相談内容
現在、創業44年目になるお茶の販売店で自身は2代目。お茶の品質には自信があるので、これからネット販売に注力してどんどん売っていきたい
長友からの提案
・サイトはあるもののSNSを活用できていないので、毎日1ネタお茶にまつわるあれこれを発信してファンを獲得して自社のHP、ECサイトに誘導してはどうか? ・今日はバレンタインデーだったので試しにチョコにはお茶が合う、ということを投稿する ・次回は地元ケーブルテレビのテレビショッピングネットワークを紹介する
創業者である父の哲夫さんは健在ですが、2代目として「父が取り組んでこなかったことを手がけるのが自分の役目」とECサイトを立ち上げたので、その売上げをどんどん伸ばしていきたいとの相談でした。そんな谷岩さんから受け取った強い意志は「この先、急須離れによる茶葉の売上低迷は目に見えている。そこを打開したい」「急須で淹れて飲むお茶の魅力を伝えていきたい」の2点。そこでサポートするにあたり私は以下の方針を立てました。
まず「毎日急須生活」と題した日本茶講座をひむか-Bizのサポートで2017年に3回ほど開催。10種類の茶葉の見分け方、利き茶を行なったり、急須で淹れるお茶のおいしさ、飲む相手のことを思いやりながらお茶を淹れる効果・効能について谷岩さんが解説したり。参加者は確実に谷岩茶舗のファンになっていきました。これを機に谷岩さんは各種イベントで積極的にお茶の試飲に取り組むようになっていきました。
日本茶講座「毎日急須生活」の様子
2018年2月はバレンタインに合わせ、ひむか-Bizの相談者だった地元の菓子店「日向利久庵」とマッチングし、「バレンタインにはお茶を飲もう!」というバレン茶飲(ちゃいん)キャンペーンを展開。お茶とチョコの食べ合わせの良さを実証する試食イベントを開催し、ブラックチョコレートには香ばしく力強い味わいが特徴の「ほうじ茶」、ホワイトチョコレートには深いうまみがある「深むし茶」が合うことを提案してもらいました。
さらに、日向利久庵とのコラボでマロントリュフに「特選茎ほうじ茶」「深むし茶」をセットにした「マロントリュフ with Tea」(1,500円)、それに急須をプラスした「バレン茶飲セット」(5,000円)の2種を商品化し販売したところ「マロントリュフ with Tea」を28セット、「バレン茶飲セット」を1セット売ることができました。
バレン茶飲の試飲イベント
このように話題性のある取り組みを打ち出すことで、メディアが取材し、ネットでそれが記事になり、谷岩茶舗の名前がネット上で拡散されていきます。それがそのままSEO対策にもなり、谷岩茶舗のサイトが検索上位に来るようになりました。その結果、お茶のネット販売の売上も徐々に上がっていきました。
「急須持ってない」現状を変えるには
そんな谷岩さんが2019年12月に東京・新宿にある宮崎県のアンテナショップでお茶の試飲販売を行ない、気落ちして帰ってきました。「試飲してもらうとおいしいですねとは言われるんです。でも『急須を持っていないので』と茶葉はほとんど売れなかった。急須でお茶を淹れて飲む人はいずれいなくなるのかと思うと、本当に悲しくなりました」
谷岩茶舗は茶葉だけでなく、簡単にお茶が飲めるティーバッグ商品も販売しています。しかし、谷岩さんが伝えたいのは急須で淹れるお茶のおいしさ。実際、谷岩さんは朝、昼、晩と家族にお茶を淹れ、みんな健康だと試飲会などでよく話します。そんな谷岩さんの力になんとかなれないものかと考え、正月に店舗を訪れた際にこんな提案をしてみました。
「1月31日の“愛妻の日”に合わせて、新婚カップルに急須をプレゼントするプロジェクトを始めませんか?」
「新婚さん、いらっ茶い」で売り上げ、来客数130%アップ
実は、谷岩さんと私はこれまでのディスカッションの中で、「急須でお茶を淹れて飲む夫婦は家庭円満」という仮説を立てていました。
急須でお茶を淹れる行為は、おいしくお茶を飲むだけではなく、飲む相手に感謝の気持ちやおもてなしの心を伝えること。相手の体調や好みに合わせて茶葉を選んだり、気候に合わせてお湯の温度を調節したり、常に飲む相手のことを考える行為なので、お茶を淹れてもらった人も心のやすらぎを覚えます。今回はそんな家庭を築いてほしいという願いを込めて、谷岩茶舗から新婚さんに急須をプレゼントするサービスにしようと考えました。
「新婚さん、いらっ茶い!」で渡す急須
谷岩さんも快諾してくださり、「新婚さん、いらっ茶い!」というプロジェクト名で1月31日の「愛妻の日」に合わせてスタートする旨をニュースリリースで発信。テレビ2社、新聞5社、ラジオ1社、ネットニュース1社の取材が入り、メディアの露出を多く獲得することができました。
「夫婦2人で店までお越しいただき、結婚記念日を伝えてもらえればお好みの急須をその場で贈呈する。お茶の淹れ方、お茶の効能、急須の手入れの仕方などもお伝えするので、体にいいお茶を毎日飲んで、健康で笑顔が絶えない家庭を築くお手伝いができれば。新婚の定義は結婚して1年未満。若い夫婦が仲良く過ごすことで、出生率のアップにも期待したい」と谷岩さんがメディアを通じてメッセージを発信。すると、1月31日~2月29日の間に27組の新婚カップルが店舗を訪れ、それに伴い茶葉の売上もアップ。前年2月と比較すると売上額、来客数ともに130%アップしました。
また、キャンペーンを聞きつけた地元の結婚式場から「式を挙げる新郎新婦に谷岩茶舗のお茶と急須のセットを贈りたい」と申し出があり、今後、その会館で結婚式を挙げるカップルには、谷岩茶舗のお茶と急須のセットがプレゼントされることにもつながりました。
後継ぎはライフスタイルの変化に合わせた工夫を
現在42歳の谷岩さんが、次のように話してくれたことがあります。
「時代は簡単、便利な方向へ進んでいくが、急須で淹れるお茶の魅力をしっかり伝えることが自分の使命」
創業者の父・哲夫さんはいい荒茶を目利きして仕入れ、それを加工して、販売してきました。ある意味、いいお茶作りに専念していれば商品が安定して売れた時代だったのかもしれません。後継者の孝彦さんには、引き続きいいお茶作りに専念することはもちろん、時代の変化、ライフスタイルの変化に合わせて売る努力、工夫、知恵も求められます。これは何も谷岩茶舗に限ったことではなく、すべての後継者につきまとう問題です。
私たち全国各地のビズの各地のセンター長たちは、そんな後継者の皆さんの参謀として、ブレーンとしてこれからも伴走し続けます。
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