目次

  1. ETCの料金システムの概要
  2. 2025年4月の広域的なETCシステム障害時の状況
  3. 料金徴収を行わない基準と運用
    1. ETCカード利用可否判定異常
    2. ETC無線通信不能
    3. 料金額テーブル異常
    4. 通信後の課金情報異常
  4. 法令・約款の改正と危機管理体制の強化

 広域的なETCシステム障害発生時の危機管理検討委員会に提出された資料によると、ETCの料金システムは、利用者のETCカードの利用可否データを、ETCシステムに配信し、利用者がレーンを通る際のバーの制御をしています。

ETC料金システムの概要
ETC料金システムの概要

 料金表データ(料金所入口と出口の組合せごとの料金表)を、料金所システムに配信し、利用者からの通行履歴情報をもとに料金を計算しており、料金のデータは、中央システムで割引等の整理がなされた後、利用者に請求しています。

 2025年4月のETCシステム障害発生時、NEXCOは適切な初動対応が取れず、以下の課題が浮き彫りになりました。

• ETC利用が多数を占める中で、ETCレーンの発進制御バーが降りたまま車両を停止させ、その場で後日支払い手続きを案内したため、料金所が渋滞した
• Webでの後日支払い手続きを依頼することで、利用者に不要な負担を強いたこと。
• 支払い方法を途中で変更(当初Web案内からカード会社経由の支払いに変更)したことで、利用者に混乱を招いた

 これらの反省点を踏まえ、NEXCO各社は「広域的なETCシステム障害時にお客さまに同じような不便をかけない」という方針を示しました。

 新方針では、システム改修、システムそのものの初期不良、サイバー攻撃、災害に伴うシステム停止、大規模停電などにより、ETCシステム障害が発生し、円滑な料金徴収が困難になった場合に「無料措置」が適用される場合があります。想定されるETCシステム障害とその際のバーの扱い、料金の扱いは以下の通りです。

広域障害発生時の料金所における対応
広域障害発生時の料金所における対応

 ETCレーンの発進制御バーが作動しないケースです。障害が発生した入/出口および正常な出口でバーを開放し、料金は徴収しません。

 バーが作動せず、当日の正しい請求ができないケースです。ETCカード利用可否判定異常と同様に、料金は徴収せず、バーを開放します。

 当日の正しい請求ができないケースです。障害が発生した出口でバーを開放し、料金は徴収しません。

 ETC無線通信は正常に行われるものの、後日正しい請求ができないケースです。この場合、料金所は通常運用を継続しますが、課金情報に異常がある通行については事後的に課金情報を削除する旨をウェブサイトなどで案内します。

 広域的な障害と判断した場合、NEXCOは全国の正常料金所に対しても、「バー開放」運用を実施することがあります。これは、障害発生料金所からETC通信をせずに流入した車両が、正常な出口料金所に到達した場合に備えるためです。ただし、この場合でも、障害発生料金所が入口であった場合は料金を徴収しません。

 この新方針のため、NEXCO各社や国は法整備と運用約款の見直しも進められています。

 具体的には、「道路整備特別措置法」に基づき料金を徴収しない車両を定める告示が検討されており、ETCカード利用可否判定の異常、無線通信不能、料金テーブルの改ざんなどにより円滑な料金徴収が困難となった場合も、料金徴収の対象としないよう改正が進められています。

 また、供用約款の見直しも進めています。ETCシステム障害発生時など、料金徴収が困難な場合は料金徴収の対象とならないこと、およびシステム障害も「瑕疵(かし)」となり、損害が発生した場合は賠償の対象となり得ることを約款に明記する方針です。これにより、物理的な瑕疵だけでなく、システム障害自体も高速道路の設置・管理の瑕疵と認定される可能性が明確になります。

 さらに、NEXCO各社は広域的なETCシステム障害に迅速かつ適切に対応するため、危機対応マニュアルの策定や情報提供の強化、本部体制の明確化、連絡体制と早期復旧など多岐にわたる危機管理体制を強化する予定です。