予想外の3人独立

 プラグの前身である「アイ・コーポレーション」は、小川さんの父が立ち上げた会社で、30人ほどの社員とともに食品やビールなどのパッケージデザインを手がけ、会社は順調に業績を伸ばしていました。

 「社長、ちょっといいですか」

 No.2が小川さんに相談に来たのは、2010年4月のゴールデンウィーク直前のことでした。小川さんの経験上、社員がこうしてやってくるときは、結婚の報告か、会社の退職を申し出るかをやめる宣言のどちらかがほとんどなので「来たな、No.2」と身構えました。

 話を聞くと、No.3、No.4とともに3人で独立して、同じ業種の新会社を立ち上げたいとのことでした。No.2は同い年で力のあるデザイナー。そのため、独立する可能性を考えてはいましたが、さすがに3人同時は予想外でした。それでも「動揺を見せるわけにはいかない」と平静を装いました。

 小川さんの頭に真っ先に浮かんだリスクは次のことでした。

  • デザイン業務は、デザイナーの個性とクライアントの好みがつながりやすく仕事を持っていかれるかもしれない
  • 実力のあるデザイナーが辞めることで、会社全体のデザイン力が落ちる可能性がある
  • 社内に動揺が走り、連鎖的に退社する社員が出るかもしれない
  • 取引先から経営者としてのマネジメント能力に疑問を持たれてしまうかもしれない

 ゴールデンウィークは家族で沖縄旅行でしたが、連休中の小川さんの頭のなかは「どの順番で社内に伝えれば良いか」「売り上げを落とさない方法」「クライアントへの説明」など、ぐるぐるとシミュレーションが回り続けていました。

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