町工場発の雑貨がロフトに進出 個を束ねた展示会がきっかけに
町工場の技術がつめこまれたこだわりの雑貨を、直接手にとって買える特設コーナーが、「渋谷ロフト」「銀座ロフト」で開かれています。きっかけとなったのは、国内のさまざまな町工場が参加する「町工場プロダクツ」というプロジェクト。個々では埋もれがちだった技術を集めて発信することで担当者の目にとまり、今回の特設コーナーにつながったといいます。
町工場の技術がつめこまれたこだわりの雑貨を、直接手にとって買える特設コーナーが、「渋谷ロフト」「銀座ロフト」で開かれています。きっかけとなったのは、国内のさまざまな町工場が参加する「町工場プロダクツ」というプロジェクト。個々では埋もれがちだった技術を集めて発信することで担当者の目にとまり、今回の特設コーナーにつながったといいます。
渋谷ロフトの4階にエスカレーターであがると、ノギスや鉄パイプ、作業着が飾られた武骨なブースが見えてきます。
手前の棚で最初に目に入るのは、株式会社シマワ(東京都)が製作した無電源スピーカー「oto」。ジュラルミンを削りだして作り上げたもので、スマートフォンを差し込むと反響によってより美しい音が聞こえます。
棚では製作過程の試作品もあわせて展示。手に取った50代の男性客は「金属を複雑な形状に削り出す技術が実感できるよう。思わずほしくなる」と話していました。
ブース内には、こうした町工場の技術をいかした製品が、11社から集められています。精密板金加工を手がけるタシロ(神奈川県)は、キャンプでピザ窯・燻製機・焚き火台の3通りの使い方ができるアウトドア製品「3WAYピザ窯」を販売。
プレス加工で金属板を円筒状にしあげる技術を持つ「昌栄工業」(東京都)は、ホーロー製のポット「cupPot」を用意しました。業務用の缶メーカーである「側島製罐」(愛知県)は、カラフルで多種多様な形の缶を取りそろえ、アイドルやキャラクターなど 「推し」グッズを保管する使い方を提案。若い女性から注目を集めていました。
特設コーナーは、ロフトと雑誌「ソトコト」がコラボした期間限定の企画「ロフコト雑貨店」の一環。「銀座ロフト」「渋谷ロフト」の2店で、4月19日~5月31日(最終日は午後5時まで)に開かれています(他の展示はすでに終了)。
こうした町工場は、普段は企業向けに部品などを納めるBtoBの仕事を中心にしており、作った製品が消費者の目に触れるということはほとんどありませんでした。なぜロフトに特設コーナーができるまでになったのでしょうか。
そもそもの始まりは、町工場プロダクツの発起人である栗原精機(埼玉県)の社長・栗原稔さんの呼びかけでした。「製造業全体が厳しい状況に置かれるなかで、うちだけが良い思いをできるわけがなく。60歳を過ぎて次の世代に何か爪痕でも残したい、製造業全体を盛り上げたい」と栗原さん。普段は表に出ない町工場の技術力や熱量を発信しようと、ツイッターを通じて同業者に声をかけ、試作品などを持ち寄ってギフトショーへの共同出展を始めました。2021年秋の展示会からは、このプロジェクトに「町工場プロダクツ」と命名。参加企業は約60社まで広がりました。
そうした町工場プロダクツの展示が、ロフトの担当者の目にとまります。
2022年2月に東京ビッグサイトで開かれた「東京インターナショナルギフト・ショー」。渋谷ロフトでインテリアを担当する浅井雅彦マネジャーは、ここで町工場プロダクツのブースを訪れ、「町工場という切り口をすごく新鮮に感じた」といいます。
安価な家具やインテリアが増えてきた昨今、消費者に訴えるには特別なデザインや、その製品にしかない技術やストーリーが重要になってくるとのこと。ちょうど新しい企画を探していた浅井さんに、町工場プロダクツのコンセプトが刺さりました。「ロフコト雑貨店」に向けて、早速話が進み始めました。
「町工場の製品を単体で提示されただけでは、ここまでの展示にはつながらなかったかもしれない。『町工場プロダクツ』という看板があったからこそ、『まだ世に出てないけどこんな面白い商品があるよ』と発信もしやすくなりました」と浅井さんは話します。
町工場プロダクツの特設コーナーについて、渋谷ロフトでは2022年秋ごろに第二回の開催を予定しており、その後も不定期開催を目指すといいます。
町工場側にとって、企業向けではなく一般消費者向けに自社製品を販売することはどんなメリットがあるのでしょうか。
一つは、リスクの分散です。町工場では自動車など特定の業界にのみ部品を納めているところも多く、そうしたケースでは売り上げが業界の景気の波に左右されてしまうといいます。本業のBtoBでの売り上げが下がっても、それとは別に一般消費者向けの販路があれば、売り上げ減少の影響をおさえることが期待できます。
もう一つは、町工場の魅力発信につながるということです。普段顧客の企業に納めている製品などは、相手との契約もあり大々的に公表することはできません。また製品のどんなところに町工場の技術がいきているのか、説明が難しいケースもあります。一般向けの製品であれば、自社の得意分野や技術が伝わるようなデザインにしたうえで、SNSなどで気軽に写真を発信ができます。「うちの技術でこんな製品を作っている」と業務内容が説明しやすくなり、若手の採用につながったケースもあるそうです。
知名度の高い渋谷ロフトの売り場では、より幅広い層へのアピールも期待できます。実際に売り場に立って来場客とも話をしたシマワの島口棟伍専務(36)は、「思った以上に若い人の目に止まることがわかった」と手応えを感じていました。「町工場が作った製品を、お客さんが直接買うようなカルチャーを作っていきたい。今回はその一歩目です。それぞれの町工場の顔が見えるようになって、ファンがついてくれたらすごく面白いですよね」
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