夏服の生地を冷感マスクに

 マスクを製造したのは1952年創業の婦人服販売会社「ミズワン」です。中高級品の婦人服の製造や卸販売が主力で、大阪、兵庫、奈良で直営6店舗を運営していますが、マスクの製造は初めてでした。同社の販売サイトで扱っている商品は、真夏でも涼しさを保つ「接触冷感マスク」と「接触冷感フリルマスク」の2種類。いずれも日本製のコットン100%で、口に当たる部分には接触冷感の素材を使い、真夏でもつけたまま、心地よさを保てます。耳の後ろでひもが結べて、自分に合った付け心地を調整できる仕様です。

ミズワンは大阪を中心に婦人服の卸販売や直営6店での小売販売、インポート婦人服や雑貨の卸販売及び小売を手がけています。

 発案者で同社取締役の水本彩香さん(29)は「ミズワンのターゲットはミセスやシニア層で、夏の暑さをしのぐため、カットソーなどに以前から冷感素材の生地を使っていました。マスクにもその生地を使用しています」と話します。接触冷感マスクは2枚1760円、接触冷感フリルマスクは同2860円です。安くはありませんが、4月に販売を始めた接触冷感マスクは約20500枚、6月に販売開始したフリルマスクは約4000枚が売れました。

 水本さんはなぜマスク販売に動き出したのでしょうか。「新型コロナウイルスの影響が大きくなって、何かできないだろうか悩んでいました。マスク不足が深刻となり、会社として布マスクを作って、困っているお客様に届けられないだろうかと思いつきました。アパレル業界は国内の縫製工場が年々少なくなっていたところに、新型コロナが追い打ちをかけました。ミズワンの商品を製造している工場の仕事が減っていたのも、大きな理由でした」と話します。

接触冷感マスクを発案したミズワン取締役の水本彩香さん

オフィス街では「高い」……最初の2週間は売れず

 ミズワンには縫製のプロや生地に詳しいデザイナーを抱えている強みがありました。水本さんは父で社長の晶大さんにマスク製造を直談判しました。晶大さんは「やるのはいいけど、ほどほどに」と言いながらも、許可を出してくれました。水本さんは数百枚からのスタートを決めて工場の協力を取り付け、約1週間でサンプルを完成させました。

 4月下旬に販売を開始しましたが、マスクの販路はほとんどありません。直営店に来る顧客に売ることを考えていましたが、テナントで入っているデパートや商業施設が、コロナの影響で客足が大幅にダウンしました。最初に800枚を製造したものの、2週間は売れませんでした。「オフィス街にある本社の前にテーブルを出して売りました。不織布マスクと比べれば値が張るので、高いと言われることもありました。何百枚も作ったのにどうしようかと焦りました」

 起死回生の切り札となったのは、水本さんが大学卒業まで15年間打ち込んでいたクラシックバレエでした。なぜバレエが、マスクの売り上げアップにつながったのでしょうか。

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