【9月27日は何の日】33年前、ソニーがコロンビア・ピクチャーズ買収を発表
「10年前にこんなことが…」「あのサービスは20年前から?」。ビジネスシーンの会話の“タネ”になるような、過去に社会を賑わせた話題を不定期で紹介します。
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33年前の1989年9月27日、ソニーがアメリカの大手映画会社コロンビア・ピクチャーズ社を買収することで基本合意に達した、と発表しました。
翌日付の朝日新聞朝刊(東京本社版)によると、買収金額は1株あたり27ドル、総額34億ドル(当時の為替レートで約4800億円)。
日本企業によるアメリカでの企業買収としては史上最高額(当時)となりました。
コロンビア社は「アラビアのロレンス」「未知との遭遇」「ランボー」など多くのヒット作を含む2700本の映画のほか、テレビ番組も2万3000本以上所有していました。
上記の記事では、「ソニーは、こうした豊富なフィルム・ライブラリーや今後製作される映画の放映権、ビデオ化権などを手に入れることで、8ミリビデオをはじめとした映像機器普及というハード戦略を進める上で欠かせない、ソフト資産獲得の実現に一歩近づいた、といえる」と報じています。
映像ソフト資産がなぜそんなに重要だったのでしょうか。
記事内では、1970~80年代に家庭用ビデオレコーダーの規格を争った「第1次ビデオ戦争」に触れています。
ソニー率いるベータ陣営が、日本ビクター(現JVCケンウッド)や松下電器産業(現パナソニック)などでつくるVHS陣営に敗れた原因を「貸しビデオ店の普及に伴い、ベータ方式のビデオソフトの少なさが、シェアの低下へ、それがまたソフト減少につながるという悪循環におちいった」と説明。
ビデオカメラでVHS方式と8ミリ方式のシェア争いが始まる中、ソニーにとってソフト資産の獲得が急務だったと解説しています。
一方、アメリカ国内では反発が広がりました。
当時、日本はバブル真っ盛り。
日本車の輸出攻勢で日米貿易摩擦が過熱し、アメリカは日本に対し大きな警戒感を抱いていた頃です。
1989年9月30日付朝日新聞朝刊(東京本社版)では、買収合意の発表の翌日、アメリカ・ロサンゼルスのラジオ局が「日本人は米国を乗っ取るのか」というタイトルでリスナーの声を特集したことや、有力紙が相次いで大きなニュースとして扱ったことを伝えています。
ソニー創業者の1人で、当時会長だった盛田昭夫氏はこうした「日本たたき」に反論します。
1989年10月12日付朝日新聞朝刊(東京本社版)によると、前日にあったシンポジウムで、盛田氏は「米国の魂を買ったと非難するならば、売った方にも問題がある」と発言。
これに対し、同席していたアメリカのアマコスト駐日大使が「ソニーのコロンビア社買収は、米国民にとって(刺激的な)問題だったことを意識しなければならない」と応じるなど、ピリピリしたムードが伝わってきます。
半月余り後の10月31日には、三菱地所がニューヨークにあるロックフェラーセンターの管理会社買収を発表し、アメリカの反発はいよいよ高まりました。
しかし、後にハリウッド経営の難しさが浮き彫りになります。
1993年ごろからヒット作が出ずに苦戦し、大物経営陣も相次いで退任。
1994年11月18日付朝日新聞朝刊(東京本社版)によると、1994年7~9月期の四半期の連結決算で、コロンビア・ピクチャーズに関して約3150億円の損失を計上しました。
収益見通しが厳しくなり、のれん代(買収先企業の純資産額と、買収額の差額)を一括償却したことが響きました。
コロンビア社買収は失敗と酷評されることもありました。
しかし、この買収を機に参入した映画事業は、後の基幹事業の1つに成長。
2021年4月29日付朝日新聞朝刊(東京本社版)によると、ソニーグループが2021年4月に発表した2021年3月期決算は、純利益が前年の約2倍の1兆1717億円に達し、1946年の創業以来初の1兆円超えを記録しました。
コロナ下での巣ごもり需要で、ゲームや音楽配信、テレビ販売などが好調だったほか、子会社が制作や配給に関わった映画「鬼滅の刃」は日本の映画史上歴代1位の興行収入を記録しました。
1995年からソニー社長を務めた出井伸之氏(2022年6月に死去)は、2019年3月10日付朝日新聞朝刊(東京本社版)で、盛田昭夫氏らによるコロンビア社買収を「電機産業だけでは将来だめになると考えた」「先見の明があった」と評価しています。
(朝日新聞社の経済メディア「bizble」で2021年9月27日に公開した記事を一部修正して転載しました)
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