119年前の1903年6月16日、アメリカ・デトロイトで「フォード・モーター」が設立されました。 

創業者のヘンリー・フォードが2度の自動車会社の失敗を経て、2万8000ドルの資金を集めて立ち上げました。

最初にフォードが製造した車は、1903年7月15日に販売されました。

  

フォードを一躍有名にしたのが、1908年に発売された「T型フォード」です。

ベルトコンベヤーによる流れ作業で量産し、劇的な値下げを実現。

世界的な大ヒットとなり、のちにほかの産業の生産モデルにもなりました。 

1924年、東京市電気局が大量発注した東京市営バス。T型フォードのトラックを改造した布幌付の車体で、円太郎馬車をもじって「円太郎バス」と呼ばれたという=1924年12月、朝日新聞社

その後、フォードは、ゼネラル・モーターズ(GM)、クライスラーとともに、アメリカの自動車大手3社を意味する「ビッグスリー」と呼ばれるようになりました。 

フォードが創業100周年を迎えた2003年の朝日新聞記事では、「自動車『T型フォード』復活/創業100周年記念し、6台復元」の見出しとともに、こう伝えています。 

米自動車大手フォード・モーターは、20世紀の大量生産時代を先導した「T型フォード」を6台復元し、そのうちの1台を23日、ニューヨークで国内外のメディアに公開した。創業以来、今年で100周年を迎えるのを記念したもので、伝統と名声の再確認を業績回復につなぐ狙いもある。  

2003年5月25日付朝日新聞朝刊(東京本社版)

2003年5月25日付朝日新聞朝刊(東京本社版)

フォードは日本の自動車メーカーとも深いつながりがありました。

1979年には、当時業績が悪化していた東洋工業(現マツダ)に25%を出資。

その後、1996年に出資比率を33.4%に引き上げたものの、2008年のリーマン・ショックでフォードの経営が悪化。

マツダの株を徐々に売却し、2015年には全株式を手放しました。 

東洋工業(現マツダ)のフォードとの資本提携について伝える1979年(昭和54年)7月11日付朝日新聞朝刊(東京本社版)

アメリカの自動車産業をめぐっては、2021年1月にバイデン氏が大統領に就任し、温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」に復帰する大統領令に署名。

気候対策の柱として、電気自動車(EV)の普及を重視しています。

カリフォルニア州は、2035年までにガソリン車の新車販売を禁じる方針も打ち出しています。 

 

フォードは、2019年のロサンゼルス自動車ショーで電動SUV「マスタング・マッハE」を披露して注目を集めるなど、「EVシフト」を進めています。

馬車からT型フォードに、そしてEVや自動運転など車は進化を続けています。

どんな移動手段が主流になるのか、これからも目が離せません。 

フォード・モーターの「マスタング・マッハE」=2019年11月20日、アメリカ・ロサンゼルス、朝日新聞社

(朝日新聞社の経済メディア「bizble」で2021年6月16日に公開した記事を転載しました)