【SNSで話題】驚きのコラボ飯 、台風被害やコロナの売り上げ減少を打開
2019年(令和元年)の台風15号で被害を受けた千葉県木更津市で、創業123年の老舗料亭のほか、養豚場と養蜂家が「強みを活かした連携」をし、新たなご当地グルメが誕生しました。新型コロナウィルスの影響下でもヒットしています。異業種コラボが成功した秘訣を木更津市産業・創業支援センター(らづBiz)から紹介します。
2019年(令和元年)の台風15号で被害を受けた千葉県木更津市で、創業123年の老舗料亭のほか、養豚場と養蜂家が「強みを活かした連携」をし、新たなご当地グルメが誕生しました。新型コロナウィルスの影響下でもヒットしています。異業種コラボが成功した秘訣を木更津市産業・創業支援センター(らづBiz)から紹介します。
らづBizは、市の中小企業支援策として2015年に開設され、2018年2月に首都圏初のBizモデルの支援センターとして「売上アップ」を目的に、リニューアルしました。リニューアル後の年間相談件数は以前の4倍にもなり、これまで2年間で約3000件の相談を受けてきました。
令和元年台風15号は、2019年9月9日の未明から昼にかけて関東地方を通過し、広い地域で強い雨風や高波などによる深刻な被害をもたらしました。さらに、千葉県や神奈川県を中心に約93万戸が停電し、復旧までに1週間以上かかる地域もありました。
明治30年(1897年)創業の宝家は、多くの文人墨客に愛されてきました。名物のアサリ料理をはじめ、東京湾の魚介類・房総の野菜などを使ったメニューを提供しています。鈴木崇久常務、鈴木希依子若女将、ご兄妹への事業承継も順調に進んでいます。郷土料理を強みに団体やインバウンド需要の取り込みにも成功し、経営は順調でした。しかし、2019年の台風15号により施設の破損、そして長期にわたる宴会キャンセル等による被害を受け、売上アップを必要としていました。
台風被害からの復興を願う事業者は多くいました。らづBizは、それぞれの事業者の強みを互いに活かせば、2倍、3倍、それ以上の成果を出すことができると考えました。そこで、「復興×エールプロジェクト」というプロジェクトを立ち上げました。
復興時の集客で考えたことは、商品そのものに驚きや感動が無いと被災地にお客様は来てくれないということです。「観光」は楽しみを目的とした旅行のため、過度な被災アピールは逆効果と考え、「地域の産品を使用した驚きのある商品」の企画を提案しました。
同じく台風による大きな被害を受けた養豚場「平野養豚場」は3代続く、木更津市内にたった1軒の養豚場です。現在は3代目の平野賢治さん、奥様の平野恵さん夫妻を中心に精力的に営んでいます。
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平野養豚場の豚肉は「林SPF豚肉」として、都内の多くのとんかつ店でも好評を得ている脂が美味しいお肉です。宝家は、この平野養豚場の豚肉を使用した「たれかつ丼」を開発中でした。そこで「新たな付加価値」として、台風被害から復興中の市原市の養蜂家「ワンドロップファーム」の生はちみつをかける「台風復興コラボ企画」を提案しました。
酪農家の家に生まれ、中小企業専門コンサルティング会社での経験を経た豊増洋右さんは、ワンドロップファームで「養蜂で里山を再生する」という目標に挑戦しています。
ワンドロップファームの「生はちみつ」は、季節の市原のお花の味が感じられる「百花蜜」で、ミツバチが里山に運ぶ恵みをそのまま食卓にお届けすることをコンセプトとしています。「はちみつはお肉や油との相性が抜群」というはちみつ農家の常識をもとに、元々はニューヨークのソウルフードで、都内でも人気だった「ワッフルチキン」を参考にした「甘じょっぱい味付け」をご提案しました。
味の実現は非常に難しかったのですが、老舗料亭宝家の料理人の試行錯誤の末に「はちみつを直前にかけて食べることでお花の香りを味わえる」絶妙な味が完成しました。
本プロジェクトに参加してくれた各専門家、協力者の協力を得て、サイトの立ち上げ、そして房総の春の観光名物「お花畑」を想像させる「花味(はなあじ)たれかつ丼」というネーミングも完成しました。
新商品「花味たれつ丼」は2020年1月から宝家で販売を開始しました。販売直後から「とんかつにはちみつをかける?」という不安と、お食べ頂いた後の「美味しい!」という良い意味での驚きはSNSを中心に口コミとして広がっていき好調に売れていきました。
お店が台風被害から再開したという認知も改めて広がり、老舗の売上は前年を超え始めました。しかし、2月からは新型コロナウィルスの感染拡大の影響で、再々度宴会のキャンセル被害が続発してしまいました。
お客様と従業員の安全を第一に考え、お店は一時休業に入りました。その後、新型コロナウィルスの感染拡大防止策を講じ、テイクアウト弁当に形を変えた新名物「花味たれかつ弁当」、そして名物のあさり御飯が入った「彩り弁当」、江戸前穴子を使用した「煮穴子弁当」、「特選牛すき焼き弁当」などの弁当の販売を準備し、営業を再開しました。
台風被害、そしてウィルスの脅威にも耐え、存続し続けようとする老舗への支援の声は地域内外に広がり、花味たれかつ弁当は月に1000食を越えるほどの人気メニューとなりました。また宝家は、クラウドファンディングにも挑戦し、目標を大きく達成する成果となりました。
飲食店の経営が続くことはそこに納品をする生産者の経営にも繋がります。1社1社の支援を目的とする支援機関だからこそ、地域内の各事業者の「思い」や「強み」を理解し、最適な連携をご提案していくことの重要性とその効果を実感できました。
これから毎年どこかの地域や街で台風・自然災害等による被害が発生することが推察されます。予測不能な事態に見舞われた時こそ、中小企業支援はその真価が問われるため、木更津ではこれからも事業者の強みを活かした「知恵出し」と「コラボ連携」による「お金をかけない売上アップ策」を提案し、地域活性化を目指し続けていきます。
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