「生産者の良心」父の口癖が強み オーガニックな毛布、SDGsを先取り
国内最大の毛布の産地・大阪府泉大津市で創業半世紀の「日の出毛織」。関心が高まるSDGs(持続可能な開発目標)の考えを先取りし、約30年前から環境に優しいオーガニックコットン製の毛布を作り続ける。さらに、製造過程で出る余り布をつかった商品の開発にも取り組み、SDGsを追い風に成長をめざす。(井石栄司)
国内最大の毛布の産地・大阪府泉大津市で創業半世紀の「日の出毛織」。関心が高まるSDGs(持続可能な開発目標)の考えを先取りし、約30年前から環境に優しいオーガニックコットン製の毛布を作り続ける。さらに、製造過程で出る余り布をつかった商品の開発にも取り組み、SDGsを追い風に成長をめざす。(井石栄司)
同社工場に足を踏み入れると、ガチャン、ガチャンと毛布を織る機械の音が響く。
「ガチャンと音がしたら、万の金がもうかるから『ガチャマン』と呼ばれた好景気の時代もあったみたいです」
3代目の藤原康穂(やすほ)社長(36)が教えてくれた。好景気も今や昔、海外製品との価格競争に加え、気密性の高い住宅が増えて国内需要も低迷。そこにコロナ禍が追い打ちをかける。
社長に就任した2019年、オーガニックコットン製毛布を主力商品に据えた。コロナ禍でも需要は落ちず、現在は売り上げの3割ほどを占める。将来的には7~8割まで高めたい考えだ。
同社がオーガニック製品を作り始めたのは1993年。海釣りが趣味で、海の汚れに敏感だった先代社長の父・正輝さん(2018年に死去)が製造を決めた。栽培に農薬や化学肥料、除草剤を使う綿花をオーガニックのものに代えれば、地球環境に優しいうえ、赤ちゃんやアトピー性皮膚炎に悩む人たちの肌にも優しい毛布をつくれるからだ。
正輝さんの口癖は「生産者の良心」。綿花を栽培するインド、ペルー、タンザニアの人たちに適正な対価を支払うため、通常の3倍近い値段になる。
SDGsが浸透し、「環境」がキーワードになると感じた康穂さんが、長年つくってきたオーガニック製品を自社の売りとして打ち出すことにした。
さらに環境に優しい取り組みを進めようと目をつけたのが、製造過程で出る「みみ」と呼ばれる余り布。1年間で幅4センチ、長さ3.2キロメートル分にもなる。「もったいないと思っていたが、再利用の方法が思いつかなかった」と康穂さん。
インターネットでアイデアを募ると、SNSでつながる同業者から「帽子にしたら」との提案を受けた。早速試作品を作ってみると、冬に最適なモコモコ帽子ができあがった。
康穂さんは「環境に優しいだけでなく、利益の出るものを作って原料の生産者に還元する。みんなに喜んでもらえるものづくりをしたい」。オーガニック製品で海外進出も視野に入れている。(2021年7月31日朝日新聞地域面掲載)
1968年創業。藤原社長の一家3人を除いた従業員は6人。他社ブランドで販売される製品の受注生産も手がける。ネコ用ひざ掛けなどの独自商品も人気。同社製品を直接購入できるよう、2021年春に自社サイトを大幅リニューアルした。工場で直接購入もできる。
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