「継がない」と宣言してテレビマンに

 スマホ冷却ケースを開発したのは、東京の電子部品関連メーカー「サンハヤト」取締役の佐々竜太郎さん(43)です。佐々さんは現社長の憲夫さんの長男ですが、「元々、機械には興味が無かった」と振り返ります。スポーツを伝える仕事に興味を持ち、就職留年までして、日本テレビに入社します。その時、父には「俺はこの道を進むから、サンハヤトは継がない」と宣言しました。

 日本テレビでは一貫して、制作畑を歩みました。「はじめてのおつかい」「ZIP」「高校生クイズ」など、看板番組の制作を手がけ、スポーツ放送にも関わりました。ディレクターとして、充実した日々を送り、結婚して2人の子どもにも恵まれました。「自分で一から番組を企画してヒットさせたい」。そんな40代の目標も描いていました。

日本テレビのディレクターとして活躍していた頃の佐々竜太郎さん(佐々さん提供)

 しかし、2016年の大みそか、転機は突然訪れました。母親が急死したのです。

母が急死・・・悩み抜いて家業に

 「母は僕に、ことあるごとに『会社のことを知りなさい。おじいちゃんと話してみなさい』と言い続けていました。今思えば、母は僕に継いでほしいと願っていたのかもしれません。僕は忙しさにかまけて邪険にし続けていたのですが、亡くなって初めて、母の思いに気づきました」

 葬儀が落ち着いた後、父と初めてじっくり会社の話をしました。「僕が会社を手伝ったらうれしい?」という尋ね方をしたら、父からは「ぜひ手伝ってほしい」と言われ、心が動きました。家業に戻れば、年収は大幅に下がります。幼い娘2人を抱え、家のローンも抱えていました。悩みに悩んだ末、家業に入ることを決意しました。

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