目次

  1. 忙しすぎる父、つらかった月曜日
  2. 「家業を継ぎたい」きっかけは就職先の社長
  3. 入社翌日から3年間、海外で武者修行
  4. 1枚ずつ異なるデザイン 飽きられないのが強み
  5. 「親子だと感じさせない」を徹底 家でも敬語?
  6. 栄レースが世界シェア7割を取れた理由
  7. 部品生産も自社で 技術をつなぐ細い道筋
  8. 「リバーレースを身近に」自社ブランドが始動

 リバーレースは古くからヨーロッパで愛されてきた最高級レースです。英国のジョン・リバー氏が1813年に発明した「リバーレース機」で生産します。機械の操作やメンテナンスに手間がかかる上、大量生産しづらいことから、「ハンドメイドに近い」とも言われます。

 栄レースは1958年、英国から2台のリバーレース機を購入した現会長の土井一郎さんが、兵庫県宝塚市で創業しました。デザイナーが描いたデザインを元に、中国の青島(チンタオ)、タイのチェンマイとメーソットの計3カ所の工場で、87台の機械がリバーレースを織り上げます。

 主な取引先は、価格帯の高い下着メーカーや有名ブランドで、高級インナーやアウターを彩るのに重宝されています。年商は約40億円、グループ従業員数は約700人。創業から64年で、欧州生まれのリバーレースで世界シェアの約7割を占めるまでに成長しました。

栄レースで製造されるリバーレース。緻密な柄が特徴で、古くからヨーロッパで愛されてきた(同社提供)

 澤村佳樹さんは、栄レースに入って6年目。佳樹さんにとって、土井会長は母方の祖父、澤村社長は父にあたります。しかし、子どものころは家業にあまり良いイメージを持っていませんでした。

 「私が3歳だった1992年に、中国・青島の工場が操業しました。海外との行き来で父の忙しさに拍車がかかり、月の半分は留守。たまに家にいても、顔を合わせるのは朝くらいでした」

 小学校に上がり、つらかったのは月曜日でした。家族と週末を楽しんだクラスメイトの話題に入れなかったからです。

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