68年前の1954年4月26日、黒澤明監督の映画「七人の侍」が公開されました。 

野武士から村を守るため、農民たちが7人の侍を雇って闘うアクション時代劇です。 

公開翌日の朝日新聞夕刊には「西部劇しのぐ迫力」の見出しで評論が載っています。 

1954年4月27日付朝日新聞夕刊(東京本社版)に載った「七人の侍」の評論

その3年前の1951年、黒沢監督の「羅生門」がイタリアのベネチア国際映画祭でグランプリを受賞しました。 

日本映画が世界の舞台で評価される先駆けとなり、終戦後の日本人に自信を与えたと言われます。 

 

「七人の侍」は黒澤監督の代表作の一つとして有名ですが、公開直後の主な賞は1954年のヴェネツィア国際映画祭での銀獅子賞など一部にとどまりました。 

その評価はむしろ後年高まったようです。 

俳優の三船敏郎さん(左)と映画監督の黒沢明さん=1975年、朝日新聞社

1961年4月の朝日新聞には、米映画俳優ユル・ブリナーが主演する「七人の侍」のリメイク作品「荒野の七人」が近日公開されるとの記事が載りました。 

それによると、「アメリカで『七人の侍』を見たブリナーは、志村喬の演じた役をぜひやりたいと東宝にその“再映画化”を申し入れてきたほどのほれこみよう」だったそうです。 

国内のみならず、海外の多くの映画監督や俳優が「七人の侍」に影響を受けたと公言しています。 

 

「七人の侍」はその後、比喩表現にもしばしば使われるようになりました。 

1984年12月の朝日新聞には「早くも“七人の侍”始動」の見出しで、消費税導入に反対する小売など7団体の記事が載っています。 

最近では、トヨタが副社長ポストを廃止すると報じる2020年3月の記事で「この2年あまりは、社長と副社長6人の『七人の侍』が会社を率いる体制をとってきた」とあります。 

4Kデジタルリマスター版の試写会に出席した野上照代さんと仲代達矢さん=2016年、朝日新聞社

近年も作品への評価や注目度は高いままです。 

2016年には4Kデジタルリマスター版が完成して上映されたほか、2018年には英BBCの「最高の外国語映画100選」で1位に選ばれました。 

映画界の「古典」としての地位が揺らぐことはなさそうです。 

 

(朝日新聞社の経済メディア「bizble」で2021年4月26日に公開した記事を転載しました)