買取サービス広告の景品表示法上の問題点 消費者庁が5類型で解説

自宅で不要になった物を手軽に売却できる買取サービスを利用する機会が増えています。こうしたなか、消費者庁は、買取サービス事業者の景品表示法に対する理解を促進するとともに、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を保護する観点から、買取サービスに関する景品表示法の考え方を示すために「買取サービスに関する実態調査報告書」を公表しました。このなかで、景品表示法上問題となる買取サービスの広告について5類型で解説しています。
自宅で不要になった物を手軽に売却できる買取サービスを利用する機会が増えています。こうしたなか、消費者庁は、買取サービス事業者の景品表示法に対する理解を促進するとともに、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を保護する観点から、買取サービスに関する景品表示法の考え方を示すために「買取サービスに関する実態調査報告書」を公表しました。このなかで、景品表示法上問題となる買取サービスの広告について5類型で解説しています。
目次
買取サービスとは、不要品を買い取ってくれるサービスのことで、店頭買取、宅配買取、出張買取などの方法があります。
「買取サービスに関する実態調査報告書」(PDF)によると、買取サービスの市場規模は、一般消費者のエコ意識や有効資源活用に対する意識の高まりを背景に年々拡大傾向にあり、2023年には約1.3兆円と推計されています。店頭での買取サービスが最も大きく78.2%を占め、次いで、出張による買取サービスが10.0%、そして、宅配による買取サービスが9.5%と続いています。
消費者庁の公式サイトによると、景品表示法は、商品やサービスの品質、内容、価格等を偽って表示を行うことを厳しく規制するとともに、過大な景品類の提供を防ぐために景品類の最高額を制限することなどにより、消費者がより良い商品やサービスを自主的かつ合理的に選べる環境を守るための法律です。
景表法では、商品やサービスの品質、内容、価格、取引条件などについて、実際のものよりも著しく優良であると消費者に誤認させる表示(優良誤認表示)、または実際よりも著しく有利であると消費者に誤認させる表示(有利誤認表示)を不当表示として禁止しています。
そのうえで、消費者庁が買取業者50社の広告物を収集して分析し、広告表示を以下の5つの類型に分類しました。
これらの表示は、消費者が買取店を利用しようとする行動に大きな影響を与えており、特に「買取価格アップ」や「何でも買取り」は消費者の利用決定に対する訴求力が強いことが消費者へのアンケート調査で明らかになりました。
多くの消費者は広告をきっかけに店頭買取を利用しており、早く売却したい、あるいは面倒といった理由から、複数の店舗で査定を比較しない回答者が多いことも明らかになっています。
実態調査では、これらの広告表示を見た消費者がどのように認識するのか、そして実際に利用した際にその認識と実態との間にどの程度の乖離があるのかも調べています。
「買取価格アップ」「何でも買取り」「どこよりも高く買取り」など、上記のいずれの表記でも、消費者は広告表示を無条件に信じがちである一方、実際の買取現場では、広告で強調された内容が特定の条件を満たさなければ適用されないケースが多いことが明らかになりました。
そして、そうした適用条件や例外に関する表示が分かりづらい、あるいは表示されていないことが、消費者の誤解や期待との乖離を招く大きな要因となっています。消費者側も、対象外の商品等がある場合は分かりやすく大きな文字で表示してほしい、表示の意味や根拠を示してほしい、といった要望を強く持っていることが調査で示されています。
買取サービスに関する広告では、特にサービスの内容や取引条件を強くアピールする「強調表示」が多く見られます。強調表示は消費者に無条件に適用されるかのような印象を与えるため、実際には例外や条件がある場合には、その旨の「打消し表示」を分かりやすく適切に行う必要があります。
打消し表示が適切でない場合、消費者を誤認させる不当表示として景表法上の問題となるおそれがあります。
報告書では、上記の5つの類型ごとに、どのような場合に景表法上問題となりうるかの考え方を示しています。
消費者は「買取参考価格・買取実績価格」の表示を見て、表示価格またはそれに近い金額で買い取ってもらえると考えます。したがって、買取業者自身が実際に買い取ることを想定した金額や、過去の実績価格を大きく上回る金額を表示し、実際には著しく低い価格で買い取る場合は、有利誤認表示となるおそれがあります。
たとえば、未使用品の最高買取価格をはるかに超える金額を表示するようなケースです。「買取参考価格」の意味(上限なのか平均なのか等)を具体的に示すことが望ましいと報告書は指摘しています。
消費者は「買取価格アップ」の表示を見て、通常の査定価格から上乗せされた価格で買い取ってもらえると考えます。したがって、「買取価格アップ」と表示しながら、実際には通常の買取価格から全くアップしない場合は、有利誤認表示となります。
たとえば、「20%アップキャンペーン」と表示しながら、通常査定額1万円の商品をそのまま1万円で買い取るケースです。
報告書は「一般消費者から買取価格の根拠を問われた場合にはどのような基準で算出した額であるのかを説明するなど一般消費者に分かるように示すことが望ましい」と指摘しています。
また、「買取価格アップ」キャンペーンが常態化している場合、期間限定でお得であると消費者に誤認させるとして、有利誤認表示となるおそれがあります。
消費者は「買取価格保証」の表示を見て、必ず保証価格以上の金額で買い取ってもらえると考えます。したがって、「買取価格保証」と表示しながら、実際には保証価格を下回る金額で買い取る場合は、有利誤認表示となるおそれがあります。
たとえば、「ブランドバッグ1万円以上保証」と強調表示しながら、汚れを理由に5000円で買い取るようなケースです。保証に条件がある場合は、その条件を消費者に分かりやすく示すことが重要です。
消費者は「何でも買取り」の表示を見て、特段の条件なく、どのような状態の商品でも買い取ってもらえると考えます。したがって、「何でも買取り」と表示しながら、実際には持ち込まれた物品の一部または全部を買い取らない場合は、優良誤認表示となるおそれがあります。
たとえば、「どんな商品でも・どのような状態でも買い取ります」と無条件に買い取るかのように強調表示しながら、取扱商材でないことや汚れを理由に買い取らないようなケースです。買取対象外となる条件がある場合は、その条件を消費者に分かりやすく示すことが不可欠です。
消費者は「どこよりも高く買取り」の表示を見て、他の事業者と比較して最も高い価格で買い取ってもらえると考えます。したがって、事実と異なる「どこよりも高く買い取る」旨の表示は、有利誤認表示となります。
たとえば、「地域最高値」と表示しながら、同一地域内の競合他社の価格を全く調査していない場合は、景表法上問題となるおそれがあります。ヒアリング調査では、この表示を行った業者は根拠を有しておらず、「意気込みや自負」に過ぎないと述べていました。
このほかにも、次回の買取時に利用できる買取価格アップ券や現金、ポイントなどを付与するケースが見られます。これらは景品類に該当し、取引価額(この場合は買取価格)に応じた景品規制(いわゆる総付景品の景品規制)の対象となりえます。
たとえば、買取価格が1000円以上であれば買取価格の20%、1000円未満であれば200円が景品類の上限となります。特に「〇%アップ券」を付与する場合、今回の買取価格の20%が上限となる点に留意が必要で、上限額を券に明記する必要があります。
一方で、その場で買取価格をアップする場合は、アップ分も含めた買取価格全体が取引の対価となるため、原則として景品類には該当しません。
消費者庁は、今回の報告書で示した考え方を、関係事業者団体とも連携しながら買取業界全体に広く周知していく予定です。また、不当表示等が疑われる事案に接した場合には、景表法に基づき厳正に対処していくとしています。
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