繊維業界が抱える廃棄問題 強みを生かした解決支援サービスができるまで
1889年(明治22年)創業の老舗繊維機械メーカーが広島県福山市にあります。コロナ禍で対面営業ができないなか、技術や経験、提案力をパッケージにして、端材の廃棄問題を解決する「リサイクルの内製支援サービス」を始めました。情報の届け方の工夫で、域外の大手企業からのテスト受注にもつながっています。そんな新規事業の経緯を、公共の産業支援機関である福山ビジネスサポートセンター「Fuku-Biz」(フクビズ)が紹介します。
1889年(明治22年)創業の老舗繊維機械メーカーが広島県福山市にあります。コロナ禍で対面営業ができないなか、技術や経験、提案力をパッケージにして、端材の廃棄問題を解決する「リサイクルの内製支援サービス」を始めました。情報の届け方の工夫で、域外の大手企業からのテスト受注にもつながっています。そんな新規事業の経緯を、公共の産業支援機関である福山ビジネスサポートセンター「Fuku-Biz」(フクビズ)が紹介します。
「地域内外の知名度が低いうえ、コロナ禍で思うような営業ができない。認知度を高めるため、ホームページを社内で更新できるようにしたいが、どのようにしたらできるか。また、何か活用できる補助金はないだろうか」
老舗繊維機械メーカーであるサトウシステムの5代目にあたる佐藤郁徳社長がフクビズを訪れたのは、2021年9月末のことでした。サトウシステムは創業130年を超える老舗の繊維機械メーカーで、繊維機械の製造・販売に加え、中古機器の販売やメンテナンスも手がけています。
同業他社は多くはないが規模が大きく、サトウシステムは中小企業をターゲットにしているものの、地元でもほとんど知られていないとのことでした。
面談の冒頭、自社でホームページを更新できるようにするためのやり方や道筋、活用できそうな助成制度を伝えました。
しかし、本質的な課題はホームページを社内で更新できるようにすることではなく、セールスポイントをはっきりさせ、ターゲットに知ってもらうことだと考えました。
そこで、これまでの受注実績や最近の問い合わせなどを聞きました。すると、遠方の会社からホームページ経由で繊維のリサイクルに関する問い合わせが断続的に入ってきていることがわかりました。さらに話を聞くと、次のような強みが見えてきました。
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まず、他社の機械は繊維をほぐすために同じ工程を複数回ふまないといけないところ、サトウシステムの機械なら一回で済むように企業がやりたいことから逆算して最低限の工程で済むように製造できる知見や技術も持ち合わせています。
ほかにも、繊維をほぐす開繊機(かいせんき)を使って端材を再び繊維の状態に戻せるだけでなく、リサイクルした素材による商品開発まで提案できるといいます。
繊維業界における最大の課題の一つは、繊維の廃棄やリサイクル問題です。繊維業界では要らなくなった衣類、フェルトのカットした端材の廃棄費用の負担が増しています。
端材のリサイクルは、廃棄物の発生を大幅に削減するというSDGsの目標12「つくる責任、つかう責任」に合致します。
SDGsの流れがますます加速しているなかで、単に機械を売るのではなく、これまで培ってきた技術や経験、提案力をパッケージにして、顧客が実現したいことからみたサービスとして展開してはどうかと考えました。そこで、佐藤社長に「自社の魅力をすべて凝縮した『繊維リサイクルの内製支援サービス』として打ち出してみませんか」と提案しました。
サービス項目 | 内容 |
---|---|
サンプルテスト | サトウシステムで開繊テストを実施 |
リサイクル用機械の選定 | 要望に適した機械を選定・カスタマイズ |
商品開発の提案 | 繊維状に戻した端材の活用を提案 |
できるだけお金と時間をかけずにチャレンジしてみることをビズモデルでは大切にしています。今回のターゲットは繊維の端材活用や廃棄問題に悩む企業です。
そこで、自社のホームページにコンテンツを追加したり、チラシなどの紙媒体を整備したりすることに加え、「SDGsの取り組みを加速させるための繊維リサイクルの支援協力事業」とうたったニュースリリースを作成。
ニュースリリースでは「使用する繊維素材や用途に最適な開繊機を提案・カスタマイズし納品します。2021年度内の開繊テストについては無料で対応します」とアピールし、地元メディアだけではなく、繊維関連や工業系の業界紙・専門媒体に情報提供していきました。
すると、日刊工業新聞に掲載されたことをきっかけに、地元経済誌や日経産業新聞、日本経済新聞など連続的に取り上げられ、サトウシステムに問い合わせが殺到しました。その結果、これまで取り引きのなかった地域内外の大手企業などから多くの開繊テストを受注することができました。現在、納品に向けて進展中です。
すべての企業にセールスポイントはあります。ただ、自分たちでは見えづらくなっています。多くの事業者の方に会うたびに、このことを強く感じます。
サトウシステムの新規事業は、繊維業界の重要課題である廃棄問題の解決やSDGsにも貢献し、自社の売り上げにつなげていく取り組みです。繊維リサイクルの内製支援サービスを足がかりに佐藤社長の挑戦はこれからも続きます。
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