得点したり勝利を決めたりした時、選手がこぶしを高々と突き上げる「ガッツポーズ」。 

その起源は諸説ありますが、広く知られているのは元プロボクサーのガッツ石松さんです。 

 

48年前の1974年4月11日、東京・日大講堂でボクシングのWBC世界ライト級タイトルマッチがありました。 

ガッツ石松さんは挑戦者。

圧倒的に不利とされた前評判を覆し、メキシコ人王者にKO勝ち。世界チャンピオンになりました。 

 

《石松、ガッツで王座奪う》 

翌12日の朝日新聞朝刊は、スポーツ面で新チャンピオンの誕生を大きく伝えました。 

ガッツ石松さんの勝利を伝える1974年4月12日の朝日新聞朝刊(東京本社版)

喜びを爆発させたその姿を、スポーツ新聞が「ガッツポーズ」と表現。

このことが、両手を大きく掲げて勝利を誇る「ガッツポーズ」の由来になったと言われています。 

 

ガッツ石松さん本人はのちに、「やったぞ、という気持ちで無意識のうちに出たポーズ。大逆転だけに、普通の勝利よりも喜びは大きかった」と、当時を振り返っています。 

ガッツ石松さん=2013年12月、朝日新聞社

ちなみに、「ガッツポーズ」という言葉は和製英語。

「gut」は「消化器官、はらわた」のほかに「胆力、根性、度胸」などの意味があり、「pose」は「姿勢、気構え」です。 

 

その語源をめぐっては、ガッツ石松さんが世界タイトル戦に勝つ前に、あるスポーツですでに使われていたという説もあります。 

それは、ボウリング。 

1960年代、アメリカ軍の基地内にあったボウリング場で、ストライクの時に「ナイスガッツ」と声をかけ合っていたのを日本人が聞いて、喜ぶしぐさを「ガッツポーズ」と言い始めた。

あるいは、1970年代初期にボウリングの専門雑誌が「ガッツポーズ」という言葉を使い始めた――。 

 

ただ、ガッツ石松さんが世界タイトルを奪取した4月11日が、のちに「ガッツポーズの日」と言われるようになりました。

勝利の熱狂とともに、「ガッツポーズ」という言葉が口づてで広まり、その語源として広く浸透したのかもしれません。 

ガッツ石松さん=2009年2月、朝日新聞社

ガッツ石松さんは引退後、俳優やタレントとして幅広く活躍。

「ガッツポーズ」という言葉も、スポーツだけでなく喜んだり勝利を誇ったりするさまざまな場面で使われるようになり、いまでは日本語の国語辞典にも載っています。 

 

(朝日新聞社の経済メディア「bizble」で2021年4月11日に公開した記事を転載しました)