経営革新計画のメリットと書き方を解説【承認に必要な2つの要件】
中小企業が新しい事業に取り組み、経営指標の向上を目指す「経営革新計画」に注目が集まっています。この計画について国や都道府県から承認を受けると、幅広い支援策の対象になります。資金面などのメリットや承認されるための書き方のポイントを紹介します。
中小企業が新しい事業に取り組み、経営指標の向上を目指す「経営革新計画」に注目が集まっています。この計画について国や都道府県から承認を受けると、幅広い支援策の対象になります。資金面などのメリットや承認されるための書き方のポイントを紹介します。
「経営革新計画」とは、中小企業等経営強化法で規定されており、新しい事業活動を通じて経営指標を向上させる計画を中小企業がつくり、国や都道府県がその計画を承認します。承認されるためには、規定にある「新事業活動」と「経営の相当程度の向上」という2つのポイントをきちんと把握することが必要です。
申請するために、都道府県の担当部局などの担当窓口に相談することができます。公認会計士や税理士などが登録している「認定経営革新等支援機関」(認定支援機関)の関与は必須ではありませんが、支援を受けると申請がスムーズです。認定支援機関は、中小企業のサイトから検索できます。
計画の承認を受けると、有利な条件で保証・融資を受けられたり、海外展開に伴う資金調達の支援措置を受けられたりするなど、さまざまな優遇措置を受けられます。そのほか、令和元年度補正の事業承継補助金では、補助率アップなどの優遇措置を受ける要件にもなっていました。具体的な優遇措置は以下の通りです。
・新事業開拓保証の限度額引き上げなど信用保証協会からの優遇措置
・日本政策金融公庫から特別利率による融資
・工場団地建設やアーケード建設における高度化融資制度
・食品流通構造改善促進機構による債務保証(食品製造業者の場合)
・海外子会社の資金調達支援
・海外展開のための国内における資金調達支援
・企業支援ファンドからの株式取得等による資金提供、ハンズオン支援
・中小企業投資育成株式会社からの投資
・販路開拓コーディネート事業による支援
・新価値創造展の審査優遇措置
・特許関係費用の軽減措置
申請書を書く上で、「新事業活動」と「経営の相当程度の向上」について事前に把握しましょう。経営革新計画の「新事業活動」 とは、次の4つの「新たな取り組み」と規定されており、申請するときに事業内容に当てはまるものを選ぶ必要があります。中小企業庁のハンドブックに掲載された具体例を併せて紹介します。
・建設業者が下水汚泥から肥料を開発
・木製品製造業者が間伐材から建具を生産
・業務用空気清浄機製造会社が小型化した一般家庭用空気清浄機を開発
・美容室が出張着付け、ヘアメイクサービスをスタート
・老舗旅館が空室を利用しリラクゼーションサービスを開始
・果物小売業者がジュースなどを売るフルーツパーラーを開店
・食品加工業者がHACCP対応の新工場を建設
・美容室が写真館を併設し、着付け後にすぐ撮影できるサービスを開始
・タクシー会社が介護タクシーサービスに進出
新たな取り組みは必ずしも革新的である必要はなく、申請企業にとって新たなチャレンジであれば問題ありません。
「経営の相当程度の向上」は次の2つの指標が、計画期間の3~5年で相当程度向上することを指します。計画期間によって、伸び率が設定されています。こちらも申請書に記入する必要があります。
付加価値額は、営業利益 + 人件費 + 減価償却費で算出します。
一人当たりの付加価値額は、付加価値額を従業員数で割って算出します。
3年計画は9%、4年計画は12%、5年計画は15%以上の伸びが求められます。
この制度における経常利益は、営業利益-営業外費用で算出します。
一般的な会計原則とは異なり、営業外収益は参入しないため、注意が必要です。
3年計画は3%、4年計画は4%、5年計画は5%以上の伸びが求められます。
承認を受けるための手続きは次の通りです。
まず、要件、経営革新計画の内容、申請手続きなどを相談してください。1社単独なのか、組合などによる複数社共同の場合なのかで、申請窓口が都道府県、または国の地方機関や中小企業庁に変わります。
申請書類は、ほとんどの都道府県のサイトに掲載されています。「経営革新計画+(都道府県名)」でインターネット検索するか、都道府県の窓口で尋ねてください。たとえば、東京都、大阪府、福岡県のサイトを紹介します。
申請書の具体的な記載方法は、中小企業庁のハンドブック(PDF形式、10.2MB)の38ページ以降を参考にしてください。
融資や補助金を利用する場合は、計画の申請を並行して関係機関に連絡をしてください。計画の承認は、さまざまな支援策の保証するものではなく、それぞれの機関の審査があります。
審査後に経営革新計画が承認されます。計画開始後、フォローアップのために進捗状況調査があります。
経営革新計画の承認を受けると上記のような優遇措置が受けられます。優遇措置だけでなく、自分自身の会社を見直すことで会社の強みや課題、やってみたいことなど会社の目的や社員のやるべきことなどを具体化できます。
目標や経営理念を共有できていない会社の経営というのは、従業員からすると目的地がわからないまま進んでいるようなものです。計画の策定は経営者の考えを従業員に浸透させるよいツールになるかもしれません。
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