産業省が進める『健康経営優良法人』に認定されました」と付け加えました。

 同社が毎月実施している中小企業経営者アンケート調査「大同生命サーベイ」(2022年7月)によると、中小企業の健康経営の認知度は前年度調査より10ポイント高い32%となり、健康経営を認知している企業の68%が「取組意向がある」と回答するなど、健康経営への関心が高まりつつあることがうかがえます。さらに、実際に健康経営に取り組んだ企業では、「従業員の健康維持・増進につながった」といった効果も確認できています。

 大同生命が創設した「DAIDO KENCO AWARD」は、「健康経営優良法人認定制度」の評価項目をベースにアンケート項目を10問に限定することで、健康経営優良法人認定制度に比べて手軽に応募できるよう工夫されています。健康経営に取り組む企業の後押しに加え、健康経営をどうやって進めればよいか分からない企業については、取組みを始める「きっかけ(第一歩)」になります。

 アワード表彰の選考では、健康経営に関するアンケートに加え、従業員の健康診断結果の登録状況やウォーキングキャンペーンの参加状況など、企業の健康に関する具体的な取組内容も評価しているそうです。

 大橋さんは、「『健康経営優良法人認定制度』は、従業員数50人以上の企業に義務化されたストレスチェックが認定基準になるなど、中小企業の中でも比較的規模の大きい企業が対象となる傾向にあります。その点、『DAIDO KENCO AWARD』では比較的規模が小さい企業の取組みにもスポットライトが当たるよう工夫しています」と話しました。

 第1回のアワードでは、KSP導入企業を対象として約450社から応募があり、従業員規模5人以下の企業が43%を占めているのが特徴です。そして、健康経営に関して特に顕著な取組みをしている75社が表彰されました。

 ここで、表彰企業の事例をいくつか紹介します。

 長野県の建設業(従業員数約20名)は、社員の喫煙率、内勤者のメタボ率が高く、また現場で働く従業員の多くが腰痛を抱えるなど体への負担も大きかったことが健康経営を進めるきっかけになりました。

 KSPの活用に加えて社内の分煙化を進め、現場では完全禁煙にしました。現場で働く従業員の体に負担がかからないよう、サスペンダーや暖かいアンダーシャツ・空調ベストや電熱ベストを支給しています。

 インフルエンザの予防接種補助や婦人科検診補助を導入し、ノー残業デーや独自のリフレッシュ休暇制度も導入。健康教室を毎年開催し、腰痛予防などのストレッチを学ぶほか、毎月社内で健康について話し合う機会も作りました。

 この結果、喫煙率が46%から28%に下がり、メタボ率や腰痛での欠勤日数、1ヵ月の平均残業時間も減少。さらに売上げが約28%アップし、従業員数も増えました。離職率の低下にもつながったといいます。

 北海道の不動産会社(同5名)は「平均年齢が年々上がって41.6歳となり、今いる社員が定年まで元気に働いてほしい」という想いが強くなったことから健康経営を始めました。毎月地域のごみ拾いを行いながらウォーキングをして、地域貢献と従業員の健康づくりを両立させています。

 島根県の建設コンサルタント会社(同5名)は、従業員規模は50名以下で労働安全衛生法上の実施義務対象企業ではありませんが、ストレスチェックを実施し、高ストレス者がいた場合は医師の面談などの処置を講じています。取組みを始めて以降、この会社ではメンタル不調を訴える従業員は減少しており、健康診断結果の数値も改善したといいます。

 ウォーキングなど運動への積極的な姿勢が評価された企業もあります。

 東京都の税理士事務所(同10名)は、「朝礼時にストレッチや腰痛・肩こりを改善する体操、筋トレなどを実施。また、ウォーキングキャンペーンに毎回参加し、事務所内でグループに分かれて対抗戦を実施するなど、従業員の健康に対するモチベーション向上の工夫を実施しています。これらの取組みを通じて、自然と従業員同士のコミュニケーションが活性化した」といいます。

 長野県の製造業(同20名)は、ウォーキングで1日8千歩を達成した従業員に健康食品セットを、未達成者にも参加賞を贈っています。その結果、「体調不良などによる急な欠勤者が減り、人手不足の調整をすることが減りました。生産計画も立てやすくなったと感じています」とコメントしています。

 今回のアワードで表彰された企業からは、経営者の健康経営にかける想いが伝わってきます。経営者からは「採用環境の厳しい昨今にあって、よい人材を集めるためには福利厚生の充実が欠かせず、『DAIDO KENCO AWARD』の表彰を受けたことで応募人数が増える効果も期待したい」という声が上がっているといいます。

 これらの取組みは、「DAIDO KENCO AWARD」の特設サイトで確認することができます。

 大橋さんは、「健康経営の認知度が決して高いとは言えない状況では、周りの経営者の方に取組状況を聞きたいと思っても、気軽に相談できないかもしれません。多くの経営者の方に当社の特設サイトにお立ち寄りいただき、健康経営を実践している企業の取組事例をご覧いただきたいと思っています。そして、将来的には、健康経営に取り組む経営者同士のコミュニティー形成などにつながればうれしく思います」と話しました。

 大同生命は今年度も引続き「DAIDO KENCO AWARD」を開催します。2023年9月頃から応募を開始し、2024年3月頃に表彰企業を発表する予定です。

 大同生命は、期待を超える価値をお届けする“中小企業に信頼されるパートナー”を目指し、生命保険会社に期待される「保障」という価値に加えて、「保険にとどまらない価値」を提供していくことを方針としています。そして2023年4月には、この「保険にとどまらない価値」の開発・推進を担う部門「お客さまバリュー開発部」を新設しました。

大同生命お客さまバリュー開発部長の長谷部隆さん

 お客さまバリュー開発部長の長谷部隆さんは、「近年、中小企業が取り組むべき課題は多様化・複雑化しており、当社に寄せられる保障以外の価値提供への期待は一層高まっています。そういった声にお応えするため、当部ではKSPをはじめとした健康経営の実践を支援するサービスなど、中小企業が抱える課題の解決を支援するサービスを開発・提供しています」と話します。

 最後に、長谷部さんが今後のビジョンを語ってくれました。「中小企業の健康経営の実践をご支援できるよう、KSPを1社でも多くのお客さまにお届けしていきたいと考えています。健康経営の主役はあくまで経営者のみなさまです。これからも経営者さまの悩みに寄り添い、保障の提供はもとより、保障以外でも経営課題の解決のお役に立てる様々なサービスを提供していきます」