苗加不動産

1978年に金沢市で創業。大学生向けの物件を多く扱い、教育機関との連携も進める。ウィークリー・マンスリーマンションの運営なども行っている。従業員数は74人(2020年5月現在)。

「長男だから」19歳で父の会社に

 苗加不動産は、金沢有数の不動産会社で、金沢大学の一人暮らしの学生のうち、約7割 が同社の管理物件に住んでいるといいます。そのルーツは意外にも「靴屋さん」でした。

 3人きょうだいの長男として育った2代目社長の苗加充彦さん(50)は言います。「祖父と父が自宅近くの商店街の一角で靴屋を営んでいましたが、うまくいかなくなりました。父が不動産会社に勤めたあと、独立して起業したのが前身の苗加商事です。父や親せきに商売をしている人が多く、自分がサラリーマンになるイメージは一度も持ったことはありませんでした。父から会社を継いでほしいといわれたことはありませんが、幼いころから長男だから継ぐだろうと自然と思っていました」

 19歳だった1989年、苗加商事に入社しました。先代社長の父・信勝さん(76)は、地元の不動産会社が徐々に倒産するのを見て、土地・建物の売買から、アパートのあっせんや管理業へと事業をシフトしました。バブル崩壊後も事業を存続させることができ、苗加さんは若い頃を「寝るとき以外は仕事」という営業マンとして過ごします。

ターゲットを大学生に絞る

 社長就任は39歳だった2008年でした。事業拡大のため、今の本社があるもりの里に本社機能を移す直前のタイミングで、父親からバトンを託されました。

 「『そろそろ社長をやれ』『はい』というやり取りだけでした。当時社員は30人くらいでしたが、自分より後に入社した若手ばかり。プレッシャーもなく等身大でいられたのが、よかったと思います」。

苗加さんは新しいアイデアを次々と打ち出している
苗加さんは新しいアイデアを次々と打ち出している

 当時の不動産業界は地元企業に加え、全国展開のフランチャイズ店や大学の生協もアパートのあっせんを行う群雄割拠の時代に突入していました。「このままでは値下げ合戦、広告合戦という不毛な戦いに巻き込まれてしまうのは明らかで、危機感を持ちました。土俵を変える、他社と戦わずして勝つ方法を必死で考えました」

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