目次

  1. 社内表彰制度とは
    1. 社内表彰制度と評価制度の違い
  2. 社内表彰制度のメリット
    1. メリット① 社員のモチベーションの向上
    2. メリット② 会社の理想とする社員像の浸透
    3. メリット③ 社員の潜在的な不満の緩和
  3. 社内表彰制度のデメリット
    1. デメリット① 不公平な運用がモチベーションの低下を招く 
    2. デメリット② 社員間のコミュニケーションが悪化する恐れ
    3. デメリット③ 運用コストの増加
  4. 社内表彰制度の具体的事例
    1. 事例① 永年勤続表彰
    2. 事例② MVP
    3. 事例③ 新人賞
    4. 事例④ 大失敗賞
    5. 事例⑤ ピアボーナス制度
  5. 社内表彰制度を導入するときの主な手順とポイント
    1. ステップ① 導入の目的を明確にする
    2. ステップ② 表彰の種類、選考基準、褒賞の内容を決める
    3. ステップ③ 社内規則に規定し、従業員に周知する
    4. ステップ④ 表彰を実施する
    5. ステップ⑤ 実施後、フィードバックを行う
  6. もし導入した制度がうまくいかなかった場合はどうするか?

 社内表彰制度とは、会社に対して何かしらの貢献をした社員に対して、会社が表彰を行う制度です。

 目的は、社員の会社に対する貢献を評価し、社員のモチベーションを向上させ、生産性を高めることにあります。

 表彰制度に法的なルールはなく、内容は個々の会社ごとに自由に決めることができます。

 表彰制度には、勤続年数に応じた永年勤続表彰や定年退職表彰、売上や業績に連動した業績表彰、会社の行動指針(バリュー)を体現する行動に対する表彰、業務の改善提案に対する表彰、活躍した新入社員に対する新人賞、社員間で表彰し合うピアボーナス制度など、さまざまな種類があります。

 表彰とよく似たものとして、人事評価制度があります。いずれも会社が社員を評価するものですが、次のような違いがあります。

 表彰は業務の内容に限らない幅広い貢献を対象とし、表彰の単位もさまざまです。表彰の結果は公表され、会社全体で共有するのが一般的です。

 一方で、人事評価は通常、担当業務の成果に対して行われます。個人ごとに行われ、評価の結果は公表されません。社員別の給与や人員配置に反映させることが主目的となります。

 社内表彰制度の目的は、社員のモチベーションや生産性の向上にあるとご説明しましたが、具体的には次のようなメリットがあります。

 社員にとっては、社内表彰という一つの明確な目標ができ、前向きに日々の業務に取り組めるようになります。社内表彰の選考基準・選考プロセスを明確にすることにより、一層効果が高まります。

 また、表彰を受けた社員にとっては、貢献が承認されたという意識づけとなり、会社への帰属意識にも繋がります。

 社内表彰には、表彰される社員だけではなく、それ以外の全社員に対して会社のメッセージを伝える効果があります。

 会社には「社員にはこのような働き方をしてほしい」という意向があり、それは人事評価制度などを通じて社員に伝えられます。

 人事評価制度ではどうしても1対1で直接改善点をフィードバックする形式となりますが、社内表彰制度では、そうしたメッセージを間接的に伝えることができます。

 例えば、会議での発言数や業務に直接関連しない改善提案数など、さまざまな観点からの賞を設けることで、会社の求める人物像を幅広く具体的に社員に伝えることができます。

 業績に直結しない取り組みの中には、人事評価制度ではカバーしきれないものもあります。一方で、そうした行動こそが会社を円滑に運営していく上で重要だったりします。

 気づいた人が行う、といった状態を放置していると、「せっかく会社のために行っているのに、評価されないのであればやめよう」という潜在的な不満が発生してしまいます。

 社員が会社のために行った貢献を表彰することで、そうした不満が解消され、会社への帰属意識や貢献意欲を維持することができます。

 一方で、社内表彰制度には次のようなデメリットもあります。

 これまでみてきたようなメリットは全て、表彰制度が公平であり透明性が保たれていなければ、享受できないものとなっています。

 納得感のない社員ばかりが表彰されたり、表彰対象に偏りがあったりなど、不公平な運用がなされると、逆効果となります。

 公平性・透明性は制度導入時、運用時のいずれの局面においても重要なキーワードです。

 社内表彰に対する社員間の競争意識が高まりすぎると、かえって社員間や部門間での協力体制を阻害し、コミュニケーションの悪化を招いてしまうこともあります。

 対応策としては、定量的な表彰と定性的な表彰、あるいは個人を対象とする表彰と部門を対象とする表彰など、さまざまな観点からバランスの良い制度を設計することが考えられます。

 一定時期に公平性や透明性を保った納得感のある選考を行い、全社員に向けて表彰結果の公表を行う、という表彰制度の運用には、当然ながら一定のコストがかかります。

 例えば、選考にかかる時間、表彰式の準備・実施にかかる時間などです。表彰対象者に褒賞を用意する場合は、褒賞品にかかる費用や褒賞額も加味しなければいけません。

 しかしながら、適切に運用された社内表彰制度は、当該デメリットを上回るメリットを会社にもたらしてくれます。

 ここで、社内表彰制度の具体的な事例を5つご紹介します。

 成果にかかわらず勤続年数のみを表彰対象とする永年勤続表彰制度は、8割近い企業が導入している最もスタンダートな表彰制度です。

 褒賞の内容としては、金品や記念品の贈呈のほか、特別休暇の付与が一般的です。

 勤続年数に応じた表彰制度には、定年退職者ないし定年退職予定者を対象とした定年退職表彰もあります。慰安旅行のための特別休暇を与え、旅行費用を補助したり、社名入りのギフトを贈呈する事例が挙げられます。

 年度で最も活躍した社員ないし部署を表彰するのがMVPです。社長賞やアワードなど、名称はさまざまです。

 大手インターネットグループでは、毎年、社員間でノミネートを行い、全社員が投票する形式でMVPを決定しています。

 会社の規模が年々拡大していることから、直近ではノミネートメンバーは100名を超え、授賞式までの5日間を前夜祭として企画するなど、一大イベントとなっています。

 入社1年目の社員を対象とする表彰が新人賞です。

 大手人材系サービス会社では、各事業部から1名ずつ選出され、約5,000人の全社員に向けた社内報で紹介されます。選出者には、他の表彰社員と共に、海外研修への参加資格が与えられます。

 失敗を表彰する、というユニークな事例もあります。

 大阪の部品製造会社では、社内で募集した自社ブランドのアイデアが赤字を招いた事例を元に、失敗した社員のチャレンジを讃える「大失敗賞」を導入しました。

 きっかけとなった表彰社員のアイデアで新規事業が成功しているようです。

 ピアボーナス制度とは、仲間(Peer)からの報酬(Bonus)という意味の造語で、社員間で表彰を行う制度です。

 音声サービスを提供するスタートアップ企業では、賞賛される行動を言語化し、浸透させることを目的として、ピアボーナス制度を自社で設計しました。

 ポイントの送付は全社員に公開され、たまったポイントは会社グッズや社員間交流を促す機会に交換できます。最も多くポイントを受け取った社員に対する賞もあります。

 最後に、社内表彰制度を導入するときのステップと留意点をご説明します。

 次のような流れで導入を進めるのが一般的です。

  1. 導入の目的を明確にする
  2. 表彰の種類、選考基準、褒賞の内容を決める
  3. 社内規則に規定し、従業員に周知する
  4. 表彰を実施する
  5. 実施後、フィードバックを行う

 社員のモチベーションや生産性の向上という目的を自社に当てはめ、「どのような姿勢で取り組んでほしいのか」「どのような社員像を会社が求めているのか」を具体化します。

 それによって、実現するために適切な制度や褒賞の内容がおのずと決まってきます。

 表彰の種類、選考基準、選考実施者、選考対象者、褒賞の内容など、制度概要を決定します。ステップ①で決めた目的に繋がる制度かどうか、という観点で考えるのが良いでしょう。

 それぞれを決めるポイントをご説明します。

表彰の種類

 表彰の種類は、目的によって決めます。目的に応じて制度設計が大きく異なるからです。

 例えば、長期間会社に貢献してくれる社員に報いるという目的なら、勤続年数が重要となるため、永年勤続表彰や定年退職表彰のような表彰制度が望ましいでしょう。この場合、褒賞は記念品の授与やや特別休暇の付与が一般的です。

 一方、会社の行動指針に合致する社員の姿勢を評価するという目的なら、数値に表れにくい行動を取り上げて讃えることがポイントになります。そのため、投票制度やピアボーナスのような表彰制度を設け、褒賞はMVP賞やバリュー賞など、内容が一見してわかるようなものとするのがおすすめです。

選考基準

 営業優秀者や勤続年数のような客観的な数値で比較できるものは基準が明確です。

 一方で、指針にあった行動や改善提案を評価する場合には、評価項目を複数設けた上で点数性とするなどの工夫が必要です。

選考実施者

 表彰対象者の選考は、経営陣が中心となって選考を実施することが一般的です。

 定性的な選考を行う場合には、投票制や合議制とする、推薦形式とするなど、選考者の人数を敢えて増やすことで参加意識を高めたり、公平性につながるなどのメリットもあります。

選考対象者

 モチベーションアップという観点からは、対象を正社員に限定するのではなく、契約社員やパートタイマー、インターンなどを含めた全社員を対象とすることが望ましいです。

 一方で、「新人賞」の場合は「(新卒・中途問わず)入社日から1年以内」など対象範囲を明確にしておく必要があります。

褒賞の内容

 表彰制度には社員の承認欲求を満たし、モチベーションを向上させるメリットがありますが、褒賞が魅力的でなければそうした効果を発揮しづらいものです。そういった意味では、一定額以上の金銭が最も一般的です。

 加えて、副賞として、オーダーメイドスーツのチケットなど、業務に活用できるような景品を用意するなども考えられます。

 作成した制度を表彰規程等に明記し、社内周知を行います。

 規程には、社内表彰制度の目的、表彰の種類、基準、対象者、時期などを記載します。テンプレートが多く出回っているので、参考にするのも良いでしょう。

 表彰制度を設けた場合、表彰制度は就業規則の必要記載事項に当たります。

 詳細は別規程ないし内規に委ねることも多いですが、透明性・公平性の観点から、少なくとも上記内容については、書面で社員全員に知らせることができるようにしておきましょう。

 規定した時期に表彰を行います。

 表彰の趣旨を会社全体に伝えるためにも、表彰された社員を讃える意味でも、全社員が参加できるような表彰式を実施したり、それが難しければ社内報でアナウンスするなどして公表するのが良いでしょう。

 社内表彰制度は自由度が高いものであるため、勤続年数表彰や定年退職表彰など客観的なものを除けば、実施した当初から完璧なものができあがることはまずありません。

 実施した表彰制度に対するフィードバックを社員から取得するようにし、改善していくことが必要不可欠です。

 フィードバックの取得方法としては、例えば、表彰内容に対する感想や次回表彰に向けた決意表明をもらう、選考基準の透明性や納得感に関して簡単なアンケートを実施する、などの事例が考えられます。

 社内表彰制度には数多くの種類がありますが、他社の成功事例が必ずしも自社に合う表彰制度であるとは限りません。

 もし導入した制度がうまくいかなかった場合(例えば、「いらない」という社員の声が多く、実施すらままならないなど)には、社内表彰制度を導入した当初の目的に立ち返って見直しを行いましょう。

 その目的を達成するために、表彰制度の種類や褒賞の内容が即しているか、順に見直してみることが必要です。まずはわかりやすいものから実施し、徐々に種類を増やしていく、なども有効でしょう。