目次

  1. 日報アプリの選び方
    1. 導入目的を明確にする
    2. 従業員のITリテラシーに合っているか確認する
    3. 無料トライアルを利用する
    4. 「導入支援サービス」の有無をチェックする
  2. おすすめの日報アプリ5選
    1. 「gamba!」
    2. 「Chatwork」
    3. 「kintone」
    4. 「FieldPlus」
    5. 「日報くん」
  3. 日報アプリ導入後の注意点3つ
    1. SNSと取り違えるセキュリティ懸念
    2. オフィシャルマナーの希薄化
    3. 「負担が増えた」と感じる従業員への対応
  4. 「日報アプリ」という情報資産の有益性

 日報アプリとは、従業員が日々の業務を記録して報告する業務日報を、紙に書くのではなくパソコンのような電子ツールに記録できるようにしたアプリケーション(ソフトウェア)です。

 ただ記録として残し、たとえば「この顧客は誰がいつ、会っていたか」などが後で検索してわかるようになるだけでなく、活用のしかた次第では企業の戦略立案に役立てられるような貴重なデータを提供してくれることもあります。

 日報アプリの具体的なメリットは、次のとおりです。

  • 日報にかかわる時間を節約できる
    日報アプリは、「Excel」や「電子メール」と異なり、日報の作成・閲覧に特化したアプリケーションです。日報にかかわる日々の時間を節約でき、それによって勤務時間の節減(時短)、人件費の削減にもつながります。

  • 検索性に優れていて、情報を活用しやすい
    紙の記録の束だと「◯◯というお客さんはいつ、誰が担当したのか」を人力で見つけ出すのは大変な作業です。一方、日報アプリを利用すれば、顧客名だけでなく、日時、記入した担当者、商品名、不具合の個所など、さまざまな条件で検索でき、それらをスピーディーに業務に活かせます。

  • 社内コミュニケーションが活性化する
    日報アプリは、誰と日報を共有するのか自由に設定が可能で、それによってコミュニケーションの活性化が期待できます。たとえば、他の部署とも情報を共有しあえるような設定なら、情報の風通しが良くなり、社内の一体感はより増すでしょう。従業員の教育や精神衛生のような間接的な効果も見込めます。

 最近は「テレワーク」が浸透したので、管理職が「従業員がテレワークでどんな仕事をしているか」を把握するために日報アプリを導入するケースも生まれています。

 「サラリーマン生活は『報・連・相』(報告、連絡、相談)が大事だ」と言われますが、テレワークによってその重要性がますます増しているのでしょう。

 では、自社、自部門の規模や組織、働き方などの事情に合った最適のツールを選ぶには、どうすればいいでしょうか。まずは、日報アプリの選び方をご紹介します。

 第一のポイントは「導入したい目的は何か、それを明確にする」ことです。目的はおそらく、企業、部署によって千差万別でしょう。社内のコミュニケーションに役立てたいケースもあれば、経営トップやそれに近い人たちが「現場のデータを経営判断の材料として活用したい」と導入を考えているケースもあるかもしれません。

 そうした目的とずれたツールを導入したら「これはうちに向いていない。失敗だった。導入からやり直そう」となって、大きなムダが発生してしまいます。

 目的の明確化は、日報アプリ導入の第一歩です。

 日報を書くのは、現場の従業員です。紙の日報を日報アプリに変更すると問題になるのが、従業員がそれを使いこなせるか、ということです。

 もし、デスクワークではなく工場や工事現場、店舗、倉庫などの現場の仕事についていて、ITツールに慣れていない従業員も日報アプリを使うようなら、できるだけシンプルで、操作がやさしいツールを選ぶ必要があります。

 キーボードや画面タッチが難しければ、入力の方法が「手書き入力」「音声入力」などに対応した日報アプリもあります。

 なお、「できなければ、できるようにすればいい」「これを機会にITリテラシーを高めさせよう。本人にとってもそれは財産になる」と、機械を人間に合わせるのではなく人間を機械に合わせようとする発想はよくありません。

 教育・研修コストがかかるだけでなく、従業員の間に不満を呼ぶ恐れや、「入力が面倒くさい」「時間がない」と日報を白紙に近い状態で提出され、データが思うように収集できなくなる恐れもあります。

 「これもいいが、これもいい」と迷ったら、無料トライアルを活用するのも手です。

 トライアル利用は日報をつける可能性があれば、部署、職種、年齢、勤続年数など、できれば広い範囲の従業員に使ってもらってください。一部の幹部スタッフだけで試して決めてしまうのは禁物です。

 日報アプリを初めて導入する場合は、日報アプリで記録する習慣がつくまで利用できる「導入支援サービス」があるかどうかもチェックしてください。

 導入当初は「なぜ、日報アプリを使うのか」「日報アプリはどれほど重要なのか」を従業員に周知徹底させる必要があります。最初に意義や重要性が浸透していないと、日報が形骸化してしまって記録しない日が生まれたり、記録がスカスカになったりして、つまずいてしまいかねません。

 「導入支援サービス」はできれば無料で、当初は毎日でも来てくれて、来社でも電話でも専任スタッフがわかるまでケアしてくれるようならベストです。

 以上を踏まえて、本記事では、おすすめの日報アプリを5つご紹介します。

 gamba!(ガンバ)は日報に社内SNSの仕組みを取り入れた日報アプリです。

 「いいね」、コメント、スタンプ、足あとなどSNSのような形で日報を共有でき、利用者が心理的負担を感じにくいのが特徴してあげられます。

ツール名 gamba!(ガンバ)
提供会社 gamba
特徴

・目標管理機能で、目標に対する日々の進捗を確認できる
・Googleカレンダーと連携でき、日報にワンクリックで貼り付け可能
・15日間無料トライアル可能

利用時の注意点

・メールのような形式で、Chatworkのようなチャット形式でシンプルさを追求する他のツールと比較すると、操作性がどうしても複雑に感じてしまう
・連携できる外部ツールが少ない

向いている会社 ・毎日の振り返りで仕事の質を向上させたい会社
・Googleカレンダーと日報アプリを連携してスケジュール管理したい会社
・社員に目標を意識した働き方をさせたい会社
料金 導入企業の条件に合わせた料金プランを提案
公式サイトURL https://www.getgamba.com/

 Chatworkは、チャット形式のコミュニケーションツールですが、メールよりも簡潔に情報共有ができるため、日報管理にも適しています。

ツール名 Chatwork
提供会社 Chatwork
特徴

・タスク管理で自分のタスクを把握し、記録し忘れを防止できる
・社外ともグループをつくってやりとりできる
・ビデオ通話、音声通話もでき、外出中でも出張中でもテレワーク環境でも利用しやすい
・無料プランあり

利用時の注意点

・参加人数が多くなるほどメッセージも多く流れるので、自分の業務に無関係なものが増えて重要な情報を見逃したり、検索しにくくなる
・「タスク機能」でグループを適切に分けたり、運用ルールを決めることが必要になる

向いている会社

・作業内容を簡単に、自由に報告したい会社
・日報で1日に複数回、こまめに報告させたい会社
・タスク管理をメインに使いたい会社

料金

・初期費用 0円
・月額料金 500円~/1ユーザー

公式サイトURL https://go.chatwork.com/ja/

 kintoneは、アプリを構築して多様なデータを管理できるツールです。日報以外にも、顧客情報、ToDoリストの整理もでき、業務改善全般に役立ちます。

ツール名 kintone
提供会社 サイボウズ
特徴

・全文検索では、文字情報だけでなく添付ファイルの内容でも検索できる
・集計データをグラフにしたり、一覧表を作成できる
・資料やタスク、進捗状況をチームごと、プロジェクトごとに共有できる。ユーザー以外でも参加できるゲストスペースもある
・30日間無料トライアル可能

利用時の注意点

・業務を効率よく進行させるには、担当者が機能を理解してアプリをしっかりつくりこむ必要がある
・スマホやタブレットでは対応しにくい
・契約は5ユーザーからのみ

向いている会社

・業務日報に限らずオールマイティな機能がほしい会社
・できるだけ低コストで社内システムを構築したい会社
・パソコンに強い従業員がいてカスタマイズができる会社

料金

・初期費用 0円
・月額料金 780円~/1ユーザー

公式サイトURL https://kintone.cybozu.co.jp/

 FieldPlusは報告専用の作業日報アプリです。日報だけでなく位置情報と組み合わせた出退勤報告もできるので、誰がいつ、どこでどんな作業をしたが一目でわかります。

ツール名 FieldPlus
提供会社 エス・ケイ
特徴

・日報にあたる報告シートのテンプレートは、ユーザーグループ単位で自由に作成可能
・日報だけでなく、商談報告やプロジェクトの進捗報告などにも活用可能
・無料トライアル有(詳細は要問合せ)

利用時の注意点

・スマホの操作に慣れていないと、使えるようになるまで時間がかかる
・カスタマイズ費用は初期費用に含まれず、別途必要

向いている会社

・文章を入力するより、選択式で簡単に報告できる作業日報をつくりたい会社
・作業日報だけでなく、ツールに勤怠管理もさせたい会社

料金

・初期費用 15万円
・月額料金
ライセンス利用料 500円/1ユーザー
サーバー利用料 5000円(ディスク容量1GBまで。2GB追加ごとに2000円)

公式サイトURL https://www.fieldplus.net/

 日報くんは、時間管理をメインとした業務日報管理システムです。日報報告に時間管理を組み合わせることで、人ごと、チームごとの稼働集計、プロジェクトや複数プロジェクトにまたがるリソースの集計管理を自動的に行います。

ツール名 日報くん
提供会社 BPS
特徴

・テレワーク中やテレワーク前後の業務効率を比較したり、業務効率改善ポイントを見つけることができる
・案件ごとの稼働を自動的に計算してくれる
・1ヵ月間無料トライアル利用可能

利用時の注意点

・業務時間中ずっと使用する必要がある
・テレワークなどマイクロマネジメントが合わない社風では定着しない可能性がある

向いている会社

・稼働時間の比較から営業戦略を見直したい会社
・部下が何にどのくらいの時間をかけているかを把握したい会社

料金 月額料金 2500円~
公式サイトURL https://nippoukun.bpsinc.jp/

 ※編集部追記。BPSは「業務中に記載して『保存』を押せばタブから離れることができます。また、記入欄がかなり自由度が高くなっています」とコメントしています。

 日報アプリは、日々の日報作成・閲覧・管理を簡単に行えるツールであり、それにかかわるコストを大幅に削減できます。

 しかし、単に導入するだけで、劇的に状況が改善されるかというと一概には言えません。特に以下の点に気をつけないと、期待した効果が得られない可能性があります。

 日報アプリは「マルチデバイス対応」で、回線でクラウドにアクセスができれば自席のパソコンでも、出張中やテレワーク中のスマホやタブレットでもログインできます。

 また、使ってみると、LINEなど一般的なSNSと画面や操作性がよく似ていることがわかります。

 使いやすさを追求した結果ですが、日報を入力する従業員がふだんからSNSをよく使っていたら、会社の日報アプリと自分がプライベートで使うSNSをつい混同してしまう恐れがあります。

 最悪の場合、ヒューマンエラーで日報アプリに書くことを投稿先を間違えてSNSのほうに投稿してしまい、社内の報告、機密情報が全世界に公開される事態もありえます。

 情報漏えいによる信用の失墜は、会社に大きなダメージを与えかねません。

 あらかじめ申請を出して許可された端末以外は、日報アプリへのログインができないようにするなど、ツールのセキュリティの機能を活用して対策することが重要です。

 日報アプリの画面や操作性はSNSと似ているので、従業員がSNSを使う「ノリ」で日報アプリを使ってしまう恐れがあります。

 性格か、勘違いか、それとも意図的なものかはわかりませんが、SNSならではの絵文字やスラングや言葉づかいが日報アプリで横行するケースもあるといいます。

 これは公私の区別があいまいになる「オフィシャルマナーの希薄化」といわれるもので、見つけたらそのたびに注意しないと、いつの間にか蔓延してしまいます。

 ビジネスマナーから外れたやり取りに陥らないように、必要なら「日報アプリの利用ルール」を明文化し、周知徹底させると良いでしょう。

 日報アプリを導入すると「負担が増えた」と感じる従業員が出るものです。アプリを立ち上げる手順が複雑だったり、投稿の際にややこしい手続きを必要とするなど、手間が多くなるのが原因です。

 導入の際に実際に手間が多くないかチェックするだけでなく、利用開始後も現場の従業員の意見を聞いて、使いやすさを改善するようにしてください。

 ベンダーが「使いやすい」と説明していても、従業員本人にとって実際に使いやすいかどうかは別物です。

 日報アプリによって蓄積された報告内容やそれに付随するファイルは、会社にとって貴重な「情報資産」になります。

 そこから業務のマニュアル化の資料にする、マーケティングの素材として利用する、新入社員への研修資料にするなど、さまざまな展開も期待できます。

 中期経営計画など企業戦略の立案に際しても、現場に立脚したそんな情報資産から導き出される統計資料が存在すれば、有益です。