星野リゾートが描くアフターコロナ 積極投資と人材維持を説く理由
日本を代表する後継ぎ経営者の一人で、星野リゾート代表の星野佳路さんが2021年4月14日、オンライン会見を開き、アフターコロナを見据えた拡大戦略や提言について発表しました。収束が遅れがちという現実は直視しながらも、積極投資や観光を担う人材の大切さを強調し、中小の観光業者へのメッセージも送りました。
日本を代表する後継ぎ経営者の一人で、星野リゾート代表の星野佳路さんが2021年4月14日、オンライン会見を開き、アフターコロナを見据えた拡大戦略や提言について発表しました。収束が遅れがちという現実は直視しながらも、積極投資や観光を担う人材の大切さを強調し、中小の観光業者へのメッセージも送りました。
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星野さんは2020年、コロナ収束までの期間を1年半と見越し、車で1~2時間圏内の旅行を示す「マイクロツーリズム」を提唱しました。星野リゾートでは2020年夏までに、施設の感染防止対策などを完了。以降は、感染拡大期には予約を落とし、感染減少期には予約が拡大するという波を繰り返したといいます。
星野さんは2021年のコロナ第3波、第4波は「思ったよりも時間がかかり、我々も苦戦している」と話す一方、明るい兆しも見え始めているといいます。
「コロナワクチンが普及し始めた国では、宿泊施設の予約件数が上がっていると聞きます。第4波の日本でも、予約件数はそれほど変わらないようになりました。ワクチンの接種開始も影響し、日本人の行動パターンが変化しつつあるように思います」
ホテルや旅館など国内外で48施設を運営する星野リゾートでは、マイクロツーリズムにどのように力を入れたのでしょうか。
同社は各地のローカルメディアとの関係を強化し、フリーペーパーなどに広告を出し、そこから星野リゾートに予約してもらう導線を作りました。「3密回避」の旅行を推奨するため、「ふれあい一人旅」と題して、各施設周辺での街歩きや森林浴のプランを提供しました。
マイクロツーリズムを広げた結果、2021年1月、鹿児島県霧島市にオープンした温泉旅館「界 霧島」は、宿泊客の75%を九州在住者が占めたといいます。
また、コロナ禍で、星野さんが意識したのは従業員とのコミュニケーションでした。「昨春は売り上げが激減しました。自分には何もできないという孤独感を深めてしまわないように、従業員への情報発信の頻度を増やしていきました」と言います。
星野さんは2020年7月、ツギノジダイのインタビューで「1991年から経営者をしていますが、観光を担う人材をそろえるまでにすごい時間がかかりました」と明かしました。この日の会見でも「お金を借りることはできても、人材は借りられない。コロナが収束したときに、観光業の復活を早めるためにも、人材を維持しないといけません」と訴えました。
2020年、政府は観光業を支援しようと「GoToキャンペーン」を打ち出しました。しかし、感染再拡大でキャンペーンは停止を余儀なくされ、国民の厳しい目が注がれています。星野さんは、GoToキャンペーンの再開に向けた五つの改革案を示しました。
星野さんは感染防止の観点から、「スタッフが安心してお客様を迎えられるようにするためにも、まずはワクチンの接種者をキャンペーンの対象にするべきです」と話しました。
現状は、宿泊・クーポンを含めて国内旅行の半額が補助されますが、星野さんは「補助率は宿泊代金の20%までで上限は8千円。地域共通クーポンも一律2千円」という私案を示しました。「税金を使った対策としては額が大きすぎる」と話します。
段階的に補助率を下げると、受け入れ側の事務作業が煩雑になることを理由に挙げています。
大型連休にキャンペーン利用の旅行者が集中し、「3密」につながるのを防ぐ狙いがあります。
いつでも旅行に行ける人と、土日にしか旅行に行けない人との不公平感を解消する観点からの提言です。
キャンペーンの恩恵を受ける側の星野さんが、あえて枠を狭める提案をするのは、収束後の反動を懸念するからです。「現行の制度だと、GoToキャンペーンが終われば、消費者にとって大幅な値上げになってしまいます。収束したときに値上げ幅を縮小するためにも、今から補助率を下げることが必要です」
コロナ禍で消滅したインバウンド需要について、星野さんはワクチンの接種状況などから「2023年には100%戻る」と予測しています。星野リゾートは21~22年にかけて、新たに9施設の開業を予定しています。「インバウンド需要が戻った時に、早く復活するには、予定通り開業して準備を進めないといけない」
また、コロナ禍でワーケーションが広まりましたが、星野さんは収束後もその流れが続くかどうかに、危機感を持っています。「テレワークは労働時間の把握が難しいという課題があります。収束しても、企業が課題に対応できなければ、また出勤してタイムカードを押すという流れに戻りかねません」
観光業は多くの中小企業が関わるなかで成り立っています。第4波の収束も見えずに苦しむ企業は、どのような取り組みをするべきでしょうか。星野さんは「対策は一つに絞れません。リピート客の呼び込みに加え、マイクロツーリズムが一段落すれば、大都市圏からの観光客を受け入れないといけない。インバウンドを意識する時期も来るでしょう」と課題を話しながらも、こう付け加えました。
「小さな旅館などは生産性を高めるために、働き方を工夫しないと優秀な人材は集まりません。ただ、私たちもかつては同じ課題を抱えていました。(本社のある)軽井沢から事業を広げるのにも、10年かかりました。中小企業は様々な課題を一気に整えるのが難しい面があります。コロナ収束に向けて、バランスを取りながら一歩ずつ体制を整えるのが大事ではないでしょうか」
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