【キャッシュフロー計算書・資金繰り表とは】作り方や見方を解説
中小企業経営者が決算書を活用するには、キャッシュフロー計算書と資金繰り表の理解が必要です。日々の経営に必要となる現金をショートさせないためにも、表の作り方や見方について、架空の企業事例などをもとに解説します。
中小企業経営者が決算書を活用するには、キャッシュフロー計算書と資金繰り表の理解が必要です。日々の経営に必要となる現金をショートさせないためにも、表の作り方や見方について、架空の企業事例などをもとに解説します。
目次
これまで、決算書をテーマにした記事では、貸借対照表と損益計算書を取り上げました。これらを理解すれば、会社の現状を大体把握できます。しかし、経営者からは時折、「うちの会社は毎年利益が出ているのに、現金が足りない。なぜでしょう」と相談されることがあります。
この問題を考えるのに必要なのが「資金繰り」になります。「勘定合って銭足らず」という言葉を聞いたことある方も多いと思います。この意味は、帳簿はあっているけど、現金が足りていない状態を指します。
なぜこのような状態が起きるかといえば、売り上げの計上と、現金が入るタイミングは違うからです。
例えば、パン屋を例に説明します。
5月1日にパンを3万円売ったとします。そのうち2万円はクレジットカードで決済し、残りの1万円は現金で受け取りました。この場合、5月1日の現金収入は1万円になり、通常クレジットカードの決済は後日入ってきます(決済会社によって入金のタイミングは違います)。
今回は資金繰りをテーマに、経営者が会社の現状をつかむための方法を説明します。
会社の資金繰りをつかむには、キャッシュフロー計算書と資金繰り表があります。
キャッシュフロー計算書とは、前期と比較して現金が増えたか減ったかを見るための表です。1年間の現金の流れを、「営業活動」「投資活動」「財務活動」の三つの面から分析します。
営業活動によるキャッシュフローは、商品の売り上げや原材料の仕入れ代など、本業の営業活動の結果、どのくらいお金が増えたか、または減ったかを表しています。この項目がプラスなら、事業から資金を生み出しており、逆にマイナスであれば、資金が行き詰まっていると考えられます。
投資活動によるキャッシュフローは、例えば、機械や車両などの固定資産の購入や売却など、本業を行うために投資をどのくらい行ったかを表しています。この項目がプラスなら、固定資産の売却をしており、逆にマイナスであれば、固定資産を購入したことになります。
財務活動によるキャッシュフローは、借り入れや株式の発行などで資金調達をどのくらい行ったかを表しております。こちらがプラスなら、金融機関からの借り入れや新たな出資などを受けたことになり、逆にマイナスであれば、借入金の返済を行っているといえます。
営業活動によるキャッシュフローの合計額と、投資活動によるキャッシュフローの合計額を足すと算出されるのが、フリーキャッシュフローです。フリーキャッシュフローとは、会社が事業活動で得た資金のうち、どのくらい自由に使えるかを表しています。
こちらがプラスであれば、事業資金に余裕があると言えます。万が一マイナスなら、事業資金の余裕がないので、事業維持のための借り入れや売掛金・在庫の圧縮、不要な固定資産の売却を検討し、フリーキャッシュフローをプラスにする必要があります。
自社でキャッシュフロー計算書を作成する場合は、連続する2期を比較しながら、以下の手順で進めます。
その際、営業活動によるキャッシュフロー、投資活動によるキャッシュフロー、財務活動によるキャッシュフローはそれぞれ、以下の項目をプラスとマイナスに分けて計算します。
営業活動によるキャッシュフローに関する項目は、主に以下の表の通りです。
投資活動によるキャッシュフローの項目は、主に以下の表の通りです。
財務活動によるキャッシュフローの項目は、主に以下の表の通りです。
実際にキャッシュフロー計算書を作って、上記で挙げた項目と、自社のキャッシュフローを照らし合わせることで、改善点が見えてきます。ぜひ一度作成してみてください。
資金繰りを把握するうえで、もう一つ大事なものは、資金繰り表です。資金繰り表とは、簡単に言えば、会社のお金の出入りを記録した書類です。なぜ大事かというと、リアルタイムで資金の流れをつかむのに有効だからです。
キャッシュフロー計算書の場合、2期分の決算書を並べて作成するため、大まかな現金の流れはわかりますが、直近のお金の流れはわかりづらくなります。そのため資金繰り表を作成して、直近の資金の流れを把握することが多いです。
今回、資金繰り表のイメージを、下記のように作成しました。
図を見ると、1日ごとに入金や出金を記録しています。これは過去だけでなく将来にわたって記載することが大切です。例えば、リース料の支払いや金融機関からの借り入れの返済、給与や家賃の支払い、売掛金の入金など、支払日や入金日が決まっているものは、あらかじめ資金繰り表に記載します。
この図のように、月末の残高はプラスになっていても、月の途中である25日にはマイナスになっていることがわかります。資金繰りにおいて、もしマイナスが発生すると分かっているなら、事前に対策を講じる必要があります。
例えば、金融機関に借り入れの申請をしたり、現金収入につながるものを販売したり、資産を売却したりなどの方法が考えられます。様々な対策を講じて、現金がゼロやマイナスにならないように管理することが、資金繰りのポイントです。これは、経営者が行うべき重要な仕事の一つです。
ここでは、冒頭でも書いた「勘定合って銭足らず」の状態がなぜ起こるのかを、事例を出しながら説明したいと思います。
製造業として独立することになったA社は、営業が順調に進みB社から継続的な受注を受けることができました。売り上げは毎月2千万円ずつ発生します。売り上げの半分は現金で受け取り、もう半分は2カ月後に入金されます。
製造をするための原材料が毎月500万円かかり、現金で支払うことになりました。また月々かかる経費1千万円も現金で支払っています。計算すると、毎月500万円ずつ利益が出ていますが、早くも現金が足りなくなりました。なぜでしょうか。
この事例を、もう少しわかりやすく表にまとめたいと思います。
この表は上段が利益を、下段が資金繰りを表しています。上段の表を見ると、利益は毎月500万円(売上2千万円-仕入500万円-経費1千万円)が計上されています。
下段の資金繰りを見ると、売り上げ2千万円のうち現金で入ってくるのは1千万円です。これに対して、出ていくお金は1500万円(仕入500万円+経費1千万円)です。すでに最初の月から500万円足りない状態です。
では、A社は事業を始める際に、資金繰りをどのように考えればよかったでしょうか。例えば、以下のような方法を挙げることができます。
この事例から、経営者が資金繰りで考えなければいけないポイントが見えてきます。
支払う現金がないと事前に分かったら、金融機関からの借り入れや現金売り上げの創出、売掛金の早期回収など、早めの対策を立てて現金を常にプラスにする必要があります。
取引先との兼ね合いもあるので、一度、締め日と支払日・入金日を決めてしまうと、変更は非常に難しくなります。今後、新たに取引するところに対しては、締め日と支払日、入金日を見直すことで、資金繰りを改善できる可能性があります。ポイントとしては、入金日を少しでも早めに、支払日を少しでも遅めにすることです。
経営者としては、これから少なくとも3カ月から半年先の資金繰り表を作成し、自社の資金が足りているのか、もし足りていなければいつまでに工面しなければならないかを見通すことが必要になります。
ここまでご覧いただいて、自社の資金繰りが気になった方も多いかと思います。最終的には、経営者自身で資金繰り表を作成することです。
はじめの一歩として、自社の経理担当者や顧問の税理士の先生に「自社の資金繰りを自分で管理できるようにしたいので、手伝ってほしい」と伝えて、一緒に資金繰り表を作成してみてはいかがでしょうか。
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