同社工場に足を踏み入れると、ガチャン、ガチャンと毛布を織る機械の音が響く。

 「ガチャンと音がしたら、万の金がもうかるから『ガチャマン』と呼ばれた好景気の時代もあったみたいです」

 3代目の藤原康穂(やすほ)社長(36)が教えてくれた。好景気も今や昔、海外製品との価格競争に加え、気密性の高い住宅が増えて国内需要も低迷。そこにコロナ禍が追い打ちをかける。

 社長に就任した2019年、オーガニックコットン製毛布を主力商品に据えた。コロナ禍でも需要は落ちず、現在は売り上げの3割ほどを占める。将来的には7~8割まで高めたい考えだ。

 同社がオーガニック製品を作り始めたのは1993年。海釣りが趣味で、海の汚れに敏感だった先代社長の父・正輝さん(2018年に死去)が製造を決めた。栽培に農薬や化学肥料、除草剤を使う綿花をオーガニックのものに代えれば、地球環境に優しいうえ、赤ちゃんやアトピー性皮膚炎に悩む人たちの肌にも優しい毛布をつくれるからだ。

 正輝さんの口癖は「生産者の良心」。綿花を栽培するインド、ペルー、タンザニアの人たちに適正な対価を支払うため、通常の3倍近い値段になる。

 SDGsが浸透し、「環境」がキーワードになると感じた康穂さんが、長年つくってきたオーガニック製品を自社の売りとして打ち出すことにした。

 さらに環境に優しい取り組みを進めようと目をつけたのが、製造過程で出る「みみ」と呼ばれる余り布。1年間で幅4センチ、長さ3.2キロメートル分にもなる。「もったいないと思っていたが、再利用の方法が思いつかなかった」と康穂さん。

 インターネットでアイデアを募ると、SNSでつながる同業者から「帽子にしたら」との提案を受けた。早速試作品を作ってみると、冬に最適なモコモコ帽子ができあがった。

 康穂さんは「環境に優しいだけでなく、利益の出るものを作って原料の生産者に還元する。みんなに喜んでもらえるものづくりをしたい」。オーガニック製品で海外進出も視野に入れている。(2021年7月31日朝日新聞地域面掲載)

日の出毛織

 1968年創業。藤原社長の一家3人を除いた従業員は6人。他社ブランドで販売される製品の受注生産も手がける。ネコ用ひざ掛けなどの独自商品も人気。同社製品を直接購入できるよう、2021年春に自社サイトを大幅リニューアルした。工場で直接購入もできる。