ピラミッドストラクチャーとは 具体例(図表付き)を用いてわかりやすく学ぶ
相手に納得できる説明をしたい。けれど、どんなふうに伝えればよいのかわからない。こんなことにお困りではありませんか?ここで役に立つのが「ピラミッドストラクチャー」です。この記事では、会議の専門家がピラミッドストラクチャーの活用方法と作り方、注意点についてご紹介します。
相手に納得できる説明をしたい。けれど、どんなふうに伝えればよいのかわからない。こんなことにお困りではありませんか?ここで役に立つのが「ピラミッドストラクチャー」です。この記事では、会議の専門家がピラミッドストラクチャーの活用方法と作り方、注意点についてご紹介します。
ピラミッドストラクチャーとは、結論と根拠をセットにして、ピラミッド状に図示して伝える手法です。ロジカルシンキング(論理的思考)のフレームワークとして使用されています。
ピラミッドの上段は「So What(だから何?)」=「結論」を提示し、その下段に「Why So(それはなぜ?)=「根拠、理由」を提示し、上下のつながりを強固に示します。このつながりを連ねていくように表記したものが、ピラミッドストラクチャーです。
ピラミッドストラクチャーを活用すると相手に伝えたいことが伝わりやすくなるため、報告書やプレゼンテーション、論文発表などの「自己主張を行う場面」で重宝します。また、問題解決において、結論が論理的に成り立っているかを確認するときにも使用できます。
自分の意見や考えを周りに主張したい場合、その内容が論理的にきちんと成り立っているのか、根拠は何かを相手に理解してもらう必要があります。しかし、次のような伝え方だとどのように思うでしょうか?
「コスト削減のためにはテレワークを導入すべきです。何がなんでもそうすべきです!」
これだとただの主張となり、相手を納得させることはできません。そこで、ピラミッドストラクチャーを活用し、その結論に至った根拠や理由をいくつか伝えることが必要です。
「コスト削減のためにはテレワークを導入すべきです。その理由は三つあります。一つ目は…、二つ目は…三つ目は…」
このように伝えられると、相手の納得を得やすくなります。感情論ではなく論理的に話を展開し、相手に納得してもらうためにもピラミッドストラクチャーが重要なのです。
ピラミッドストラクチャーは、アメリカのコンサルティング会社「マッキンゼー」で、コンサルタントの育成や資料作成、報告能力向上のために開発されました。
例えば、以下のような場面でよく活用されます。
ピラミッドストラクチャーの活用シーン | |
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事業報告書の作成 | 業務における行動に対しての理由を明確に伝えられます |
プレゼンテーションや会議での主張 | こちらが伝えたいことに対して論理的に納得をしてもらえます |
取引先との交渉 | 自社商品の優位点などを論理的に示すことで優位な交渉ができます |
研修などの教育 | 学ぶことがなぜ必要なのかを理解してもらいやすくなります |
上記のようなビジネスシーン以外でも、伝えたいことを相手に理解してもらう場面で多く活用されています。
ピラミッドストラクチャーは一見すると、ロジックツリーに形が似ています。しかし、その内容は大きく異なります。
ピラミッドストラクチャーの上下は、「結論」→「根拠」の繰り返しで成り立っているのが特徴です。結論に対して説得力を持たせることができるため、「主張や結論の説明」に使われます。
一方、ロジックツリーは「大」→「中」→「小」のように、大きな塊を細かくする関係で構成されます。ものごとを漏れ・重複なく細分化できるため、主に「問題解決(真の原因の追求、方法の具体化など)」に使われます。
それぞれ使う目的が異なるため、状況に応じて使い分けを行いましょう。
ピラミッドストラクチャーをどのように活用するのか、その具体例を図表を用いてご紹介します。
「コストダウンでテレワークを導入するべき」という結論でピラミッドストラクチャーを作成する場合は、以下のようになります。
「業務の効率化を目的に社員研修に力を入れるべき」という結論でピラミッドストラクチャーを作成する場合は、以下のようになります。
それでは、実際にピラミッドストラクチャーを作成するにはどうしたらよいのでしょうか。ここからは、ピラミッドストラクチャーの作成方法を詳しくご紹介します。
ピラミッドストラクチャーの作成方法 |
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ステップ1.論点と主張を明確にする ステップ2.論理のストーリー(フレーム)を考える ステップ3.情報をグルーピングする ステップ4.「結論」と「根拠」のつながりをつくる ステップ5.論理的な確認を行う |
まずは、今からどのようなことに対して主張を行うのか、その論点を明らかにします。先ほど紹介した事例では「コストダウンを行うためには」や「業績を上げるためには」といった点が論点になります。
また、その論点に対して自分が主張したい結論(先ほどの例では「コストダウンを行うためにテレワークを導入する」が該当します)をイメージしておきましょう。ただしこの時点では、その結論が論理的に成り立っているかどうかは不明であると留意してください。
論点に対して、多角的な視点からいくつかの「仮説」を立て、それを証明する「根拠」となる具体例や事実を示すようにします。その根拠には、漏れや内容の重複がないことを確認しましょう。
このときの「仮説」がきちんとした「根拠」で成り立っていれば、その「仮説」は論理的に正しいといえるため、論理のストーリーが成り立ちます。
「根拠」に対しての情報を集めたら、共通する内容をグルーピングしましょう。グルーピングにより、足りない情報や情報の矛盾点に気づくことがあります。
例えば「コストダウンのためにテレワークを導入すべき」の場合、「電気代削減」「空調費削減」「水道代削減」などを思いついたら、グルーピングして「光熱費の削減」とします。この時点で他に削減できるものはないかを考えると「通勤費の削減」を思いつくこともできます。
また、この段階で不要と思える情報は削除しておきましょう。例えば「テレワーク」に意識が向きすぎて、「自分の時間で仕事ができる」などの意見が出ている場合、コストダウンには直結しない内容となるので削除しておいたほうがよいでしょう。
ここで、最初に立てた「結論」と、ステップ2(論理のストーリー〈フレーム〉を考える)で立てた「仮説」をつなげます。さらに「仮説」の下には「根拠」を配置します。
これで、ピラミッドストラクチャーの1段目「結論」、2段目「結論に対しての根拠」、3段目「根拠に対しての具体的例や理由」を並べることができます。
できあがったピラミッドストラクチャーの全体を見て、論理的な矛盾点がないか、結論とのズレはないかなどを確認します。また、2段目、3段目のレベルに偏りが生じていないかも確認しましょう。
例えば、一つ目の根拠に対して3段目の理由や具体例がとても詳しく記載されているのに対して、別の根拠に対しての3段目が曖昧だったり、もっと詳しく記載が必要な場合は内容のレベルを合わせる必要があります。
全体の整合性を見て問題がなければ、ピラミッドストラクチャーの完成です。
ピラミッドストラクチャーは、論理的な説明を行い相手を納得させるにはとても役に立ちますが、以下のような注意点やデメリットもあります。
ピラミッドストラクチャーの注意点・デメリット |
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・理解度の不足が起こる ・結論ありきで展開をしてしまう ・根拠が間違うと失敗する恐れがある ・根拠の数が少ないと納得できず、多いと論点がズレる |
ピラミッドストラクチャーは、わかりやすく示すために情報を端的な言葉で伝えています。そのため、なぜその結論なのかの背景を知らないと、内容に対して理解が難しくなることもあります。
そもそもどうしてそのテーマが挙げられたのか、その背景や理由などを伝えたうえでピラミッドストラクチャーを活用していきましょう。
ピラミッドストラクチャーは、最初に結論を決めてそれを成り立たせるように根拠を探っていきます。一つの結論に目を向けがちになるため、伝える内容に偏りが生じ、別の結論や方法などを排除してしまう危険性があります。
結論となる主張は、あくまでも一つの考えであることを意識しておきましょう。
仮説に対しての根拠を集める段階で、具体例や事実が間違っていないか確認しましょう。間違ったものをそのまま根拠としてしまうと、最初に立てた結論が間違っているとみなされ、失敗する恐れもあります。
根拠は「事実であること」を確認して取り扱うように注意してください。
主張とする結論に対して、根拠の数が一つでは相手が納得できるものにはなりません。最低でも二つ以上、できれば三つは用意しておきましょう。
逆に、根拠の数が多ければよいというものでもありません。多すぎると、論点がずれてしまう危険性もあります。多くても五つ程度に抑えておきましょう。
また、ピラミッドストラクチャーの階層も多すぎると主張がぼけてしまいます。「結論」「根拠」「具体例」の3層で示すようにしましょう。
現代社会は、いかに短い時間で相手を納得させるかがビジネスの鍵となっています。いかに端的に、そしてわかりやすく自分の思いを主張できるかが重要なのです。
ピラミッドストラクチャーは、人を納得させるうえでの大きな武器となります。まずは身近な人から試してみて、何度も作成と練習を重ねていきましょう。そうすることで「この人の主張はいつも納得できる」といわれるようになりますよ。
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