目次

  1. オンライン展示会とは
  2. オンライン展示会とリアル展示会との違いと留意点
    1. 来場者の滞在時間が短い
    2. 顔を合わせてのコミュニケーションが生まれづらい
    3. 商談化に比較的時間がかかる
  3. オンライン展示会、コミュニケーション促進へ
  4. オンライン展示会、2021年のトレンド
    1. リアル・オンライン同時開催の増加
    2. 補助金によるオンライン展示会出展の加速
    3. 「出展する」から「主催する」方向へのシフト
  5. 用途別・オンラインイベントプラットフォーム比較9選
    1. 自社カンファレンスにオススメのプラットフォーム3選
    2. 展示会・製品紹介・商談会におすすめのプラットフォーム3選
    3. 就職・転職説明会などにおすすめのプラットフォーム3選
  6. オンライン展示会が生む新たなBtoB交流の形

 オンライン展示会とはその名の通り、オンライン上で開催される展示会イベントのことを指します。

 その特徴は端的に「会場へ実際に足を運ぶ必要がない」という一点に集約されるでしょう。

 現実の会場という制約を離れることで、ヒト・モノ・カネ・そして時間のコストが大幅に低減される点が、オンライン展示会の大きなメリットです。

 しかし、この特徴は一方で、来場者の心理や行動パターンに大きな変化をもたらします。

 この変化を踏まえて展示会に臨まないと、期待よりも効果が得られない…ということになりかねません。以下、オンライン展示会における来場者の行動について、過去開催した際の事例なども交えつつ解説します。

 従来の展示会の場合、来場者は半日~1日程度、その展示会会場に滞在するケースが大半でした。

 一方でオンライン展示会の場合、来場者は自宅・またはオフィスから参加する形となります。会社や自宅を離れられないため、必然として「業務の合間をみて参加する」という形がほとんどです。

 また、来場者の行動パターンも「目的のコンテンツ(講演など)を見に来る」という意識が強く、じっくり会場をめぐって情報収集をする……という行動は少ない傾向にあります。

 筆者が所属するストラーツが2021年に開催した「IT&MARKETING EXPO2021」でも、目的の講演を視聴したあと、すぐに離脱する…という行動がみられました。

オンライン展示会「IT&MARKETING EXPO」のイメージ

 そのため、オンライン展示会に参加する際は、以下のポイントを意識しましょう。

  • どのようなユーザーを狙うのかを明確にしておく
  • アピールポイントを絞り、一目で興味を惹くようにする

 オンライン展示会のプラットフォームには、チャットや動画を使ったコミュニケーション機能を実装しているものが多くあります。

 しかし、オンライン上で見知らぬ他人に話しかけることに抵抗を覚える来場者も多く、実際の展示会と比べてコミュニケーションが生まれづらいという現状があります。

 プラットフォーム提供者側も、コンシェルジュサービスなどを始め、コミュニケーションを促進させる工夫をしていますが、参加・主催する側としても以下の点に留意するとよいでしょう。

  • コミュニケーションを促すための文言・導線設計を意識する
  • 営業部署と連携し、興味を持ってくれたユーザーに対して自社側からスムーズにアプローチできる体制を整える

 実際の展示会と比較して、オンラインで参加したユーザーは訪問した1社1社の印象が残りにくいという側面もあります。

 一方、オンラインの強みとして、名刺情報だけでなく、ユーザーがどのようなコンテンツをどの程度利用したのか……といった行動履歴も取得できる点があります。

 データを元にして来場者の興味・関心の度合いに合わせたきめの細かいアプローチを取ることで、長期的に見た商談化率を高めることができるでしょう。

 実際の事例として、来場者を「部署・役職・興味関心」といった要素によるグループ分けを行って個別のメッセージを行った結果、返信率が1%から4~6%まで向上したという企業の例があります。

  • データを活用して名刺リストをグループ分けし、細かい対応を行う
  • イベント会期中だけでなく、会期後も含めた中~長期的なフォローを意識する

 上記に留意することで、オンライン展示会の効果をより最大化することができるでしょう。

オンライン展示会「IT&MARKETING EXPO」の管理画面

 オンライン展示会の形もまだまだ発展途上であり、各プラットフォーム提供者も試行錯誤を繰り返しています。

 たとえば、海外のオンラインイベントプラットフォーム最大手のHopinは、動画配信サービスのStreamYardをはじめとする複数のビデオ配信企業を買収するなど、「動画を主体としたコミュニケーション」の促進に力を入れています。

 参考:バーチャルイベントプラットフォームのユニコーンHopinがさらに2社を買収しビデオ事業に3倍賭け(TechCrunch)

 来場者の「慣れ」も含め、今後はオンラインでも実際の展示会と同じように、フェイス・トゥ・フェイスでのコミュニケーションが促進されていくと考えられます。

 進化を続けるオンライン展示会プラットフォーム。2020年はIT系の業界での利用が目立ちましたが、2021年には業種のすそ野も広がり、またトレンド自体にも変化が見られつつあります。

 ひとつめのトレンドは、「リアルとオンラインのハイブリッド開催」という形の増加です。特に、以前から大規模な会場を借りて行っていたような展示会で多くみられています。

 オンライン同時開催により、イベント中止のリスクを一定軽減できることが大きな理由でしょう。また同時に、会期前のプロモーションや、会場に来なかった来場者のフォローなどといった形で活用されるケースがよく見られます。

 今後導入が進むことで「出展社の企業ブースをオンラインでも同時配信する」等、オフ ライン展示会のサポート……という役割を担う形になるかもしれません。

 2021年から、展示会関連の助成金がオンライン展示会に対応するケースが増えています。

 たとえば、東京都中小企業振興公社が実施する「中小企業販路拡大事業支援補助」(PDF方式:4.87MB)のうち、「展示会出展に関する助成」については、令和3年(2021年)より、オンライン展示会への出展料も補助の対象となりました。

東京都の展示会出展に関する助成の募集要項の一部を引用

 オンライン展示会への出展費用については、最大20万円までが助成対象となります。

 こうした助成金を背景に、今後もオンライン展示会の主催・出展はますます増加していくと考えられるでしょう。

 最後のトレンドは、「自社で展示会を主催する」方向へのシフトです。

 たとえば、パナソニックは2021年1月、自社が出展した展示会「CES International 2021」の開催時期と連動する形で、自社の新規事業を紹介するオンライン展示会「CES 2021 Panasonic in Tokyo」を開催しています。

 オンライン展示会は主催するコストが比較的少ない点や、コンテンツや来場者の管理が比較的容易であるというメリットがあります。

 そのため今後も「オンライン展示会に参加する」から「自社でオンライン展示会を主催する」方向へのシフトはより進んでいくでしょう。

 自社製品の発表会や、既存顧客とのリレーション構築を中心としたカンファレンスイベント、就職・転職説明会、株主総会のオンライン配信……等々、多岐にわたる企業イベントがオンライン化していくと予想されます。

 最後に、オンラインでの展示会・イベントの主催を考えている企業向けに、用途別におすすめのプラットフォームをご紹介します。

  1. コクリポ
  2. ネクプロ
  3. V-CUBEセミナー
  4. EventBASE
  5. EventHUB
  6. ショウダンデス
  7. oVice
  8. Remo
  9. Gather

 自社でのカンファレンスイベントなど、比較的小規模なイベントを開催する際におすすめのプラットフォームを紹介します。

コクリポ

 「手軽さ」「安さ」に特化したウェビナープラットフォームです。シンプルな構成ですが、応募ページの作成から集客、開催後のアンケート送付まで一通りの機能がそろっており、まずは一度始めたい…という企業にとって利用しやすいと言えるでしょう。

 フリープランが用意されているほか、有料プランも初月無料で利用できる点も魅力です。価格は次の通りです。

  • フリープラン:0円
  • ビジネスプラン:33,000円/月(税込)
  • エンタープライズプラン:77,000円/月(税込)

ネクプロ

 オフラインの会場をオンラインで同時配信することに特化したウェビナープラットフォームです。QRコードを使った現地会場の入退場管理や、録画動画の会員限定配信機能など、オフラインのイベントと連携した管理機能が充実しています。

 価格は問い合わせが必要です。

V-CUBEセミナー

 プラットフォームの提供だけでなく、配信用スタジオやスタッフの提供までをワンストップで提供している点が特徴です。1開催あたり35万円~から開催できるため、運用までを一括で外注したいという企業におすすめです。価格は次の通りです。

 1開催あたり35万円~(プラットフォーム利用料、配信スタジオ使用料、配信スタッフによるサポート含む)

 続いて、比較的大規模な展示会や商談会といったイベントを主催したい企業におすすめのプラットフォームを紹介します。

EventBASE

 自社カンファレンスから、リアル・オンラインハイブリッド型の展示会まで、あらゆるオンラインイベントに対応するプラットフォームです。

 「動画配信」と「企業オンラインブース」の2つのセクションを活用し、実際の展示会に近い体験を提供する点が特徴。

 またビデオ通話によるコンシェルジュ機能や、出展社と来場者のコミュニケーションを促進するランダムマッチング機能なども備えており、従来のオンライン展示会の課題だった「コミュニケーションの少なさ」を解決しています。

 価格は6万円~/月(税別)で、詳細は問い合わせが必要です。

EventHUB

 チケットの有料決済機能や、外部ツールとの連携、顧客データの分析機能など、イベント主催者の利便性を高める様々な機能が充実している点が特徴。

 自動レコメンド機能や主催者おすすめ機能といった機能による高いマッチング率・エンゲージメント率をうたっています。

 価格は問い合わせが必要です。

ショウダンデス

 ウェブサイトのような2Dのページだけでなく、バーチャルブース、3Dデザイン、画面を操作して動き回れる3D会場など、さまざまなパターンの会場フォーマットを用意しているプラットフォームです。

 またVR・ARへの対応などにも対応しており、実際に展示会場を歩いているような体験を提供することができます。

 価格は問い合わせが必要です。

 就職・転職説明会など、複数人とのグループミーティングが中心となるオンラインイベントにおすすめのプラットフォームを紹介していきます。

oVice

 仮想空間に来場者のアイコンが表示され、アイコンが近づくと音声による会話ができる…という形のプラットフォームです。

 アイコン同士の距離によって声の大きさも変わるため、実際に会場にいるような臨場感を味わえる点が大きな特徴となります。

 価格は次の通りです。
Meetup:2,500円/週(税別)
Conference:10,000円/週(税別)
Exhibition:25,000円/週(税別)

Remo

 仮想空間のテーブルの座席に各参加者が着席する形で、同じテーブルに座った人どうしでのミーティングなどを行うことができるイベントツールです。

 主催者がプレゼンをするための「ステージ」を設定することで、カンファレンス会場にすることもできるため、たとえば講演のあとにテーブルごとの交流会・グループディスカッションにシームレスに移行するといった活用が可能です。

 価格は次の通りです。
Host:125$/月
Director:450$/月
Producer:850$/月
Boutique:1950$/月

Gather

 まるでゲームのようなキャラクターを操作して、会場に参加する形のプラットフォームです。キャラクター同士が近づくと距離に応じて声や相手の顔が見える仕組みです。

 主催者は仮想空間を自由にデザインすることが可能で、近づくと動画が表示されるエリアを作ったり、外部サイトへのリンクを特定のオブジェクトに埋め込んだり…といったカスタマイズをすることができます。

 価格(会場を2時間使用する場合)は次の通りです。
Town:1来場者ごとに1$
City:1来場者ごとに2$
Metropolis:1来場者ごとに3$

 新型コロナウイルスの流行からはじまったオンライン展示会の隆盛ですが、その本質的なゴールは、5G通信の普及を背景とした「リアルタイム動画を主体としたコミュニケーション」であると考えています。

 これからの時代は、場所や時間を問わず気軽に展示会に参加できるようになり、商談化のサイクルもどんどん早くなっていくと考えられます。

 来場者が短期間で大量の情報を見ていく中で、いかに埋もれずにインパクトを残していくかが、今後の展示会戦略において重要な課題になっていくかもしれません。