「リンゴ追分」「柔」「悲しい酒」「愛燦燦(あいさんさん)」――。

数多くのヒット曲を歌い、昭和の歌謡界で「女王」と言われた歌手、美空ひばりさん。

5月29日は、ひばりさんの誕生日です。

美空ひばりさん=1988年4月、東京都内、朝日新聞社

85年前の1937年(昭和12年)、神奈川県横浜市磯子区で鮮魚商の長女として生まれました。

幼い頃から音楽が好きで、小学2年生の時、父が結成した楽団で歌い始めたそうです。

9歳で初舞台に立ち、1948年から「美空ひばり」を名乗りました。

 

1949年、12歳の時に映画「悲しき口笛」で初主演。

同じ名前の主題歌も大ヒットしました。

その後、「東京キッド」「伊豆の踊り子」などの主演映画と、その主題歌が次々とヒット。

“天才少女”の歌声は、戦後復興にわく日本の街中に流れ、瞬く間に国民的スターの座に駆け上がりました。

コンサートで歌う美空ひばりさん=1988年、東京ドーム、朝日新聞社

しかし――。

1989年6月24日、ひばりさんは間質性肺炎による呼吸不全のため、52歳の若さで亡くなりました。

元号が昭和から平成になって半年後のこと。

朝日新聞は夕刊の1面トップで、このニュースを報じました。

朝日新聞は夕刊1面トップで美空ひばりさんの死去を報じた

東京都内の自宅で営まれた通夜には芸能関係者ら約1000人が弔問に訪れ、スピーカーからひばりさんのヒット曲が流されていたそうです。

 

敗戦の焼け跡に彗星のように降り立ち、昭和の行く末を見届けたかのように亡くなったひばりさん。

昭和という時代は、ひばりさんの歌声とともにありました。

亡くなった後、ひばりさんには女性では初めてとなる国民栄誉賞が贈られました。

その授賞理由には、「真摯な精進 歌謡曲を通じて国民に夢と希望を与えた」とありました。

52年の生涯のなかで、レコーディングをした曲は約1500にのぼると伝えられています。

 

(朝日新聞社の経済メディア「bizble」で2021年5月29日に公開した記事を転載しました)