目次

  1. 会社名の決め方|押さえておくべきルール4つ
    1. 会社の種類を入れる
    2. 使用可能な文字や符号が決まっている
    3. 特定の文言が使えない
    4. 同一住所に同じ会社名は使用できない
  2. 会社名を決めるときの注意点
    1. 同名の会社がすでにある場合は注意する
    2. ドメイン取得できるか
    3. 外国語でマイナスイメージにならないか
    4. 発音しやすい、聞き取りやすい名称にする
    5. 事業内容が変化してもよい会社名にする
    6. 後からでも変更できる
  3. 会社名を決めるときに使えるアイデア
    1. 理念・やりたいことなど意味を持たせる
    2. 縁起のいい言葉を取り入れる
    3. わかりやすいワードで考える
    4. 人名・地名などを取り入れる
  4. 会社名のネーミング一覧
    1. 会社の理念を反映させた会社名
    2. 縁起のものからとっている会社名
    3. 造語を作ってつけた会社名
  5. ルールを守り、納得のいく会社名を決めよう

 会社名(商号)は自由に決められるものですが、法律に基づき、いくつかの要件を満たしていないと登記ができません。

 会社名には、必ず会社の種類に応じた法人格を、名前の前または後に入れないといけません。例えば、会社の法人格が株式会社であれば「株式会社◯◯」か「◯◯株式会社」となります。合同会社であれば、「株式会社」の部分が「合同会社」になります。

 前後どちらに入れるかについて良し悪しはないため、見た目や発音したときの語感でしっくりくるものを選びましょう。

 会社名には、使用可能な文字や符号が決まっています。使用可能な文字は以下のとおりです。

  • 漢字
  • ひらがな
  • カタカナ
  • ローマ字(大文字・小文字)
  • アラビア数字

 ローマ字は、大文字と小文字どちらも商号に使用・登記できます。また、ローマ字と日本文字とを組み合わせた商号を登記することもできます。したがって、法律上は、「ABC東日本株式会社」や「777株式会社」といった会社名も可能です。

 一方、使用できる符号は以下のように決められています。

  • 「&」(アンパサンド)
  • 「’」(アポストロフィー)
  • 「,」(コンマ)
  • 「-」(ハイフン)
  • 「.」(ピリオド)
  • 「・」(中点)

 符号は字句を区切る際に限り使用できます。商号の先頭や末尾に使用することはできません。ただし「.」(ピリオド)については、省略を表すものとして商号の末尾に用いることも可能です(参照:商号にローマ字等を用いることについて|法務省)。

 「支店」「支社」「支部」など、会社の一部であることを示す言葉は使えません。また、「銀行」「学校」といった、その事業を行っている会社だけが使用できる文言も同様です。

 同一住所に同一名の会社名は登記できません。複数の会社が同一住所に集まるバーチャルオフィスやコワーキングスペースを利用して起業する場合は、同一名の会社が入居予定の施設にないかどうか、事前に確認しましょう。

 法的なルール以外に、会社名を決めるとき注意すべき点を解説します。

 同一住所に同じ会社名は使用できないということは、裏を返せば、住所が異なれば同名の会社で登記できます。しかし、住所が異なっても会社名が同じ、または類似した会社名によるトラブルが起こることも想定されます。

 また、すでに商標登録をされている文言を会社名として利用した場合、商標権侵害で訴えられる可能性もあります。これらのリスクを回避するため、同名または類似の会社名や商標登録がされていないか、事前に調査することをおすすめします。

①商号の調査方法

 同名または類似の会社名が存在するかどうかはインターネットで調べられます。一例として「登記・供託オンライン申請システム」の「商号調査」を活用した調査方法を説明します。

 検索方法の箇所を「フリガナ」、検索条件を「完全一致」、区分を「商業及び法人」、本支店・事務所を「全国」と設定し、「フリガナ」の箇所にカタカナでフリガナを入れると、全国にあるその読みをする商業および法人(※)を検索できます。

※商業登記:株式会社・合名会社・合資会社・合同会社のみが該当
 法人登記:会社以外の一般社団法人や一般財団法人、NPO法人、社会福祉法人など

商業・法人登記情報の検索|法務省
商業・法人登記情報の検索|法務省

 検索条件を「部分一致」とすると、完全一致ではなく部分的に一致する商業および法人を検索できますが、本支店・事務所の場所を指定する必要があります。

②商標の調査方法

 登録された商標を調査するには、特許情報プラットフォーム「J-PlatPat」が便利です。

J-PlatPat特許情報プラットフォーム|独立行政法人 工業所有権情報・研修館
出典:J-PlatPat特許情報プラットフォーム|独立行政法人 工業所有権情報・研修館

 トップページにある「簡易検索」で「商標」にチェックを入れて検索することで、入力した名称が商標登録されているかどうか調べることができます。

 会社を設立したら、信頼性獲得のためにも、コーポレートサイトや会社名を使用したメールアドレスの作成が欠かせません。しかし、使いたいドメインがすでに使われていた場合、会社名とドメインが一致しないということが発生します。

 そこで、会社名を決める前には会社名を使用したドメインが取得できるかどうか、事前に調べておくとよいでしょう。ドメインが取得できるかどうかは、各種ドメインサービスのWebサイトから調べることができます。

 なお、会社名だけだとすでにドメインが使われていることも多いため、会社を意味する「inc」や「corp」を入れてみる、「ー(ハイフン)」などの記号をうまく使うという手もあります。

 筆者が創業支援に携わるなかには、起業初期から海外展開を視野に入れている事例も増えています。そこで、会社名を決める際には、その名前が外国語でマイナスイメージにならないか検討することも大切です。文化の違いから差別的な表現やネガティブな表現になるケースもあるため、今後進出したい国や地域が決まっている場合は、その名称が与える影響について調べておきましょう。

 例えば、乳酸菌飲料で有名な「カルピス株式会社」。「カルピス」英語で発音するとcow(カウ)piss(ピス)=牛のおしっこと近くなることから、アメリカではCALPICOと表記されています。

 会社名をかっこよく見せたいと思うと、ついつい長くなったり、わかりづらい会社名になったりしてしまいます。会社名は経営者だけでなく、従業員や顧客にも利用されるものです。発音しやすい、また聞き取りやすい名称にできると覚えてもらいやすくなります。

【実際にあった筆者の失敗談】

 筆者が初めて会社を設立した当初の会社名は英語で、かつ少々長い会社名でした。そこで、電話で会話をしたときに「会社名をもう一度おっしゃっていただけますか……?」と言われることがありました。

 このようなことが多発したことから、たった設立1年で会社名を変更せざるを得なくなりました。シンプルかつ覚えやすい会社名に変更した結果、多くの人に覚えてもらえ、仕事の依頼も増えるようになりました。

 会社名に、主な事業内容を推定できる言葉を入れることも多いです。しかし、起業から数年後に事業内容が大きく変わるなどして、会社名に入れた事業内容と実態がそぐわなくなる、という事例も少なくありません。

 筆者は会社設立当初、広報PR業務を主事業としたことから会社名に「PR」を入れていました。その後、事業運営を回すなかで、広報PRに関連する事業も引き受けるようになり、広報PRはミッション・ビジョンを達成するための方法の一つであるということに気がつき、会社名の「PR」を外すべきだと考えました。

 失敗談のとおり、当時の会社名も少々長かったことから、新社名では「PR」をなくしました。その結果、広報PR事業だけでない事業も始めています。

 筆者の失敗談にもあるように、会社名は後からでも変更できます。下記は実際に会社名を変更した事例です。

【ブランド名と統一した事例】
・松下電器産業株式会社 → パナソニック株式会社
【サービス名と統一した事例】
・株式会社イー・マーキュリー → 株式会社ミクシィ
・健康コーポレーション株式会社 → RIZAPグループ株式会社

 ただし、会社名の変更には、定款変更と登記内容の変更手続きが必要です。株式会社の場合は株主総会の開催が必要となり、登記変更の際には登録免許税3万円がかかります。また、名刺やホームページ、ドメインなどもすべて変更する必要があるので、始めから「後から変更できる」ことを前提にして安易に会社名を決めることは避けたほうがよいでしょう。

 会社名は、法的ルールやいくつかの注意点に気をつければ、自由に決めることができます。しかし、自由に決めてよい……となっても、なかなかよい会社名が思いつかないという人も多いのではないでしょうか。

 ここでは、会社名を決めるときに使えるアイデアを紹介します。

 起業における理念やパーパス(存在意義)、やりたいことを会社名にする方法です。理念を会社名に入れることで、「なぜこの会社名なのか」と聞かれた場合に「弊社の理念は〜〜です」と端的に回答できます。また、理念に共感する顧客や取引先が集まってくるという効果もあります。

 事業が進むも衰退するも自分次第である起業。不安な要素も多いものですから、縁起をかつぐこともアイディアの一つです。「縁起のよさ」を検討するポイントとしては、画数や、会社名に縁起のよいモチーフを含めるなどがあります。

 子どもの名前を考えるときに姓名判断や占い師に占ってもらうことがありますが、会社も自分の子どものようなものです。せっかくつけるのであれば、縁起のよい、成長が見込める会社名にするのもよいでしょう。

 筆者の失敗談に通じますが、会社名はわかりやすさが重要です。会社で行う事業が一つであれば「〇〇不動産」「〇〇建設」「〇〇運輸」など、事業内容を入れてもよいでしょう。

 わかりやすいワードであることで、顧客に覚えてもらいやすく、また何をしている会社なのか伝わりやすくなります。

 人名や地名も、覚えてもらいやすいメリットがあります。人名の例では、創業者の名前が社名になった「株式会社マツモトキヨシ」や「株式会社ニトリ」があります。また「株式会社ブリヂストン」は、創業者である石橋正二郎氏の名字「石橋」を逆にし、英語読みした「ブリッヂストーン」が由来となっています。

 ここでは、会社名をつけるときの参考となるよう、具体的な会社名と会社名の由来を紹介します。

会社名 由来
日清食品株式会社 「日々清らかに豊かな味をつくる」という創業者の願いが由来
株式会社LIG 経営理念にある「Life is Good」に由来
サイボウズ株式会社 「cyber」+「bozu」= Cybozu
「電脳」を意味する「cyber」と、親しみを込めた「子供」の呼び方「坊主(bozu)」の造語によるもの
会社名 由来
キッコーマン株式会社 醤油の商標「亀甲萬」に由来。醤油づくりをとおして、人々の健康や幸せに役立ちたいという願いがこめられている
キヤノン株式会社 カメラの最初の試作機「KWANON(カンノン)」から。観音様の御慈悲にあやかり世界で最高のカメラを創る夢を実現したい、との願いを込めたもの
アステラス製薬株式会社 「星」を意味するラテン語の「stella」、ギリシャ語の「aster」、英語の「stellar」によって、「大志の星 aspired stars」「先進の星 advanced stars」を表現している
会社名 由来
カルビー株式会社 人々の健康に役立つ商品づくりを目指して、カルシウムの「カル」とビタミンB1の「ビー」を組み合わせたことに由来
セコム株式会社 「セキュリティ・コミュニケーション(Security Communication)」という言葉を略した造語
株式会社ファンケル FINE CHEMICALを組み合わせて作られた造語。FINE CHEMICALとは、化学工業製品のうち、多品種・少量生産で付加価値の高いものや医薬品などを意味する

 会社名は自由に決めることができます。しかし、創業時のこだわりや、他社と類似していないかなどを気にすると「なかなか決められない」という悩みもよく伺います。

 この記事で解説したポイントを押さえれば、きっと納得のいく会社名が決められるでしょう。会社名についてわからないことがあれば、法律の専門家である司法書士にも相談してみてください。