目次

  1. 「口下手でちっぽけな存在」が生んだ町工場コミュニティ
  2. コロナ禍が明けてからの「名前のないショック」
  3. 「歯車が抜け落ちるのを食い止めたい」
  4. 栗原さんが仕掛ける三つの起爆剤

 埼玉県川口市の住宅街に立つ「栗原精機」。栗原さんは、この会社を二十数年にわたり経営し、2023年に息子の匠さんに事業承継しました。

 2020年にサントリーのコーヒーブランド「BOSS」の新商品のWeb動画に出演したり、「東京インターナショナル・ギフト・ショー」などの展示会に町工場の仲間たちと出展したり、地元のFM川口の町工場応援番組「メタリックフライデー」でDJを務めたりと、界隈では名の知れた町工場です。

町工場プロダクツに出展した企業の皆さん

 栗原さんは自身のことを時々「口下手でちっぽけな存在」だと言いますが、それでも積極的に前に出るようになったのは、2008年のリーマンショックを経験してからでした。

 当時は、売上高70%減という大打撃。下請けの請負加工だけに頼るビジネスモデルに危機感を感じ、同業の仲間たちとSNSを活用して立ち上げたものづくりコミュニティ「MAKERS LINK」には、最初の数ヵ月で数百人が集まりました。

 その結果、同じ金属加工業であってもそれぞれの不得意分野、得意分野の仕事を融通できるようになりました。

 さらに、「価格だけで選ばれる関係から抜け出したい」と思い、文具やキャンプ用品などの自社ブランドを展開しました。自社ブランド自体の売上は全体の10%程度ですが、自社ブランドをきっけかに始まった仕事からの売上が40%に達しています。これらの商品が2020年のコロナショックの落ち込みをカバーしたといいます。

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