牛乳石鹸の赤箱が「おしゃれ」に変身 口コミでは予期せぬ洗顔ブーム
赤い箱に牛のマーク。懐かしの「牛乳石鹸(せっけん)」がここ数年、若い世代の間で洗顔料として人気だ。ボディーソープやハンドソープに押されて苦戦する時期が続いたが、いまは売り上げがV字回復しているという。(田中奏子)
赤い箱に牛のマーク。懐かしの「牛乳石鹸(せっけん)」がここ数年、若い世代の間で洗顔料として人気だ。ボディーソープやハンドソープに押されて苦戦する時期が続いたが、いまは売り上げがV字回復しているという。(田中奏子)
赤い箱に牛のマーク。懐かしの「牛乳石鹸(せっけん)」がここ数年、若い世代の間で洗顔料として人気だ。ボディーソープやハンドソープに押されて苦戦する時期が続いたが、いまは売り上げがV字回復しているという。
牛乳石鹸共進社(大阪市)が、看板商品の「カウブランド赤箱」(100g、希望小売価格は税込み110円)を売り出したのは1928年。
1949年には、全国展開に向けて「少し小さく、少し安く」した「青箱」(85グラム、税込み88円)も発売した。そのため今も関西を中心とした西日本では赤箱、東日本では青箱が売れているという。
近年、せっけん市場は縮小が続き、「赤箱」の売り上げも1990年代に比べて3割まで落ち込んでいた。だが2015年度からは一転して伸び続け、2020年度は2014年度と比べて約2倍にまで増えた。
人気復活のきっかけは、化粧品の口コミサイトだった。「洗い上がりのつっぱりがない」「こんなに泡立つとは!」。投稿にはそんな言葉が並ぶ。
同社にとっても、予期せぬブームだった。
「え、洗顔に使うの?」。社員も最初は驚いたという。赤箱は手や体を洗うもの。定位置は学校の手洗い場や洗面所。洗顔料として売り出したこともない。それがどこからともなく、「肌にいい」と広まった。せっけんの固定観念がない若い世代には、洗顔料として受け入れられやすかったのかもしれない。
マーケティング担当の木谷崇さん(49)は「赤箱の価値を、お客様に気づかせてもらったんです」と振り返る。
赤箱は自然なローズの香りとしっとりさ、泡立ちの良さが特徴だ。その秘密は、93年間変えていない製法にある。
熟練の職人が、直径4mの釜で牛脂、ヤシ油、水酸化ナトリウムを1週間かけて炊き上げる。他のせっけんは数十分でつくれる製法を採用することが多いが、時間をかけることで天然の潤い成分をうまく残すことができるのだという。
一昨年には奈良ホテル(奈良市)とコラボしてパッケージに牛でなく鹿を描いた限定の赤箱をつくったり、セレクトショップ「ビームス」のイメージカラーを採り入れた「橙(だいだい)箱」を売り出したりもして、話題になった。
「まさか赤箱が『おしゃれ』の立ち位置になるなんて。これからもコツコツと、若い世代にせっけんの良さを伝えていきたい」。木谷さんはそう意気込む。(2021年10月30日朝日新聞地域面掲載)
1909年創業。従業員約370人。固形せっけんで国内シェアトップ。社名の由来は、粘り強く前進するという意味の格言「商いは牛のあゆみのごとく」。せっけんに牛乳をそのまま使っているわけではないが、牛乳由来の保湿成分(ミルクバター)を配合している。
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