目次

  1. ロジスティクスとは
    1. ロジスティクスと物流の違いとは?
  2. ロジスティクスマネジメント導入のメリット
    1. モノづくりの効率化
    2. コストの削減
    3. 顧客満足度の向上
  3. ロジスティクスマネジメントを導入するときのポイント
    1. ロジスティクスプランを立てる
    2. ロジスティクスマネージャーをアサインする
    3. 3PL(サードパーティー・ロジスティクス)を活用する
  4. ロジスティクスマネジメントとSCMの違いは?
  5. ロジスティクスマネジメントを導入する時に参考になる事例
    1. 雑貨輸入商社F社の事例
    2. 食品輸入商社D社の事例
  6. 特にロジスティクスに注目を

 ロジスティクス(Logistics)とは、モノの原材料調達から生産、管理、物流、販売などを全体的に一元的に管理する仕組・コンセプトのことです。

 もともとは1830年にフランスで軍事用語として誕生し、1846年にイギリスでも軍事用語として採用されました。なお、軍事用語Logisticsは、日本語では「兵站(へいたん)」と翻訳されています。

 ロジスティクスのコンセプトは、20世紀に入るとビジネスの世界において、20世紀初頭には欧米を中心にほぼ現在と同じような意味において使われるようになりました。

 アメリカのロジスティクス関連業界団体のサプライチェーンマネジメントプロフェッショナルズは、ロジスティクスを「ロジスティクスとは、消費者の要請に応じてモノやサービスの原産地から最終消費地までの間における効率的で効果的な輸送と在庫を計画、実行、管理するプロセスであり、インバウンド、アウトバウンド、国内、海外の動きを含むものである」と定義しています(参考:SUPPLY CHAIN MANAGEMENT TERMS and GLOSSARY│ARQUIVO.PT)。

 ロジスティクスは、往々にして物流と同じ意味であるとされるケースが多いのですが、実際両者は異なります。

 ロジスティクスとは、モノづくりの最初から最後の販売までの全プロセスにおける全体的・一元的管理の仕組です。

 物流とは、モノやサービスの原産地から最終消費地までの間における輸送、在庫、流通などを行う一連の活動です。

 つまり、物流は、ロジスティクスの見地から見ると、ロジスティクスによって「管理」される対象であり、ロジスティクスを構成するひとつの重要な要素になります。

 ロジスティクスでは、物流に加えて、「購買計画」「在庫管理」「販売計画」「事業計画」「コンサルティング」といった活動も行われます。

 ロジスティクスを管理することを一般にロジスティクスマネジメントと呼びます。

 ロジスティクスマネジメント導入のメリットは、次の3点です。

 ロジスティクスマネジメント導入の最大の目的は、「消費者の要請に応じてモノやサービスの原産地から最終消費地までの間における効率的で効果的な輸送と在庫を計画、実行、管理するプロセス」を実現することです。

 実際に、ロジスティクスマネジメントを導入することで生産、物流、販売のそれぞれのフェーズにおいて業務を効率化し、ひいてはモノづくりそのものの効率化を進めることが可能になります。

 ロジスティクスマネジメントを導入し、モノづくりを効率化することで、サプライチェーン全体でかかるコストを削減することが可能になります。

 特に物流や在庫コストを削減することで、オペレーション全体のコストを大きく削減できます。

 ロジスティクスマネジメントの導入にすれば欠品や在庫切れなどを防止し、顧客が必要なものを必要な時に届けられるようになるため、顧客満足度を高めることが可能です。

 さらに、物流を最適化することで、顧客により速く製品を届けることもできるようにになります。

 顧客満足度の向上は顧客ロイヤリティを向上させ、さらなる売上と利益を自社にもたらします。

 では、実際にロジスティクスマネジメントを導入するときのポイントは何でしょうか。

 第一のポイントは、実際にロジスティクスマネジメントを導入する前に、ロジスティクスプランを立てることです。

 ロジスティクスプランを立てる際には、自社のサプライチェーンにおける、以下の問いに答える必要があります。

  • 自社にとって最適なサプライヤーは誰か?
  • サプライヤーのコスト、デリバリー、在庫水準などは適切か?
  • 最もコスト的に優位な物流システムは何か?
  • 各種の在庫を誰がどこで管理するのか?
  • ロジスティクスの各フェーズで活用できるITツールやソフトウェアはあるか?
  • ロジスティクスの各フェーズで自動化できる箇所はあるか?
  • ロジスティクスの各フェーズでアウトソースできる箇所はあるか?

 また、特に物流については、主たる輸送手段に加えて、緊急時のバックアッププランを用意しておく必要があります。

 いくら精緻で効率的なロジスティクスプランを立てても、それが適切に運営されなければ意味がありません。

 よって、ロジスティクスマネジメントを導入するときは、ロジスティクスマネージャーをアサインすることが重要なポイントになります。

 ロジスティクスマネージャーは、可能であれば、物流管理や在庫管理といったスキルや経験を持った人材をアサインできるといいでしょう。

 ロジスティクスマネージャーをアサインしたら、経営者はロジスティクスマネージャーと定期的にコミュニケーションをとるよう心がけて下さい。

 ロジスティクスマネージャーは大きな責任を担ったストレスフルな仕事です。特に規模が大きいロジスティクスにおいては、トラブルやエラーなどが頻繁に発生します。

 ロジスティクスマネージャーを1人にせず、問題や悩みをいつでも経営者に相談できる状態を保って下さい。

 社内にロジスティクスプランを立てられる人材がいない、またはロジスティクスマネージャーがいないといった場合、3PL(サードパーティー・ロジスティクス:Third party logistics)の活用を検討しましょう。

 サードパーティー・ロジスティクスとは、文字通り「第三者によるロジスティクス」という意味で、メーカーなどの企業が自社のロジスティクスをサードパーティーにアウトソースする仕組みを言います。

 アウトソースする範囲は物流、在庫、フルフィルメントなどの一部や、企業によっては自社のロジスティクスのすべてをアウトソースするケースもあります。

 アメリカでは3PLを活用する企業が非常に増えており、フォーチュン500企業の80%が何らかの3PLを利用しています。

 3PLを活用するときは、必ずしも複数の候補企業にロジスティクスプランを提案してもらい、ベストなプランを提出したところと組むよう心がけて下さい。

 また、インターネットのレビューなども参照し、事前調査をしっかり行うことも大切です。

 ロジスティクスまたはロジスティクスマネジメントという言葉とともに、SCM(Supply Chain Management)という言葉も最近よく聞きます。

 両者の違いは、その対象範囲です。

 ロジスティクスは、基本的にはメーカーなどの企業単体のサプライチェーンを対象範囲にしている一方、SCMは、企業単体ではなく、原材料メーカーや小売店、あるいはEコマースなどのすべてのプレーヤーを含めたサプライチェーンを対象範囲にしています。

 つまり、ロジスティクスは、SCMの一部を構成する重要な要素です。

 ミシガン州立大学のデービッド・クロス教授、ドナルド・ボウワーソックス教授らは、SCMを「企業がサプライヤー、消費者、他のパートナーとのコラボレーションを行い、効率性を向上させて最終消費者に対する価値を創造する一連の行為」であると定義しています(参考:Is Logistics the Same as Supply Chain Management?│MICHIGAN STATE UNIVERSITY・Supply Chain Logistics Management 4th Edition│McGraw-Hill Education)。

 最後に、ロジスティクスマネジメント導入に役立つ参考事例を2つ、ご紹介します。

 雑貨の輸入商社であるF社の事例です。

 F社は、主に中国のメーカーから生活雑貨などを輸入、卸業者を経由して全国の100円ショップなどへ流通させています。

 取扱い品目は多く、在庫が少なくなる頃合いを見ては中国のメーカーに発注、メーカーはメーカーごとに製品を日本へ輸出していました。そのため、輸出件数が相当多くなり、輸送コストや輸入通関費用などもそれなりの額になっていました。

 そこでF社社長は、知人から紹介された3PL企業に相談したところ、3PL企業が中国内に保有する物流拠点を集積地にし、中国のメーカーに物流拠点に出荷させ、そこからまとめて日本へ一括輸送する方法に切り替えるよう提案されました。

 そうすることでコンテナの積載効率を向上させ、日本までの輸送コストを下げ、輸入通関費用も抑えることが可能になります。

 また、物流拠点で検品を行うことで、日本到着後の返品リスクを大きく下げることも可能になります。この提案に、F社社長が飛びついたのは言うまでもありません。

 食品の輸入商社D社の事例です。

 D社は、主にオーストラリアとニュージーランドからマヌカハチミツなどを輸入し、卸業者を通じて全国の小売店に販売しています。

 また、一般消費者にも自社ウェブサイトでオンライン販売しています。

 一般消費者向け販売は、都内にある本社内に出荷コーナーを開設し、そこに在庫を置いて注文が入る度に担当社員がピッキング・パッキングし、毎日出荷していました。

 しかし、注文が増えてくると在庫スペースが逼迫し始め、同時に担当社員の負担が増加してきました。

 ロジスティクスの見直しを迫られたD社社長は、ある3PL企業に相談したところ、在庫からピッキング・パッキング、そしてフルフィルメントまですべて3PL企業が代行することを提案され、それに乗ることにしました。

 ロジスティクスのうち、在庫と出荷のすべての業務を3PL企業にアウトソースすることで、本社スペースを有効活用し、担当社員を出荷業務から解放させ、同時に業務効率も向上する結果になりました。

 上述の3PLを含め、近年ロジスティクスを巡る環境は大きく変化してきています。

 ロジスティクスの良否が、事業の勝敗を決する重要なファクターになりつつあります。

 また、AIやビッグデータなどのテクノロジーの活用も進み、ロジスティクスの重要性は今後さらに増してくるでしょう。

 企業経営者の皆様には、数ある経営課題の中でも、特にロジスティクスに注目されることをおすすめいたします。