「星野佳路と考えるファミリービジネスの教科書」継がせる側の覚悟とは
この本は、星野リゾート代表の星野佳路さんの若い後継ぎに向けたエールです。星野さんも軽井沢の温泉旅館の後継ぎです。統計データをもとに日本経済が生む価値のおよそ半分をファミリービジネス(同族企業)が担っていると紹介し、世間がなんとなく抱いている、古くて非効率といったイメージを、いろんな角度から分析したデータで覆しています。
この本は、星野リゾート代表の星野佳路さんの若い後継ぎに向けたエールです。星野さんも軽井沢の温泉旅館の後継ぎです。統計データをもとに日本経済が生む価値のおよそ半分をファミリービジネス(同族企業)が担っていると紹介し、世間がなんとなく抱いている、古くて非効率といったイメージを、いろんな角度から分析したデータで覆しています。
この本は、星野佳路さんがライフワークとして続けているファミリービジネス(同族経営)研究について、自らの経験を語り、データやビジネスモデルで分析し、ファミリービジネスの経営者にインタビューするという盛りだくさんな1冊です。
星野さんの持論で興味深いのが、ファミリービジネスの強さの秘密は「30年に一度のビジネスモデル転換システムがビルトインされていること」というものです。つまり、上場している大手の非ファミリー企業は経営トップの大胆な若返りが難しいですが、ファミリービジネスの場合は、好むと好まざるとに関わらず、親から子どもへ事業承継されます。およそ30年ごとに経営トップが一気に若返ることで、これまでのビジネスモデルの検証が見直されます。そこに強みがあると考えています。
サイボク、キッコーマン、カルビーなど様々なファミリービジネスに話を聞きに行って学んだことが第5部の「星野さんによる研究報告」に書かれています。星野さんが強調しているのが、後継者ではなく、先代の「継がせる覚悟」です。「日本のファミリービジネスでは、継ぐ側の覚悟ばかりが強調されて、継がせる側の覚悟や勉強が足りない」。そう言い切っています。たしかに、後継者から世代交代を迫ったときは親子間でもめている企業が少なくありません。そんな状況を星野さんも変えたいから、この本を書いたのではないかと思えます。
軽井沢の旅館から大手リゾート会社へ急成長を遂げた星野リゾートも、「ハードランディング」な事業承継でした。星野さんは父親に反発し、31歳のときに父親と経営権を争う形で社長に就任しました。その後も通常の父子の関係には戻らなかったといいます。この本の最後のページには、父親が2013年に亡くなったときの「お別れの会」で配られたあいさつの中には、父との対立への悔い、そしてスキー場での家族写真とともに「その家族にも幸せな時は必ずあるのだと感じました」とつづられていました。
星野佳路と考えるファミリービジネスの教科書
価格:1,980円(税込)
ISBN:978-4-296-10444-4
発行年月:2019年11月
著者名:小野田鶴、日経トップリーダー
編集・構成 発行元:日経BP
ページ数:416ページ
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