目次

  1. 福利厚生費とは
    1. 法律によって定められている福利厚生費(法定福利費)
    2. 会社が独自で設定している福利厚生費(法定外福利費)
  2. 福利厚生費と交際費・消耗品費との違い
  3. 福利厚生費の要件3つ 非課税対象になるもの・ならないものの違いとは
  4. 福利厚生費に計上できる例・できない例
    1. 住宅手当
    2. 出張手当
    3. 忘年会/新年会費用(一人当たり)
    4. そもそも福利厚生費にならない例
  5. 福利厚生費の計算方法
    1. 健康保険・厚生年金
    2. 雇用保険・労災保険
  6. 福利厚生費の特徴を把握して経費計上できるか正しく判断しよう

 福利厚生費とは、会社が従業員のために支給する給料や賞与とは別に、付与される報酬のことです。

 福利厚生は、企業にとっては、働きやすい職場環境を対外的にアピールでき、求人の際に有利にはたらいたり、離職回避につながるといったメリットもあります。

 また、給料や賃金での支給の場合より、福利厚生費として従業員に還元することは、消費税が節税になるケースも多く、その点もメリットになってきます。

 一方、従業員にとっても原則、所得税がかからずに支給されるため、節税になるメリットがあります。

 福利厚生費に認められるもの・認められないものの区別を間違えずにつけるために、まずは福利厚生費の種類を整理します。

 福利厚生費には、大きく分けて2種類に区分されます。法律によって定められている福利厚生費(法定福利費)と、会社が独自で設定している福利厚生費(法定外福利費)です。

 法律によって定められている福利厚生費とは、会社負担分の社会保険料をいいます。

 社会保険料は、個人が負担し毎月の給料や賞与から差し引かれる部分に加えて、会社が負担している部分があります。

 社会保険料は主に以下の内訳になっており、個人と会社で概ね以下の金額を負担しています(金額は、2021年東京都勤務、給料額面30万円、協会けんぽ加入、一般の事業、その他の各種事業(労災保険)を想定)。

本人負担 会社負担 メモ
健康保険 29,520円 29,520円 9.84%(11.64%)
厚生年金 27,450円 27,450円 18.3%
児童手当拠出金 0円 1,080円 0.36%
雇用保険 900円 1,800円 0.3%(0.6%)
労災保険 0円 900円 0.3%
合計 57,870円 60,750円

 会社は、原則、給料(役員報酬を含む)の支払いがある場合、社会保険に加入しなければなりません。

 会社負担の社会保険料があることで、従業員は健康保険や将来の積み立てである厚生年金等の自己負担が少なくすんでいる、と考えられることもできるでしょう。

 なお、社会保険に加入していない会社も実際には存在しており、転職などの際は注意が必要です。

 会社が独自で設定している福利厚生費には、まず一定の条件を満たす従業員に支給する現金(例えば住宅手当や育児手当、リモートワーク手当)があげられます。

 また、金銭の支給ではなく、会社独自で設定した休暇(特別休暇)を付与して、福利厚生を拡充している会社もあります。

 さらに、会社内部だけではなく、外部業者サービスを福利厚生として活用した場合にかかる費用も福利厚生費にあたります。

 なお、社内従業員を対象にした慰労会や忘年会、新年会の開催にかかる諸費用も福利厚生費となります。

 法律によって定められている福利厚生費は、そもそも何に対する費用なのかはっきりしているため、「これは福利厚生費である」と判断がしやすいものです。

 一方、会社が独自で設定している福利厚生費は、自由に設定できてしまうために、「福利厚生費に該当すると思っていたけれど、実は福利厚生費ではなかった」となることが珍しくありません。

 「これは福利厚生費として認められるのかどうか」を判断するとき、とくに注意したいのが交際費や消耗品費との区別です。

 交際費とは、国税庁の法令解釈通達によれば、『交際費、接待費、機密費、その他の費用で法人がその得意先、仕入先その他事業に関係ある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出するもの』です(引用:第1款 交際費等の範囲│法令解釈通達│国税庁)。

 よって交際費と福利厚生費の大きな違いは、外部の方が含まれているかどうかになります。

 たとえば取引先や協力会社等の外部者が参加している食事会や外部の方への贈答品の購入代金は、交際費となりますが、従業員に向けた食事会や(一定範囲の)贈答品の支給の場合は、原則、福利厚生費です。

 消耗品費とは、業務に直接関係のある費用であり、1つの構成単位で10万円未満であり使用可能期間が概ね1年以内の有形物をいいます。

 例えばボールペンや簡易的なプリンタ、マウス、ホワイトボード、デスクといったものが該当します。

 そのため、業務に直接関係する必要がない福利厚生費と業務に直接関係のある費用である消耗品費とでは、業務への関連性で違いがあります。

 福利厚生費は、従業員や従業員の家族を対象とした慰安や、働きやすい職場環境の一環で提供される付加サービスにかかる費用であり、業務に直接関係がない費用になります。

 これが、業務に直接関係する費用である交際費や消耗品費との大きな違いです。

 ただし業務に直接関係がなければ、すべて福利厚生費として認められるわけではありません。

 福利厚生費として税務上の費用として認められる(=損金算入できる)ためには、以下の3つの要件をすべてクリアしている必要があります。

  • 給料ではないこと
  • 対象が全従業員であること
  • 金額が社会通念上、妥当であること

 事業運営における経費として損金算入できるか否かは、「業務関連性」「必要性」「通常性」の3つの観点で判断されることが多いと思われます。

 この3つの観点は抽象的要素が多く、ケースによって判断が異なってきます。

 「福利厚生費として認められるための3要件のいずれかがクリアできていない」「業務関連性・必要性・通常性の点で説明ができる」場合、福利厚生費としては認められませんが、従業員への「賞与」として損金算入ができる可能性があります。

 ただし、賞与となる場合は、源泉所得税の徴収が必要となる点に注意が必要です。

 福利厚生費には、2種類あることをご紹介しました。1つは、法律によって定められている福利厚生費(法定福利費)。もう1つは、会社が独自で設定している福利厚生費(法定外福利費)です。

 法律によって定められている福利厚生費である社会保険料(会社負担分)は、内容が割と明確な費用ではっきりしています。

 一方、会社独自の福利厚生費は、対象がはっきりしておらず、3つの要件があると言われてもイメージがつきにくいところかと思います。

 例えば、慰安旅行の参加費用が給料なのか福利厚生費なのか、従業員のために購入した10万円未満のパソコンが消耗品費なのか福利厚生費なのかといった具合です。

 ここでは、費用の内容によって、どういうケースが福利厚生費として計上できるのか、そしてどういう場合に計上できないのかについて、例を交えて紹介します。 

費用項目 福利厚生費に計上できる例 福利厚生費に計上できない例
住宅手当 従業員が居住するための家賃支払いの一部を会社が負担するケース 従業員以外が居住するための家賃の一部もしくは全部の支払いをするためのケース
出張手当 会社により作成された旅費規定の範囲内で支給された出張手当 会社の規定がなく支給された出張手当や、一部の従業員だけを対象とした出張手当
慰安旅行手当 旅行期間が4泊5日以内であり、全従業員の50%以上が参加しているときに支払った費用 1週間以上の長期間で、かつ特定の従業員のみで実施した海外旅行にかかった費用
忘年会/新年会費用 ・全員参加のケース
・一人概ね5,000円程度
・全員参加ではないケース
・必要以上に高額なコース料理に対して支払った費用
・2次会/3次会の費用
懇親会費用 取引先等を含まない、従業員が対象の場合で、全員参加を前提とした食事会であり、常識の範囲内の金額の場合 取引先等の外部を含めた食事会であり、一人当たり5,000円を超える場合
▷交際費と考えられ、中小企業の場合、年間800万円を超える部分は損金と認められない
残業の際の食事代 ・全員を対象とするケース
・常識の範囲内の金額であること
・食事代の全額を会社が負担すること
・残業時間(定時時間外)であること
・全員を対象としていないケース
・実費精算ではなく、一定金額の付与の場合
慶弔見舞金 ・慶弔規程等に基づく支給であること
・金額が常識的であること
・全従業員が対象であること
・一部のスタッフに対してのみ支給されているケース
・金額が著しく高額であるケース
健康に関する手当 全従業員を対象としている場合や、一定の年齢以上の希望者全員に対する人間ドックの費用 役員や一定の地位にある人だけを対象とした健康診断費用

 ご覧いただくわかるように、従業員のためにと支給した費用が必ずしも福利厚生費として認められるわけではありません。

 原則、福利厚生費の要件を満たした内容であれば、福利厚生費として会計処理が可能であり、一定の節税効果を生みます。

 一方、福利厚生費に計上できない内容のものを福利厚生費として会計処理してしまうと、思わぬ落とし穴(ここでは税務リスク)にハマってしまう可能性がありますので、十分な注意が必要になります。

 また、この表にある費用項目のうち、特に重要なものを以下で詳しくご紹介します。

 住宅手当とは、会社が定めた福利厚生の一環で、従業員が個人で賃貸した家賃の一部を会社が負担するものをいいます。

 会社が負担する割合は、会社によって異なりますし、限度額を設けている会社もあります。

 また、賃貸に限らず購入物件の方に対しても、家賃相当額の一部を支給するケースもみたことがあります。

 住宅手当を設定する背景には、会社からある程度近い距離で通勤して欲しい、という思いがある会社で設定されることが多い印象です。

 住宅手当と似ていますが、若干違う制度として、社宅制度を活用している会社もあります。

 いずれにしても、福利厚生費として認められるには、それが従業員のために支払われたものかどうかが分かれ目となります。

 出張手当とは、会社が定めた出張旅費規程に基づき、従業員や役員が勤務地から離れた地域に出張する際に支払われる手当のことです。

 出張に伴って発生する諸雑費の補填を目的として支給されます。

 国税庁の財務基本通達によれば、福利厚生費として認められるためには、役職に関係なく適正な金額が支払われているか、同じ業種や同じ規模の会社と比較して相当と認められるか、などがポイントになります。

 忘年会/新年会等の会社行事としての食事会が福利厚生と認められるためには、まず「全員参加」が前提になります。一部のメンバーを対象にしたものは福利厚生費とはなりません。

 また、金額も「一般的に妥当な金額であること」がひとつの目安になります。イメージは一人5000円でしょう。

 なお、忘年会/新年会費用は、一次会までが福利厚生費と考えられ、二次会以降は該当しないと考えられます。

 理由は、二次会以降はあくまでも任意での参加であり、全員参加を前提とすることがないと考えられているからです。

 また、内容によってはそもそも福利厚生費ではなく、別の費用処理が必要な項目もあります。

 旅行券などの金券の支給やスーツなどの現物支給は、福利厚生費ではなく、金銭以外により支払われた給料となります。給料として損金算入はされますが、源泉所得税の徴収の対象となるため、ご注意ください。

 会社における福利厚生のうち、会社が独自で設定している福利厚生にかかる費用は、それぞれの会社によって計算方法が異なります。

 そのため、ここでは、法律で義務付けられている会社負担分の社会保険料の計算方法をご紹介いたします。

 なお、会社負担の社会保険料は、会計上、福利厚生費ではなく、法定福利費という項目で会計処理をされることが一般的です。

 ここでは一般的な協会けんぽに加入している場合を想定し、記載します。

 健康保険・厚生年金は、基本給+諸手当の合計金額に料率を乗じて算定されます。この料率は、都道府県ごとに定められており、年1回の改訂がされています。

 なお、健康保険・厚生年金とは別に年齢が40歳以上の方には、介護保険の負担も生じており、同様に会社も介護保険の負担が福利厚生として発生してきます。

 料率は、健康保険(介護保険なし)の場合、会社負担は4.92%(従業員負担も4.92%)になります。介護保険は、会社負担0.9%(従業員負担も0.9%)になります。厚生年金の料率は、会社負担9.15%(従業員負担も9.15%)となっています。

引用:令和3年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表(東京都)│全国健康保険協会

 雇用保険・労災保険も健康保険・厚生年金同様、基本給+諸手当に料率を乗じて算定されます。雇用保険は、一般事業の場合、会社負担が0.6%(従業員負担0.3%)です。

 一方、労災保険は業務上の事由又は通勤による労働者の負傷・疾病・障害又は死亡に対して労働者やその遺族のために、必要な保険給付を行う制度であり、事業の種類によって労災の発生率が異なるため、0.3%〜6%となっています。

 労災保険は全額が会社負担であり、従業員による負担はありません。

 福利厚生の仕組みを会社にうまく展開し、働きやすい職場環境をつくることは、優秀な人材確保や離職率の低下につながります。

 福利厚生費にともなう支出のほうが、従業員獲得のための広告宣伝費などよりも安くすむケースは珍しくありません。

 ただし、福利厚生費と認められるためには一定の要件があります。経費計上できるか正しく判断するためにも、福利厚生費の特徴をまずは把握しておきましょう。

 また、繰り返しになりますが、あくまでも福利厚生は、従業員が働きやすい職場環境を補助するためのものです。

 従業員が働きやすい職場環境をつくる要素は、福利厚生だけではなく、就業規則や退職金制度の整備・導入、評価制度の可視化・ルール化、休みの取りやすい職場環境など、それ以外の要素もあります。

 また、福利厚生の制度やルールは、会社の管理業務を複雑にしてしまうデメリットもあります。

 福利厚生にだけ目を向けすぎず、より多くの視野で、従業員の満足度を高められることが理想でしょう。