目次

  1. 自動販売機設置のメリット・デメリット
    1. 自動販売機設置のメリット
    2. 自動販売機設置のデメリット
  2. 自動販売機設置の大まかな流れ
    1. ステップ1.自動販売機の設置目的の整理
    2. ステップ2.自販機運営会社の選定
    3. ステップ3.企画書内容から契約オペレーター決定
    4. ステップ4.契約書締結から設置までの確認
    5. ステップ5.設置立会い
    6. ステップ6.販売開始
  3. 自動販売機設置に役立つ事前知識
    1. 自動販売機の設置費用
    2. 自動販売機の設置条件 設置できる場所・設置できない場所
    3. 自動販売機の設置許可
    4. 自動販売機の設置によって期待できる利益
  4. 自動販売機を設置したあとは
  5. 自動販売機を設置するときはオペレーターとの信頼関係が大事

 自動販売機を設置するときは、先に設置するとどのようなメリット・デメリットがあるのかおさえておきましょう。事前に把握しておくことで、こんなはずではなかった……という失敗も防げます。

 自動販売機設置のメリットのひとつに、従業員への福利厚生の一環になる点があげられます。飲料自販機を導入すれば、従業員が、休憩中や食事時間に飲料を安価で購入できるようになり、仕事に対する意欲(モチベーション)向上につながります。

 また、利益獲得が見込めるのもメリットです。人流が多い場所や、会社の敷地内であっても一般の利用者も利用できるように場所に設置することで、多くの販売手数料(自動販売機設置会社から売上に応じて設置企業に支払われるお金)が期待できます。

 また、上記以外に「急な来客に対してドリンクサービスが提供できる(飲料自販機の場合)」「ライフラインが止まった場合の備えになる」などもあげられます。

 自動販売機の設置デメリットとしては、「飲み終えた容器散乱」「電気代」などがよくあげられます。

 ただ前者は、「常にゴミ箱周りをきれいにしておく」「自販機運営会社の担当者が、空き容器を回収する前にゴミ箱がいっぱいになったら、従業員のほうで回収して、一時的に別の場所に保管しておく」などのルールを決めておけば、自動販売機設置に悩むほどの問題にはならないでしょう。また後者も、一定の売上見込みがあれば不安な点ではありません(詳細後述)。

自動販売機設置の手順6ステップ
自動販売機設置の手順6ステップ(デザイン:吉田咲雪)

 では、実際に自動販売機を設置するときは、どのような手続きを踏めばよいのでしょうか。大まかな流れは、以下のとおりです。

  1. 自動販売機の設置目的の整理
  2. 自販機運営会社の選定
  3. 企画書内容から契約オペレーター決定
  4. 契約書締結から設置までの確認
  5. 設置立会い
  6. 販売開始

 以下、順に詳しくご説明します。

 いざ、自動販売機を設置することになったら、まずは「なぜ自動販売機を設置するのか」、その目的を整理します。目的によって設置するべき自動販売機の種類や場所などが変わってくるからです。

 自動販売機の設置目的はさまざまですが、「従業員の福利厚生」「ビジネス(利益に期待)」が一般的です。

 従業員の福利厚生のためであれば、事前に従業員からどのブランドの自販機の要望が多いかアンケートを取るのもよいでしょう。

 利益目的のために、一般の人が利用できる場所に設置するなら、周辺(200m程度の範囲で)の販売価格の傾向を調査したり、通行者の主な世代などから自販機利用度を推測したりするのも一案です。

 一方で、自販機管理運営会社は、自動販売機設置の際に「この場所に設置したら売上が見込めるか?」という一点のみで契約するか否かの判断をしています。自社が希望する場所に必ずしも設置できない、ということは念頭に置いておくとよいでしょう。

 自動販売機の設置目的を整理し、自動販売機の種類や設置場所が決まったら自販機管理運営会社(業界では自販機オペレーターと呼ぶため、以降は「オペレーター」と表記します)を選定します。

 なお、オペレーターを選ぶときは、自販機ビジネスの前提を理解しておくとスムーズです。

イ)自動販売機はオペレーターの「フルオペレーションサービス」で成り立っています。
ロ)自動販売機を設定すると、オペレーターが定期的に訪問、中身補充、金銭回収、空き容器回収、清掃、売上報告、手数料の支払まで行います。
ハ)契約者はスペース提供と電気代のみ負担。

 また、インターネット検索すると多くのホームページがありますが、オペレーターは基本的にふたつに分類できます。

 ひとつは、自社ブランド製品のみを扱うところです。代表的なブランドとして、以下の7つがあります。

  1. コカ・コーラ
  2. サントリー
  3. アサヒ飲料
  4. キリンビバレッジ
  5. ポッカサッポロ
  6. 伊藤園
  7. ダイドードリンコ

 もうひとつは、上記を含む複数の飲料ブランドを取り扱う企業(総合オペレーター)です。複数の自販機を設置する場合に受け入れやすいのが特徴で、会社によっては複数ブランドの売れ筋商品を1台の自販機で販売する「ブランドMIX」型自販機を提供しています。なお、コカ・コーラおよび伊藤園は、総合オペレーターでは取扱いしていません。

 オペーレーターを選定する場合は、信頼性が高いと思われるオペレーターを少なくとも3社には問い合わせのうえ、来社打ち合わせ、現地調査を経て見積り(企画書の提示)を依頼します。

 ファーストコンタクトはホームページからの問い合わせメールがよいでしょう。ホームページのない企業や返信の遅い企業などは評価の目安となります。

 オペレーターから企画書が提示されたら、次のことをチェックしましょう。

  1. 設置環境に見合った(幅、奥行サイズが合っている)機種が提示されているか。省エネ型か
  2. 電子マネー等のキャッシュレス対応の説明がされているか
  3. 販売したい商品のラインナップと販売金額が表記されているか(コーヒー、お茶、水などカテゴリー別に)
  4. 販売手数料が具体的に明記されているか(売上金額の〇〇%、売れた本数×〇〇円などオペレーターにより異なる場合があります)
  5. 締日と売上明細の提示方法(ハガキやWebから確認する方法など)、入金日まで明記されているか
  6. 契約期間はどれくらいか(基本的に新規契約期間は3年間。3年経過以降は1年ごとの自動更新)
  7. アフターフォロー体制(訪問回数/月)、容器回収、故障、緊急時対応など明記されているか

 主に以上の内容が具体的に企画書に明記されているか確認し、各社を比較したうえで契約先を決めてください。不明点は納得するまで質問しましょう。

 また、この時点でどのブランドを希望するかの決定も必要です。

 契約オペレーターを決定したら当該企業へ連絡し、契約締結の意思表示をします。オペレーターから契約書が送られてくるので、内容が企画書の内容と相違ないかと、設置日・時間がいつかの確認をしましょう。

 なお、このタイミングで、機材を積んだ車輌搬入口の指定の有無や搬入エレベーターの有無(2階以上の設置の場合)など、設置時に注意するべき点があれば伝えておきます。

 設置のときは、オペレーターのルート担当者、営業担当者と一緒に立会います。以下、設置のプロセスです。

①機材を積み降ろします。

機材の積み下ろし

②スペース確認後、据え置き平行を確認します。

据え置き並行の確認

③アンカーボルト打ちを行います(耐震のため必須作業です)。

アンカーボルト打ち

④販売商品を投入し、正常に作動するか確認します。

販売商品の投入

 自動販売機設置にかかる作業時間は最大1時間です。終了後にオペレーター担当者から、使い方などの説明があります。

 飲料が投入されても「温かい」「冷たい」の適温になるまで時間が必要ですが、オペーレーター担当者が自動販売機内にあるタイマーを使い、季節に応じて適切な時間を設定してくれます(一般的には3時間程度)。

 押しボタンの「準備中」表記が消えたら、いよいよ販売可能となります。

 つづいて、自動販売機設置において知っておくと役立つ事前知識(設置費用や設置条件、設置許可、期待できる利益)をご紹介します。

 自動販売機設置において負担する費用は、自動販売機を動かすために必要な電気代のみです。

 機材は飲料メーカーからオペレーターに無償貸与されていて、オペレーターも経費は契約期間中の売上から回収できると判断しているため、企業が設置そのものに対して支払う費用はありません。

 前述したように、自動販売機は、オペレーターから見て「売れる場所」であれば設置することが可能です。

 ただし、売上が見込めていても、「筐体が公道にはみ出してしまう」「耐震環境にない」場所は、条例で禁止されているので設置できません。詳しくはJIS(日本工業規格)の「自動販売機−据付基準」をご覧ください。

 一般的な自動販売機(缶飲料、ペットボトル)設置の場合、許可を取る必要はありません。

 一方、例えば紙コップ式自販機の場合は喫茶店と同様の営業となり、事前に保健所への許可申請が求められます。ただ、その場合も、基本的にはオペレーター側で行うため、心配する必要はありません。

 自動販売機を設置すると、契約内容に則って毎月販売手数料が入金されます。

 例えば、販売手数料が売上の20%の場合、月間売上が50,000円なら、50,000円×0.2=10,000円が指定口座に振り込まれます。なお、販売手数料は、通常、雑収入として経理処理します(この場合の金額は税込みです)。

 この販売手数料が自動販売機の稼働に必要な電気代を超えていれば、利益を得ることができます。その電気代ですが、今の機材はすべて省エネ型(ヒートポンプ式)のため、月にかかる電気代は、季節によって多少変動するものの平均2,000円前後です。参考までに、筆者が専用電源設備で契約したときにかかった月の平均電気代をご紹介します。

  • 2018年:約1,720円(年間約20,600円)
  • 2019年:約2,550円(年間約30,600円)
  • 2020年:約1,740円(年間約20,900円)

 なお、販売手数料が売上の20%の契約で、月2,000円前後に電気代をおさえられれば、計算上は月10,000円以上売れると利益が発生しますが、実際には一定本数以上の販売が求められます(オペレーターによって、その本数は変わります)。そのため、10,000円分を販売できればよい、というわけではありませんので注意してください。

 自動販売機を設置すると、オペレーター担当者が定期的(1週間に〇回、あるいは毎日など)に訪問し、故障のチェック、商品の補充、売上金額回収、リサイクルボックス内容器回収、自販機周りの掃除などを行います。また、季節の変わり目には「温」⇔「冷」の庫内切り替えと販売商品の入れ替えなどを行ってくれます。これらがきちんと実施されているかチェックしましょう。

 販売希望したい商品があれば入れ替えてくれることもあるので、利用する従業員にタイミングを見計らってヒアリングするのもよいでしょう。

 長期にわたって続くコロナ禍で、「24時間稼働」「非対面」「非接触」の観点から飲料や食品の自動販売機を導入するメリットが改めて注目されています。

 自動販売機を設置するときは、この記事で紹介した内容を見ておわかりになるように、信頼できるパートナー(オペレーター)といかに出会えるかが鍵となります。これから新規で導入するときにWin-Winの関係が構築され、安心と収益にうまくつながることを願っています。