35年前の1987年5月13日、JR東日本(東日本旅客鉄道)が、首都圏を走る山手線や中央線などの電車の愛称として親しまれていた「国電」に代わる新名称を「E電(いいでん)」とすると発表しました。

朝日新聞東京本社発行の1987年5月14日付朝刊

当時の朝日新聞では、「通勤は『E電』に乗って 国電新名称『響きがいい』」の見出しで、新名称の発表を伝えています。

「E電」に決まった経緯について記事では、

「公募に応じ、全国から寄せられたはがき約6万通、2513種類のうち、上位の名称を中心に審査の結果、『響きがよく、親しみやすい』などの理由で、390票を集めた20位の『E電』が採用された」

朝日新聞東京本社発行の1987年5月14日付朝刊

と説明しています。

 

また、同じ日の朝日新聞朝刊コラム「天声人語」でも「E電」について触れています。

「新会社になったのに国鉄時代の国電のままではまずかろう、と利用者から新名称を公募していた」

「Eがイースト、エネルギー、エンジョイ、エブリデーなどを象徴するうえ、何よりも『E―いい―良い』と転化させる言葉あそびのナウい感覚を買ったものらしい」

パンダをあしらった「E電」のヘッドマークを山手線の電車に取り付けるJR東日本の社員=東京都豊島区池袋2丁目、1987年5月13日、朝日新聞社

発表から35年が経ちましたが、残念ながら「E電」は浸透しませんでした。

山手線や中央線などのJR東日本が運営する首都圏の電車は現在、「JR」という呼称が定着しています。

山手線のE231系(左)と京浜東北線の209系=JR東京駅、2005年7月16日、朝日新聞社

死語となってしまった「E電」。

新名称浸透のむずかしさを象徴しているように思えます。

 

(朝日新聞社の経済メディア「bizble」で2021年5月13日に公開した記事を転載しました)