目次

  1. 正月に家族分のかつお節を削る
  2. 大量の返品に生じた疑問
  3. 「煎り酒」のリニューアルに着手
  4. 社長就任と日本橋の再開発
  5. 「だし場」が想定外の人気に
  6. 十三代髙津伊兵衛を襲名
  7. 継ぎたいと思える会社に

 にんべんは、創業者の初代・髙津伊兵衛が20歳のときに日本橋の一画に戸板を並べてかつお節や塩干の商いを始めたのが始まりです。その後、かつお節問屋を開業し、1720年、現在の本社がある日本橋室町にかつお節の小売店を出したそうです。

 売上高は約150億円(23年3月期)で、従業員は251人。家庭用と業務用の食品、調味料の製造販売を手がけています。

 創業家の後継ぎである髙津さんは物心ついたころから、家業について理解していたそうです。

 「家の中では、大みそかと三が日、七草がゆ、鏡開き、旧正月などは江戸時代から決まった伝統食を続けていました。先代の父に言われ、元旦は当時子どもだった私が家族分のかつお節を削ってお雑煮のだしをひいていました。従業員や生産者の方々がよく自宅にいらしていたので、家業が何をしているのか、触れる機会は多かったです。小学校のとき、先生に『将来何になりたいの?』と聞かれ『家を継ぐように祖母に言われています』と答えていたらしいです」

 先代に家業を継ぐ意志があるかを聞かれたのは、大学に進学するときでした。家業を継ぐ気がないなら家をでていくように言われたそうです。

 「そのときは明確にやりたいものもなく、とりあえず大学に進んでその後家業を継ごうと決めました。後から思うと、継がないなら家を出ていけといわれたのはなかなか衝撃でした(笑)」

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