新型コロナで消費の落ちた炭酸飲料×フルーツのコラボが完売 定番にも波及
新型コロナの影響で消費が低迷していた、広島県三原市のご当地ドリンク「スマック」と地元産のフルーツを合わせた新味を発売したところ、限定800本が完売し、定番商品にまで波及、さらに新規の取引先の開拓にまでつながりました。サポートした福山ビジネスサポートセンターFuku-Biz(フクビズ)が着目したポイントをご紹介します。
新型コロナの影響で消費が低迷していた、広島県三原市のご当地ドリンク「スマック」と地元産のフルーツを合わせた新味を発売したところ、限定800本が完売し、定番商品にまで波及、さらに新規の取引先の開拓にまでつながりました。サポートした福山ビジネスサポートセンターFuku-Biz(フクビズ)が着目したポイントをご紹介します。
広島県三原市の飲料メーカー「桜南食品」の安井健社長、メインバンクからの紹介で、フクビズを訪れたのは2020年初春のことでした。
桜南食品は、地元の方に「水のように飲んでいた」と言わしめるほど、地域に古くから根づいている炭酸飲料「スマック」を製造しています。その他にも昔ながらの製法にこだわったオリジナル商品を製造・販売しています。しかし、これらの商品の多くの販路が主にスーパーや飲食店であるため、取引単価が厳しく利益率が思うように上げられなかったり、新型コロナウイルスの感染拡大で飲食店での消費が激減し販売数量が減っていたりするとのことでした。それらが影響してか、とても自信を失っているように感じました。
スマックとは、Skim Milk Acid Carbonate Keeping(スキムミルク炭酸飲料)の頭文字をとって名付けられ、複数の企業で統一商標「スマック」として1960年代から製造が始まりました。日本は明治時代以降、全国の中小飲料メーカーがラムネやサイダーを製造してきました。
しかし、「第2の黒船」と呼ばれた「コカ・コーラ」や「ペプシコーラ」など外資系飲料会社が本格的に日本に上陸にしてきてきたため、対抗して開発された商品の一つがスマックでした。今では三重のほか広島と佐賀だけに残る味です。
フクビズがまずお伝えしたのは、炭酸飲料の市場は拡大傾向が続いており、世の中のトレンドは桜南食品にとって追い風になっていることでした。そして、オリジナル商品を多数生み出してきた開発力と小ロットに対応できる製造力は、明確なセールスポイントになります。「できるかもしれない、やれる」という気持ちになんとかつなげたいと考えました。
そこで、具体的な成功のイメージを持っていただくため、「スマック」と同じように古くから多くの人に親しまれている大手飲料メーカーの事例をお伝えしました。定番の商品が売れ続けている一方で、様々なフレーバーの商品が毎シーズン投入されています。そういった姉妹商品の多くは定番のものよりも単価が高いにもかかわらず、次々に消費者が手に取っていくことがよくあります。
地元でこれだけ認知度が高く支持され続けている「スマック」初の姉妹商品が誕生すれば、大きな話題になり求める消費者も多いだろうと思いました。では、どんな味にすべきでしょうか?
その答えはすぐに出ました。
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「スマック」は練乳入りのクリームソーダであるため、有力な選択肢はいちご味でした。そこで、安井社長にいちごを生産している事業者を尋ねたところ、観光農園の方を知っているとのことでした。しかも、同じ市内です。
「いまはコロナ禍で観光農園の方は困っているはずだから、すぐに行ってみてください。そして、いちごを使った新商品開発をしたい旨をお話ししてみてください」と伝えました。
コロナ禍でなければ、来場客でにぎわう観光農園も今年ばかりは閑散としており、旬をむかえたいちごが大量に余っているということでした。
ここから、これらのいちごを使った新商品開発がスタートしました。これまでに培ってきた開発力を生かし、あっという間に試作品をつくりあげて来られました。生のいちごをふんだんに使用した「スマックいちご味」は想像していた以上のおいしさとみずみずしさで、飲料メーカーのプロとしての凄みを感じさせられました。
こうして、またたく間に初の姉妹商品「スマックいちご味」が完成、原料のいちごの量から限定800本を製造・販売することとなりました。そして、肝心の販路はあえて飲食店を中心とすることを提案しました。
というのは、今回のスマックといちごのコラボ商品の開発は取材につながる可能性が高く、新型コロナの影響で飲食店の売り上げが大幅に落ち込むなか、新商品発売のニュースが出回れば、飲食店の集客につながり、売上アップに寄与できると考えたからです。
これらをふまえた広報戦略を立案し、ニュースリリースの作成やSNSの開設などをサポート。発売にあわせ、テレビや新聞などで大きく取り上げられました。
限定生産のため従来の倍の取引価格であったにもかかわらず、「スマックいちご味」は完売し、さらにその余波は定番の「スマック」にも波及、販売数量が2倍となりました。また、大手旅客会社から新たな取引の話が舞い込むなど、販路拡大にもつながっています。いまではお会いするたびに「こんな商品を考えてみたのだけど、どうかな?」とおっしゃる安井社長。モチベーション高く、戦略的に挑戦していくことで、コロナ禍であっても新たな道を切り開いていくことができるのだと強く感じています。
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