目次

  1. 赤字解消へ単価見直しに着手
  2. 経営の安定が新たな一歩に
  3. 創業者悲願のオリジナルブランド
  4. 百恵さん結婚式の引き出物に
  5. SNS経由の売り上げが15%に
  6. 大手百貨店でポップアップストア
  7. 技術継承に向けた一手も
  8. 逆境にもわきでるアイデア

 「財務表をみてがく然としました。うちは赤字を垂れ流す状態だったのです。累積赤字は3千万円にのぼりました。原因ははっきりしていました。安すぎたのです。値上げはしないという昔ながらの美徳が仇になった格好でした」

 飛田さんは家業入りしてそうそう、単価の見直しに踏み切ります。「もともと安かった上に希少な素材だからできたことですね」と謙遜する飛田さんですが、値上げにあたり、取引先を納得させるだけの努力も重ねてきました。

 レーデルオガワのものづくりは驚くほどに手仕事が駆使されています。

 その工程は脂入れ、乾燥、削り、グレージング(艶出し)、染色、仕上げからなりますが、たとえば文字どおり脂を入れて潤いを与える脂入れは一枚一枚手作業ですし(一般にはドラムと呼ばれる洗濯機のようなマシンで大量に行う)、余分な皮を取り除く削りも、繊維を寝かせるグレージングも、職人芸なしには成立しません。

脂入れの工程(レーデルオガワ提供)

 皮は生き物であり、その個性を引き出そうと思えば“手”に勝るものはないのです。しかしけして万能ではありません。

 「当時の仕上がりは素人目にみても出来不出来の差が大きかった。少なくない割合で(表面が)曇るんです。年かさの職人に理由を尋ねれば『革はそういうものだから』というすげない返事でした」

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