目次

  1. 小中高でマネー教育はほぼなし。お金の管理に注意
  2. キャッシュレス時代、何を削って何を残すか考えよう
  3. 15年前、WAONの恩恵を受けた静岡の女性たち

民法の改正で、2022年4月から成人年齢が18歳に引き下げられます。

18歳以上なら、親権者の同意がなくてもクレジットカードを持てるようになります。

この大きな変化について、Suicaを例に考えてみます。

 

これまで通学でSuicaを使ってきた高校3年生が、大学1年生になったらクレジットカードを持てるわけです。

例えばJR東日本のビューカードをSuicaと連携させれば、暮らしは便利になるでしょう。

 

同時に、自分でチャージ(入金)して自分でお金を管理する生活が始まります。

無計画では大変なやけどを負いかねないので注意して下さい。

衆院本会議で、成人年齢を20歳から18歳に引き下げる民法改正案が与党などの賛成多数で可決された=2018年5月、国会、朝日新聞社

多くの大学生は、小中高を通じて金銭やクレジットカードに関する教育をきちんと受けてきませんでした。

何をどうコントロールすればいいか、分かっていない人も少なくありません。

そこで提案するのが「電子マネー・トレーニング」です。

 

まず、Suicaユーザーの必須アイテムであるクレジットカード選びから始めます。

Suicaにお金を入金することをチャージと呼びます。

現金でもチャージできますが、クレジットカードを使えば駅のATMやコンビニのレジで簡単にチャージできる上、ポイントも貯まります。

 

ここでお勧めしたいクレジットカードは、JR東日本系のビューカードです。

Suicaへのチャージでは、通常の3倍となる1.5%のポイントがつきます。

電車やバスの利用はもちろん、普段の買い物や食事の支払いをSuicaで済ますことで、いつでも実質1.5%還元を享受できるのです。

ビューゴールドプラスカード=筆者提供

さらに、スマホにSuicaを入れて使う「モバイルSuica」で定期券・グリーン券を購入する場合や、えきねっとでのJR切符購入(予約時決済)の場合、ビューカード利用で3%と驚異的な高還元率になります。

 

ビューカードで貯まるポイントには、様々な使い道があります。

最も分かりやすいのは「1ポイント→1円」としてSuicaにチャージする方法です。

旅好きの人なら、新幹線eチケットサービスで、普通車指定席をグリーン車やグランクラスにアップグレードし、優雅な旅を楽しむこともできます。

 

このように、Suicaにビューカードを結びつけるとお金の供給がスムーズになり、ポイントも貯まります。

ただ、まずは電子マネーの使い方をよく知る必要があります。

一般的に18歳になったばかりの学生は、アルバイト代や親の仕送りなど収入が限られます。

野放図に使っていては、すぐにお金はなくなってしまいます。

Suicaとビューカードをどう使いこなすか、考えるべきでしょう。

そこで提案したいのが、毎月1万円でSuica生活をするトレーニングです。

 

Suicaは基本的に前払い方式のプリペイドカードなので、先にお金をチャージする必要があります。

毎月の利用金額を決めておくことが大切です。

 

チャージ方法も知っておきましょう。

現在、ほとんどのクレジットカードからチャージできますが、ポイントが多くつくのはビューカードなのです。

「ビュー・スイカ」カード=筆者提供

また、Suicaにチャージできる金額は2万円が上限です。

もともと乗車券から始まったこともあり、少額利用を目的としたツールと言えます。

 

Suicaに1万円入れて1カ月暮らすトレーニングは、Suicaの1万円で生活の全てをまかなうわけではありません。

1万円を使ってSuicaに慣れ親しむこと、長期にわたってSuicaを使い続ける癖をつけることが目的です。

 

ルールは2つだけです。

1つは「少額でもSuicaを毎日使い続けること」。

1万円を30日で割ると、1日330円ほどです。

大したものは買えませんが、Suicaを使うのに慣れる意味があります。

 

2つ目は「1カ月後も口座にお金を残していること」。

1円でも残ればOKです。

1カ月という期間全体を眺め、お金の流れを考えられたということです。

2001年に公開された、JR東日本によるSuicaの実演。ICカードを自動改札機にかざすだけで通れるサービスは当時、画期的だった=東京都渋谷区、朝日新聞社

こうしたルールを決め、Suicaとともに1カ月暮らしてみるのです。

私たちはキャッシュレス社会の中で、長く生きていくことになります。

何を削って何を残すか、考えることが大切です。

 

1万円と提案しましたが、「月2万円は絶対必要」という人は2万円で始めてもいいでしょう。

Suicaや電子マネー利用のいろはが分かり、経済的自立のための生活が軌道に乗ると思います。

ぜひ試してみてください。

交通系電子マネーのSuicaが誕生したのが2001年。

続いて流通系電子マネーのnanaco(イトーヨーカドー・セブンイレブン)、WAON(イオングループ)が誕生したのが2007年です。

 

その頃、静岡県富士市でイオン系のスーパーがリニューアルされ話題になりました。

というのも、この時に新しく出たWAONの本格運用が始まったからです。

2009年、イオンの電子マネー「WAON」のサービスが全国のファミリーマートで使えるようになった=2009年10月、東京・池袋、朝日新聞社

取材に行った私が驚いたのは、地元の主婦の方たちが張り切っていたことです。

なぜそんなに元気なのか聞くと、「WAONを持ってイオンに通うようになったから」と言うのです。

それまでは、食費、交通費、遊興費といった費目ごとに現金を袋に入れる「袋分け」で家計を管理していたそうです。

ところが、WAONというICカードのおかげで、毎月の買い物代金をICチップに入れておけるようになり、非常に暮らしやすくなったというのです。

 

彼女たちは、まさにキャッシュレスの恩恵を15年ほど前に受けていたことになります。

この4月から、全国の18歳の若者たちもキャッシュレスの入り口に到着します。

くれぐれも使いすぎに注意し、電子マネーを使いこなしてほしいと思います。

 

(朝日新聞社の経済メディア「bizble」で2022年2月16日に公開した記事を転載しました)