全国のお坊さん愛用グッズ誕生 「社会貢献」からオリジナル商品の開発へ
僧侶の法衣にオシャレと社会貢献のメッセージを込めた新商品「ReBorn(リボン)袈裟」が岐阜県大垣市にある1890年創業の「吉田法衣店」から生まれました。いまでは、全国100カ所以上の寺のお坊さんに愛用されています。新商品の開発を支援した大垣ビジネスサポートセンター(Gaki-Biz、ガキビズ)から、その舞台裏をご紹介します。
僧侶の法衣にオシャレと社会貢献のメッセージを込めた新商品「ReBorn(リボン)袈裟」が岐阜県大垣市にある1890年創業の「吉田法衣店」から生まれました。いまでは、全国100カ所以上の寺のお坊さんに愛用されています。新商品の開発を支援した大垣ビジネスサポートセンター(Gaki-Biz、ガキビズ)から、その舞台裏をご紹介します。
1890年創業の「吉田法衣店」は、京都西陣織の生地を使用し、熟練の職人が仕立てた法衣を全国の僧侶の方々に調進しています。こちらの若き経営陣である吉田光利専務取締役(40)が相談に訪れ、取引先であるお寺が抱える現状について伺いました。
後継者不足による廃業、檀家離れ、過疎地域の増加、葬儀の簡略化、法事の減少など、中小企業が抱える事業承継の問題がお寺でも深刻な問題になっています。そのなかで、お寺の僧侶が顧客である法衣店にとって、先行きに不安を少なからず持たれているのは感じていました。このような状況下で、何か売上アップに繋がるアイディアがないかという相談内容でした。
個人的に特別深いご縁がある業界ではありません。しかし、一般の方でもここ数年で話題となり耳にした機会も多かったのが、お坊さんをネットで注文して出張してもらう「お坊さん便」、お寺に泊まる「宿坊体験」、お寺のスペースを活用した「婚活」、お坊さんたちが相談にも乗ってくれる「坊主バー・カフェ」などです。自由で様々な取り組みを行うお坊さんが非常に印象的でした。
そこで、専務のお話を伺うと、1本からでもオリジナルの商品が作れるという「職人の技術力」と「小回りが利く」ことが、同社の強みとして捉えられました。また、販売や営業の基本は、お寺へ出向き、僧侶のニーズを直接聞き取る営業スタイルであることでした。
伝統的な作法や習慣を重んじるお坊さんの中にも、多様性が受け入れられるようになった世の中で、他のお坊さんの動きは少なからず刺激になっているだろうと仮説を立てました。周囲からの目は気にはなるが、「何か新しいことをやってみたい。より社会に貢献していきたい」という気持ちを持ったお坊さんの支援に繋がるものをと考え、法衣の一部である首から胸元にかかる「袈裟(けさ)」に着目しました。
そこで提案させていただいたのがリボンの刺繍をあしらった新商品「ReBorn(リボン)袈裟」です。世界各地でリボンを着用することで社会運動や社会問題に対して、さりげなく支援や賛同の声を表す方法として広がっているリボン運動の活発化を背景に、袈裟にリボンをあしらい、伝統ある法衣に「オシャレ」と、社会へのメッセージ含めた「社会貢献」となる商品企画となりました。
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相談時の直近であった世界エイズデー(毎年12月1日)に合わせたレッドリボンの袈裟を作ってみようと、早速デザインを含め商品化の検討を進めてもらいました。
ここで職人がいる強みを活かし、すぐにサンプルをひとつ製作され、営業の際に持参いただきお坊さんへ紹介してもらうことにしました。各お寺との信頼関係がある専務の商品説明に加え、サンプル品を現物で見てもらえたことであっと言う間に購入希望が入り、さらにはピンクリボン(乳がんの早期発見を啓発)やオレンジリボン(子ども虐待防止)など、各種リボン運動の他カラーでの製作オーダーも受注されました。
法衣に自由な発想を取り入れたこの商品は、吉田法衣店がオリジナルで商品を作れることへのPRに繋がりました。ほかにも、平和やLGBTへの理解・支援、最近のコロナ禍では医療従事者へのエールを示す「ブルーライト輪袈裟」など、オリジナル商品の展開に拡がりを見せています。
また、リボン袈裟は、売上の一部を財団やNPO法人など各運動を支援する団体へ寄付する「寄付付き商品」としているため、吉田法衣店自身も社会貢献を行う、お寺にとって付き合いたい法衣店としてさらなる地位を確立できたのではないでしょうか。
現在、このリボン袈裟は6種類までになり、全国のお寺100箇所以上のお坊さんに愛用される人気の商品となりました。さらには、袈裟の装飾品の特徴を盛り込んだ一般向けのネクタイなど、いままでになかった新しいターゲットへの展開も始まりました。
ありがちな「伝統vs流行(トレンド)」という対立的な構図を、吉田法衣店の「強み」でミックスさせ、新しいアイディアを生み出した事例を紹介しました。この商品がなぜ成功したか、その背景を考えてみると、若き後継者に新しい挑戦をさせる吉田法衣店の「社風」が一番の強みだったのかもしれません。
「withコロナafterコロナ」と呼ばれるこれからの新しい時代には、中小企業も他業種との連携や支援機関をいま以上に活用し、自社だけでは考え付かないアイディアも取り入れ、自分たちも「変化」に対応していくことが求められます。
ガキビズは、2018年7月に大垣地域経済戦略推進協議会が地域での雇用や新しい産業の創出を促進するとともに、地元の頑張る中小企業を支援するために全国初となるCSR型(企業の社会貢献)のビズモデル型支援センターとして開設されました。「お金をかけずに売り上げをアップ」するために知恵を出し、伴走型のサポートをする無料の相談所です。吉田法衣店もそのなかで支援をしました。
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