法改正で18歳でもクレカを作れる 毎月1万円で「Suicaトレーニング」
かつて“キャッシュレス後進国”と言われた日本。近年はクレジットカードや電子マネーの利用が進み、「どのカードがお得?」「ポイント還元率は?」といった会話も日常の風景になりました。業界を30年以上取材してきた岩田昭男さんが、“キャッシュレス狂騒曲”を冷静に見つめ、利点や問題点を分析します。
かつて“キャッシュレス後進国”と言われた日本。近年はクレジットカードや電子マネーの利用が進み、「どのカードがお得?」「ポイント還元率は?」といった会話も日常の風景になりました。業界を30年以上取材してきた岩田昭男さんが、“キャッシュレス狂騒曲”を冷静に見つめ、利点や問題点を分析します。
民法の改正で、2022年4月から成人年齢が18歳に引き下げられます。
18歳以上なら、親権者の同意がなくてもクレジットカードを持てるようになります。
この大きな変化について、Suicaを例に考えてみます。
これまで通学でSuicaを使ってきた高校3年生が、大学1年生になったらクレジットカードを持てるわけです。
例えばJR東日本のビューカードをSuicaと連携させれば、暮らしは便利になるでしょう。
同時に、自分でチャージ(入金)して自分でお金を管理する生活が始まります。
無計画では大変なやけどを負いかねないので注意して下さい。
多くの大学生は、小中高を通じて金銭やクレジットカードに関する教育をきちんと受けてきませんでした。
何をどうコントロールすればいいか、分かっていない人も少なくありません。
そこで提案するのが「電子マネー・トレーニング」です。
まず、Suicaユーザーの必須アイテムであるクレジットカード選びから始めます。
Suicaにお金を入金することをチャージと呼びます。
現金でもチャージできますが、クレジットカードを使えば駅のATMやコンビニのレジで簡単にチャージできる上、ポイントも貯まります。
ここでお勧めしたいクレジットカードは、JR東日本系のビューカードです。
Suicaへのチャージでは、通常の3倍となる1.5%のポイントがつきます。
電車やバスの利用はもちろん、普段の買い物や食事の支払いをSuicaで済ますことで、いつでも実質1.5%還元を享受できるのです。
さらに、スマホにSuicaを入れて使う「モバイルSuica」で定期券・グリーン券を購入する場合や、えきねっとでのJR切符購入(予約時決済)の場合、ビューカード利用で3%と驚異的な高還元率になります。
ビューカードで貯まるポイントには、様々な使い道があります。
最も分かりやすいのは「1ポイント→1円」としてSuicaにチャージする方法です。
旅好きの人なら、新幹線eチケットサービスで、普通車指定席をグリーン車やグランクラスにアップグレードし、優雅な旅を楽しむこともできます。
このように、Suicaにビューカードを結びつけるとお金の供給がスムーズになり、ポイントも貯まります。
ただ、まずは電子マネーの使い方をよく知る必要があります。
一般的に18歳になったばかりの学生は、アルバイト代や親の仕送りなど収入が限られます。
野放図に使っていては、すぐにお金はなくなってしまいます。
Suicaとビューカードをどう使いこなすか、考えるべきでしょう。
そこで提案したいのが、毎月1万円でSuica生活をするトレーニングです。
Suicaは基本的に前払い方式のプリペイドカードなので、先にお金をチャージする必要があります。
毎月の利用金額を決めておくことが大切です。
チャージ方法も知っておきましょう。
現在、ほとんどのクレジットカードからチャージできますが、ポイントが多くつくのはビューカードなのです。
また、Suicaにチャージできる金額は2万円が上限です。
もともと乗車券から始まったこともあり、少額利用を目的としたツールと言えます。
Suicaに1万円入れて1カ月暮らすトレーニングは、Suicaの1万円で生活の全てをまかなうわけではありません。
1万円を使ってSuicaに慣れ親しむこと、長期にわたってSuicaを使い続ける癖をつけることが目的です。
ルールは2つだけです。
1つは「少額でもSuicaを毎日使い続けること」。
1万円を30日で割ると、1日330円ほどです。
大したものは買えませんが、Suicaを使うのに慣れる意味があります。
2つ目は「1カ月後も口座にお金を残していること」。
1円でも残ればOKです。
1カ月という期間全体を眺め、お金の流れを考えられたということです。
こうしたルールを決め、Suicaとともに1カ月暮らしてみるのです。
私たちはキャッシュレス社会の中で、長く生きていくことになります。
何を削って何を残すか、考えることが大切です。
1万円と提案しましたが、「月2万円は絶対必要」という人は2万円で始めてもいいでしょう。
Suicaや電子マネー利用のいろはが分かり、経済的自立のための生活が軌道に乗ると思います。
ぜひ試してみてください。
交通系電子マネーのSuicaが誕生したのが2001年。
続いて流通系電子マネーのnanaco(イトーヨーカドー・セブンイレブン)、WAON(イオングループ)が誕生したのが2007年です。
その頃、静岡県富士市でイオン系のスーパーがリニューアルされ話題になりました。
というのも、この時に新しく出たWAONの本格運用が始まったからです。
取材に行った私が驚いたのは、地元の主婦の方たちが張り切っていたことです。
なぜそんなに元気なのか聞くと、「WAONを持ってイオンに通うようになったから」と言うのです。
それまでは、食費、交通費、遊興費といった費目ごとに現金を袋に入れる「袋分け」で家計を管理していたそうです。
ところが、WAONというICカードのおかげで、毎月の買い物代金をICチップに入れておけるようになり、非常に暮らしやすくなったというのです。
彼女たちは、まさにキャッシュレスの恩恵を15年ほど前に受けていたことになります。
この4月から、全国の18歳の若者たちもキャッシュレスの入り口に到着します。
くれぐれも使いすぎに注意し、電子マネーを使いこなしてほしいと思います。
(朝日新聞社の経済メディア「bizble」で2022年2月16日に公開した記事を転載しました)
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