金属盗対策法が成立 銅くず買受業の届出や相手方の本人確認を義務化

「盗難特定金属製物品の処分の防止等に関する法律」(金属盗対策法)が2025年6月13日、参議院本会議で可決・成立し、20日に交付されました。深刻化する金属盗の被害に対し、銅など特定金属くず買受業を営む場合の届出義務や、特定金属くずの買受け時の相手方の本人確認義務などを盛り込んでいます。
「盗難特定金属製物品の処分の防止等に関する法律」(金属盗対策法)が2025年6月13日、参議院本会議で可決・成立し、20日に交付されました。深刻化する金属盗の被害に対し、銅など特定金属くず買受業を営む場合の届出義務や、特定金属くずの買受け時の相手方の本人確認義務などを盛り込んでいます。
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警察庁の法案資料(PDF)によると太陽光発電設備からの銅線ケーブルの窃盗をはじめとする金属盗は、近年増えており、2024年の金属盗の認知件数は、4年前と比較して約4倍にも跳ね上がっています。また、2023年の金属盗による被害額(実務統計)は、全国で130億円以上にも上っています。
2024年9月には、良質なパウダースノーが人気の万座温泉スキー場(群馬県嬬恋村)で、中腹にあるリフト駅舎やレストハウスのケーブル類、リフト整備に使う工具や水道の蛇口などが盗まれる被害があり、営業縮小を余儀なくされた事件も起きていました。
この金属盗対策法は、主に以下の三つのポイントで構成しています。
この法律の最も重要なポイントが、盗品が市場に流通することを防ぐための、特定金属くず買受業者に対する規制強化です。
ここでいう「特定金属くず」とは、銅及び政令で定める金属など、その金属を使用して製造された物品の窃取を防止する必要性が高い金属により構成されている金属くずを指します。主に市場価値が高く、盗難被害に遭いやすい金属が対象となります。
特定金属くずの買受けを行う事業を営む者に対して、新たに届出義務を課します。営業所ごとに氏名、住所、営業所の所在地などを所管の都道府県公安委員会に届け出る義務があります。廃止や届出事項の変更時も同様に届け出が必要です。金属盗対策法は、名義貸しの禁止も定めています。
無届で特定金属くず買受業を営んだ場合や名義貸しを行った場合、6ヵ月以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金、またはその両方が科されます。
ほかの項目も含めて、虚偽の届出や報告の拒否、検査の妨害などには、30万円以下の罰金が科されます。
特定金属くずを買い受ける際には、買い受け時の相手方の本人確認(氏名、住所、生年月日、名称、本店所在地など)が義務付けられます。さらに、その本人確認事項や関連する詳細な記録を作成し、保存することも義務付けます。
買受けた特定金属くずに関する取引の相手方の氏名や取引内容などの記録作成・保存も義務化します。記録は3年間保存する必要があります。
特定金属くずの買い受けた際、それが盗品に由来するものであるとの疑いがある場合、すみやかに警察官へ申告する義務を課します。
公安委員会は、事業者が法令に違反した場合や盗難特定金属製物品の処分防止のために必要と認める場合、必要な措置を講じるよう指示できます。指示に従わない場合や、特に必要と認める場合は、6ヵ月を超えない範囲で営業の全部または一部の停止を命じることができます。
営業停止命令に違反した者には、1年以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金、またはその両方が科されます。
公安委員会は、法の施行に必要な限度で、事業者に対して報告や資料の提出を求めたり、警察職員に営業所や保管場所への立入検査、物件検査、関係者への質問を行わせたりすることもできます。
金属盗の実行には、しばしば特定の工具が使用されます。この法律では、そうした犯行に用いられるおそれが大きい工具の不当な所持を規制することで、犯罪の未然防止を図ります。
具体的には、ケーブルカッターやボルトクリッパーなどの工具のうち、犯行に使用される可能性が高いものについては、正当な理由なく隠し持って携帯することが禁止されます。指定金属切断工具の隠匿携帯に違反した者には、1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金が科されます。
犯罪を未然に防ぐためには、被害に遭いやすい太陽光発電設備の設置者への情報提供が不可欠です。
具体的には、防犯カメラの設置や高所フェンスの設置、フェンスセンサーや機械警備の導入といった「ハード面」の対策や、定期的な見回りの実施、地域住民や防犯会社との連携強化といった「ソフト面」の対策などの情報が警察から提供される見通しです。
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