小さな不動産屋のリノベーション

 誰も住みたがらない築30年以上の古いアパートを、独特のリノベーションで満室に。そんな願いが込められた「満室化プロジェクト」を手がけるのが、愛知県江南市の石井不動産です。従業員35名の小さな会社ですが、これまで100室以上のリノベーション物件を手掛けました。

 リノベーションのコンセプトは、「木の温もりに包まれた居心地の良いカフェスタイル」です。

 フロアには無垢材を使用しています。パイン材で仕上げたキッチン、板張りの壁、座ると落ち着く造作ベンチに加え、天井や窓にはおしゃれで厳選したカラーペイントを施します。カフェを思わせる空間は幅広い層から人気で、特に新婚夫婦に最適なスタイリングです。

石井不動産がリノベーションを手がけて雰囲気ががらりと変わった物件。左の部屋が改装前で、右の部屋が改装後

 ほかにも、ビンテージ感溢れるブルックリンスタイルや、エレガントなカントリースタイルなど、様々なバリエーションがあります。同社はこの取り組みを、ノウハウ提供を望む同業者や建築業者とシェアし、全国に向けてエリアの拡大を図っています。

経営計画書が置き忘れられ・・・

 石井不動産は、現会長の石井公久さん(52) が、約20年前に両親から3代目として経営を受け継ぎました。当初はなかなか利益が出ませんでした。危機感を覚えた石井さんは、2010年、住宅設備大手のLIXIL(リクシル)が運営する不動産チェーンERAが主催した後継者塾に通います。経営計画書を策定し、全社一丸となって実現を目指すことの大切さを学びました。

 石井さんは社員向けに経営計画発表会を開きました。しかし、発表会後の宴会が終わると、会場には説明したばかりの経営計画書がいくつも置き忘れられていました。社長が「やるぞ!」と叫んでみたところで、笛吹けど踊らず。社員の意識は簡単には変わらない現実を突きつけられ、石井さんは頭を抱えてしまいました。

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