副業が会社にバレるのはなぜ? 元国税専門官が解説
副業を始める人が増えていますが、中には「会社に知られずに副業をしたい」という人もいるのではないでしょうか。元国税専門官が、副業が会社にバレる理由やリスクを解説します。
副業を始める人が増えていますが、中には「会社に知られずに副業をしたい」という人もいるのではないでしょうか。元国税専門官が、副業が会社にバレる理由やリスクを解説します。
目次
「副業」という言葉に明確な定義はありません。
厚生労働省が発表した「副業・兼業の促進に関するガイドライン」では、以下のように説明されています。
「副業・兼業を行うということは、2つ以上の仕事を掛け持つことをここでは想定しています。副業・兼業は、企業に雇用される形で行うもの(正社員、パート・アルバイトなど)、自ら起業して事業主として行うもの、コンサルタントとして請負や委任といった形で行うものなど、さまざまな形態があります。」
この説明を踏まえると、たとえば以下のようなケースが副業に該当すると考えられます。
・本業の仕事のかたわら週末に行うアルバイト
・会社に勤めながら、勤務時間外に行うサイドビジネス
・農業を営みながら、収入を補うために行う別の仕事(兼業農家)
副業には、「サブの仕事」というニュアンスがあります。収入の中心となる本業に対して、副業は補助的な位置づけとなります。
そのため、「副業」と「複業」は、意味は似ていますが使い方に違いがあります。「副業をしている」とは、「本業以外の仕事をしていること」を、「複業をしている」は、「2つ以上の仕事をもっていること」を意味します。
なお、普段の仕事のかたわら、アパートの賃貸や株式などの金融商品の取引をしている人もいますが、これらは副業というよりは、資産運用の性格が強いといえるでしょう。
副業が認められるかどうかは、勤務先の就業規則によります。原則副業を可能としている会社もあれば、許可制となっている会社もあるので、その規則を守る必要があります。
厚生労働省は、就業規則のガイドラインとして「モデル就業規則」を公開していますが、ここでは以下のとおり、副業を原則として認めつつ、会社による副業の制限も可能としています。
(副業・兼業) 第68条 労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる。 2 会社は、労働者からの前項の業務に従事する旨の届出に基づき、当該労働者が当該業務に従事することにより次の各号のいずれかに該当する場合には、これを禁止又は制限することができる。 ① 労務提供上の支障がある場合 ② 企業秘密が漏洩する場合 ③ 会社の名誉や信用を損なう行為や、信頼関係を破壊する行為がある場合 ④ 競業により、企業の利益を害する場合
実際の就業規則は、上記の規則に縛られるものではなく、勤務先によって異なります。副業を始めるのであれば、事前に就業規則を確認しておくことをおすすめします。
副業は収入アップやスキルアップに役立ちますが、リスクもあります。代表的なケースを確認しておきましょう。
就業規則で副業が禁止されているにもかかわらず、副業をしていることが発覚すれば、何らかの処分が行われる可能性があります。
始末書の提出で済むケースもあれば、給与の減額や解雇につながる可能性もあり、処分の程度は本業の勤務先におよぼす影響によって変わるのが一般的です。
仕事中や通勤中の事故は、労災保険で保障されますが、副業の場合はどうなるのでしょうか。この場合、副業のタイプによって分かれます。
本業とは別の会社に雇用されて副業をしているのであれば、副業にかかわる事故についても労災保険の対象になります。このときに支給される保険給付額は、副業の賃金だけでなく、本業の賃金も合算したうえで算定されます。
一方、フリーランスのように、雇用されずに副業をしている場合は、中小事業主などの一部の例外を除き、労災保険の対象になりません。
副業をしていることを自分から明かさずとも、本業の勤務先にバレることがあります。副業のタイプによって2パターンに分かれますので、それぞれ見ていきましょう。
1月1日から12月31日までの1年間に、給与所得や退職所得以外の所得が20万円を超えた場合、確定申告が必要です。つまり、サイドビジネスで得た所得が20万円を超えたら、本業の給料と合わせて確定申告をし、所得税の手続きを済ませる必要があります。
問題はこの後です。税務署に提出された確定申告の情報は、その人の住まいの地方自治体に引き継がれます。そして、地方自治体で算定をした住民税額は、「主たる給与の支払を受けている勤務先」を通じて徴収される流れになっています。
簡単に説明すると、「副業を含めた住民税の情報が、本業の勤務先に行く」ということになりますので、ここから副業がバレてしまう可能性があるのです。
ただし、確定申告を行う際に、確定申告書第2表にある「住民税・事業税に関する事項」という欄で、「自分で納付」という選択をすることができます。こうしておけば、副業にかかる住民税の通知は、勤務先ではなく自宅に届きます。
2カ所以上から給料をもらう場合、1月1日から12月31日の1年間で得た副業収入が20万円を超えると確定申告が必要です。確定申告が終わると、住民税の情報が「主たる給与の支払いを受けている勤務先」に通知されます。副業にかかる住民税が、本業の勤務先に通知されるということです。
このとき、前述した「副業でビジネスをするケース」と違い、住民税を自分で納付することはできません。確定申告書第2表で「自分で納付」を選べるのは、「給与・公的年金等以外」という制限があるからです。
また、2020年9月1日の法改正により。労災保険の給付額は、「雇用されているすべての会社等の賃金額の合算額」を基に算定されることになったため、この手続きの過程で副業がバレることも考えられます。
副業を希望する人にとって、昨今の副業解禁の流れは追い風です。ただ、すべての会社が副業解禁というわけではありません。まずは勤務先のルールを確認しておきましょう。許可が必要であれば、きちんと許可を取っておくことをおすすめします。
副業が禁止されている会社にお勤めの場合、隠れて副業をするのはリスクがともないます。住民税や労災保険を通じてバレる可能性があり、本業の勤務先から処分を受ける可能性があります。
安定した本業があってこその副業ですから、副業を始めるのであれば、あらかじめリスクを理解しておくようにしましょう。
(朝日新聞社の経済メディア「bizble」で2021年8月8日に公開した記事を転載しました)
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