売掛金とは 回収が遅れたときの解決策をわかりやすく原因別に解説
売掛金とは、売上に係る代金について、取引先の信用力によって一定の期間後の支払いを認めている債権です。企業においてお金は生命線であり、売掛金の回収管理は重要な業務です。売掛金の回収が遅れたり最悪の場合回収不能になったりした場合には、資金繰りなどに大きな悪影響をもたらします。財務会計分野の実務経験が豊富な中小企業診断士が売掛金の回収管理について解説します。
売掛金とは、売上に係る代金について、取引先の信用力によって一定の期間後の支払いを認めている債権です。企業においてお金は生命線であり、売掛金の回収管理は重要な業務です。売掛金の回収が遅れたり最悪の場合回収不能になったりした場合には、資金繰りなどに大きな悪影響をもたらします。財務会計分野の実務経験が豊富な中小企業診断士が売掛金の回収管理について解説します。
目次
取引先に物品の販売やサービスの提供を行ったときに売上が発生します。
売掛金とは、売上に係る代金について、取引先の信用力によって一定の期間後の支払いを認めている債権です。会計上は、売上時期から代金が入金するまでの期間が「売掛金」として記録されます。
売掛金が約束した期間までに支払われない場合や回収自体が困難になった場合には、次のようなリスクがあります。
売掛金は取引によって発生した債権(相手側に支払いを求める権利)ですが、まだお金として回収されていません。
一般に、会社の資金計画は、売掛金による期日ごとの入金予定を前提としています。予定していた売掛金が回収されないと資金の不足が生じ、銀行からの借入など資金調達の代替手段を検討する必要があります。
売掛金の回収遅れだけであれば資金繰りの問題にとどまりますが、回収不能になった場合にはより深刻な事態となります。
売掛金の前提となる売上には、仕入れ代金、人件費、販管費用などが会社からキャッシュアウトしたお金(コストや費用)が発生しています。売掛金が回収不能になると、コストや費用が回収できない状態となります。
会計上は、回収不能が確定したときに売掛金の貸倒損失を計上することとなり、その時点での利益が圧迫されます。
取引先の単純な事務処理ミスなどによる支払い遅れの場合、照会や督促などにより売掛金の回収は比較的、容易です。
しかし自社での管理不足により照会や督促が長期に遅れた場合、お客様の支払いも決算を跨いでいるなどの理由により困難になることもあります。
先方の理由ではありますが、自社の管理不足が先方に迷惑をかける面もあるため、関係性が損なわれる可能性があります。
また、先方の経営状態が悪く支払いが困難な状況にある場合、取引の停止や中止をとるのが一般的です。しかし、長年取引があり取引の停止・中止に簡単には踏み切れない実情があることもよく見受けられます。
売掛金の回収遅れが遅れた場合の回収ステップは次の通りです。
入金の多い月末を過ぎたら月次決算に合わせて売掛金の消込を行い、具体的にどの取引先の何の入金が遅れているのかを特定します。
特に回収遅れが継続しているものについては、消滅時効を迎えていないかどうかも確認しましょう。
消滅時効とは、一定期間請求をせずに放置しておくと、請求する権利が消滅してしまうことをいいます。
令和2年4月に施行された改正民法で、売掛金管理に影響のある「短期消滅時効」が2年から原則として5年に延長されていますが、時効を迎えると売掛金の回収が事実上困難になります。
回収遅れがあり、かつ消滅時効を迎えていないなど回収できる可能性がある場合、その原因ごとに回収策を講じます。
未回収の多くは、取引先または自社の事務処理ミスや遅れが原因です。
取引先の原因としては、請求書の紛失、社内での回送遅れなどがあります。自社の原因としては、請求書発行漏れ・遅れ、金額違いなど請求書記載内容のミスなどがあります。
【回収策】 |
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事務処理上のミスに過ぎませんので、売掛金の回収自体にほとんどリスクはありません。 |
売上は、取引先に対して物品の売買やサービスの提供を行ったときに発生します。
いったん取引が完了し請求書を送付した後に、その取引自体にクレームがつく場合があります。例えば不良品などの品質不足、欠品などの数量不足などが発生した場合に、取引先は支払いを保留することもあります。
【回収策】 |
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信頼関係のある取引先であれば、商品の交換や値引きなど相互が納得する条件で取引自体をやり直せば売掛金の回収は図れます。 しかし、取引自体のキャンセルを先方が望むなど、こじれることもよくあります。 取引先との関係性や取引金額あるいは法的手続きなどにより発生するコストと勘案し判断する必要があります。判断に迷った場合は、回収可能性や訴訟費用などを弁護士に相談するといいでしょう。 |
新型コロナウイルスの影響により、飲食業や宿泊業などは売上の急激な減少など業績の悪化に苦しんでいます。
事業を進めていくと内外の経営環境の変化により業績が悪化し資金不足に陥ることも少なくありません。取引先に悪意のある場合は少なく、未回収分の督促や取引の継続など柔軟に対応する必要があります。
【回収策】 |
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取引先の業績は対応に悩まされることが多いです。 取引を継続する場合、①回収遅れの売掛金は分割払いに契約変更②担保設定③現金払いなどの条件を付けることが一般的です。 |
取り込み詐欺は、少額の取引で信用を得た後、掛け払いで商品を大量注文し、商品を購入したにも関わらず代金を支払わないで商品を騙し取る詐欺です。
また、業績悪化している取引先が手の打ちようがなく破産・倒産してしまうこともあります。
このような場合には売掛金の回収はほとんど見込めず、回収不能の売掛金として法的処理や会計上の処理などが必要になります。
【回収策】 |
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売掛金の回収が難しいと判断される場合には、早めに法的な手続きに移ることが必要です。
他にも差し押さえ、支払い督促など専門的な手続きがありますので、必要に応じ弁護士など専門家に相談することをおすすめします。 |
最後に、結果にあわせて会計処理を行います。
たとえば、30,000円の売掛金があり、それが無事に回収ができた場合は、次のように仕訳します。
借方 | 貸方 | ||
普通預金 | 30,000 | 売掛金 | 30,000 |
一方、回収ができなかった場合は、貸倒引当金、もしくは貸倒損失で処理を行います。
貸倒引当金とは、将来貸倒損失が発生するリスクに備え、売掛金などの債権を所定の計算方法で計上した引当金です。貸倒損失とは、取引先の倒産などの理由で、売掛金など債権を回収できなくなることをいいます。
貸倒引当金が設定されていた場合 | |||
---|---|---|---|
借方 | 貸方 | ||
貸倒引当金 | 30,000 | 売掛金 | 30,000 |
貸倒引当金が設定されていなかった場合 | |||
---|---|---|---|
借方 | 貸方 | ||
貸倒損失 | 30,000 | 売掛金 | 30,000 |
税務上損金として計上できる金額は分類や計算方法など細分化されていますので、税理士などに相談することをおすすめします。
売掛金の回収遅れの原因は取引先にあるとは限りません。筆者の経験でも、回収側の企業が売掛金管理の仕組みを構築していないことが多いと感じています。
回収遅れや回収不能を防止する売掛金管理のポイントは次の通りです。
与信管理とは、新たに取引を開始する場合に、取引先の支払いに対する信頼度やリスクなどの評価を行うことをいいます。売掛金の回収漏れを防ぐために売掛金管理の最初のステップとして行われます。
具体的には、取引先の財務状況や支払い能力を調査・分析して、取引限度額や支払い条件、支払い方法などを設定します。
売上(取引)が発生する都度早期に適切な内容で請求書を出すことは大切です。
請求書発行システムで請求書発行が売上と連動するなどの自動化が行われていれば、請求漏れやミスなどの問題は発生しません。
しかし、エクセルなどによる請求書の発行では、ミスや漏れの発生リスクは高くなります。
請求には、締め請求、都度請求、定時定額請求、分割請求など様々な発行方法があります。そのため、請求管理は、システム化による効率化と正確性の担保が求められます。
決算を税理士に委託する場合など、月次決算が実現できていない企業は少なくありません。
売掛金の回収により資金不安のリスクを解消することは事業を進めていく中で重要な業務の一つです。そのためには、売掛金の帳簿をきちんとつけて回収の有無を確認する仕組みが必要です。
また、売掛金台帳が整備されると支払予定日前に顧客に事前確認ができるなどより売掛金の早期回収に役立ちます。
未回収の売掛金がいつ支払われるのかは今後の資金繰りに大きく影響します。
前述しましたが、未回収売掛金の発生には色々な原因があり、取引先との交渉、法的手段の検討など複雑な対応が必要となります。
そのため、それぞれの未回収売掛金がどういう状況にあるかを月1回まとめるなど、管理を強化する必要があります。
全件を管理対象とするのが理想ですが、管理工数との兼ね合いで金額の大きいもの、遅延月数の長いものなど基準を決めて管理することも一策です。
この記事で紹介した売掛金管理のポイントは次の通りです。
経営環境による業績悪化など、取引先の原因による売掛金の回収遅れは、やむを得ない側面があります。
しかし、請求書の発行体制や未回収売掛金の管理体制の強化など自社の管理体制を構築することで、未回収の防止や早期化が図れることになります。
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