目次

  1. 熱中症警戒アラートとは? 環境省と気象庁が運用
  2. 「暑さ指数(WBGT)」とは アラート発令基準に
  3. 暑さ指数(WBGT)の目安と警戒レベル
  4. 熱中症警戒アラートいつ発表? 運用詳細
  5. 熱中症警戒アラート発表されたときに取るべき行動
  6. アラート情報の入手方法
  7. 熱中症特別警戒アラートも創設 発令時は要注意

 環境省の熱中症予防サイトによると、熱中症警戒アラートとは、熱中症の危険性に対する「気づき」を促すものとして、府県予報区等内において、いずれかの暑さ指数情報提供地点における、翌日・当日の日最高暑さ指数(WBGT)が33(予測値)に達する場合に発表します。

2024年7月7日の熱中症警戒アラート (画像は環境省の特設サイトから https://www.wbgt.env.go.jp/)
2024年7月7日の熱中症警戒アラート (画像は環境省の特設サイトから https://www.wbgt.env.go.jp/)

 環境省と気象庁が共同で発表・運用しています。

 熱中症警戒アラートの発令基準となるのが「暑さ指数(WBGT:Wet Bulb Globe Temperature、湿球黒球温度)」です。暑さ指数とは気温、湿度、日射量などから推定する熱中症予防の指数です。

 算出式は以下の通りです。

日射がある場合:WBGT= 0.7×湿球温度+0.2×黒球温度+0.1×乾球温度
日射がない場合:WBGT= 0.7×湿球温度+0.3×黒球温度

  • 乾球温度:通常の温度計が示す温度。いわゆる気温のこと。
  • 湿球温度:湿度が低いほど水分の蒸発により気化熱が大きくなることを利用した、空気の湿り具合を示す温度。湿球温度は湿度が高いときに乾球温度に近づき、湿度が低いときに低くなる。
  • 黒球温度:黒色に塗装した中空の銅球で計測した温度。日射や高温化した路面からの輻射熱の強さ等により、黒球温度は高くなる。

 熱中症で救急搬送される人の数は、気温のみの場合よりも、気温に加え、湿度や日射・輻射を考慮する暑さ指数(WBGT)を用いた場合の方が関連度が高いといいます。2025年度は4月23日から10月22日まで運用します。

 日常生活における暑さ指数(WBGT)の目安は以下の通りです。

暑さ指数(WBGT) 注意すべき生活活動の目安 注意事項
危険(31以上) すべての生活活動でおこる危険性 高齢者においては安静状態でも発生する危険性が大きい。外出はなるべく避け、涼しい室内に移動する。
厳重警戒(28以上31未満) すべての生活活動でおこる危険性 外出時は炎天下を避け、室内では室温の上昇に注意する。
警戒(25以上28未満) 中等度以上の生活
活動でおこる危険性
運動や激しい作業をする際は定期的に充分に休息を取り入れる。
注意(25未満) 強い生活活動で
おこる危険性
一般に危険性は少ないが激しい運動や重労働時には発生する危険性がある。

 また、熱中症を生ずるおそれのある作業がある場合、厚生労働省は、身体作業強度とWBGT基準値の比較表を示しており、これを参考に各事業場の実態に合わせた基準値を設定することが求められます。

区分 身体作業強度(代謝率レベル)の例 暑熱順化者のWBGT基準値(度) 暑熱非順化者のWBGT基準値(度)
0 安静 安静、楽な座位 30 32
1 低代謝率 ·軽い手作業(書く、タイピング等)
·手及び腕の作業
·腕及び脚の作業 など
30 29
2 中程度代謝率 ·継続的な手及び碗の作業(くぎ打ち、盛土)
·腕及び脚の作業、腕と調体の作業 など
28 26
3 高代謝率 ·強度の腕及び胴体の作業
·ショペル作業、ハンマー作業
·重量物の荷車及び手押し車を押したり引いたりする など
26 23
4 極高代謝率 ·最大速度の速さでのとても激しい活動
·激しくシャベルを使ったり掘ったりするなど
25 20

 熱中症警戒アラートは、前日17時ごろと当日5時ごろの2つのタイミングで最新の予測値をもとに発表します。2024年度は延べ1722回の発表があり、年々増えています。

 アラートは、全国を58に分けた府県予報区等を単位として発表されます。

 熱中症警戒アラートが発表された地域は、気温が著しく高くなることにより熱中症による人の健康に係る被害が生ずるおそれがあるので、暑さから、自分の身を守る必要があります。

 基本的な予防行動は以下の通りです。

• 不要不急の外出を控える
• エアコン等の適切な使用
• こまめな水分・塩分補給
• 涼しい服装、適宜マスクの着脱
• こまめな休憩

 厚生労働省によると、令和7年(2025年)6月1日から、改正労働安全衛生規則が施行され、職場における熱中症対策が義務化されます。

 今回の労働安全衛生規則の改正により、熱中症のおそれがある労働者を早期に見つけ、その状況に応じ、迅速かつ適切に対処することにより、熱中症の重篤化を防止するため、事業者に対し、「早期発見のための体制整備」、「重篤化を防止するための措置の実施手順の作成」、「関係作業者への周知」を義務付けます。

 熱中症警戒アラートの情報を迅速かつ確実に得るためには、いくつかの方法があります。

環境省 熱中症予防情報サイト
熱中症警戒アラート等のメール配信サービス
環境省公式LINEアカウント

 これまでの想定を超えるような極端な高温が発生するケースも散見されるようになりました。そこで、熱中症警戒アラートよりもさらに一段階上の「熱中症特別警戒アラート(熱中症特別警戒情報)」が創設されました。

 発令されると、学校や現場作業、イベントの責任者に向けて「校長や経営者、イベント主催者等の管理者は、全ての人が熱中症対策を徹底できているか確認し、徹底できていない場合は、運動、外出、イベント等の中止、延期、変更(リモートワークへの変更を含む。)等を判断してください」と呼び掛けることになります。

 熱中症特別警戒アラートは、熱中症による人の健康に重大な被害が生ずるおそれがある場合に発表します。

 具体的には、原則、都道府県内の暑さ指数(WBGT)の情報提供を行っている全ての地点において、暑さ指数(WBGT)の最高値が35以上(小数点以下の端数を四捨五入した値)となることが予測される場合に発表します。

 発表単位は、都道府県で、対象日の前日10時ごろの予測値で判断し、前日14時ごろに発表します。