目次

  1. 印鑑証明書の発行手数料に用いる主な勘定科目
    1. 租税公課
    2. 支払手数料
    3. 雑費
  2. 印鑑証明書の発行手数料の仕訳例
    1. 収入印紙を購入してすぐに申請書に貼付し、法務局に提出した場合
    2. ストックしてあった収入印紙を使い、法務局に申請した場合
    3. オンラインで請求した場合
    4. コンビニエンスストアで発行した場合(個人の場合のみ)
  3. 印鑑証明書の発行手数料を仕訳するときの注意点
    1. 印鑑証明書の発行は非課税取引
    2. 勘定科目はむやみに変更しない
    3. 租税公課や支払手数料を使う取引は意外と多い
  4. 印鑑証明の基礎知識
    1. 印鑑証明書はさまざまなシーンで必要
    2. 印鑑証明書を取れる場所は法務局
    3. 印鑑証明書を発行する際には印鑑の事前登録が必要
    4. 印鑑証明書はなるべく最新のものを提出する
  5. 頻度が多くないからこそ慎重に

 印鑑証明書を発行する際にかかる手数料を計上する勘定科目は、必ずしも決まっていなく、各企業が自社の状況にあわせて選んでいます。しかし、租税公課・支払手数料・雑費のいずれかを用いるのが一般的です。印鑑証明書の発行手数料は製造原価となることは想定されず、販売費及び一般管理費で計上することになります。

 租税公課とは、各種税金にかかる部分(租税)と地方公共団体への支払にかかる部分(公課)をあわせ持った勘定科目です。印鑑証明書の発行手数料も地方公共団体への支払いのため、多くの場合、租税公課が用いられます。

 支払手数料とは、相手口座への送金など、何らかの手続きをするときに発生した手数料に対して使用する勘定科目です。印鑑証明書の発行手数料も、その他の手数料と同様に、支払手数料を使うことがあります。

 雑費は、1回あたりの金額が少額で、さらに年間を通しても少額であり、会社としても重要視していない費用を計上する勘定科目です。印鑑証明書の年間の発行回数が非常に少なく、発行手数料の金額も販売費及び一般管理費の総額と比較して小さいなら、雑費を使用することも考えられます。

 雑費を用いる場合、雑多な取引のうちの一つになるため、仮に印鑑証明書の年間発行数を分析したいという場合には不向きのため、注意が必要です。

印鑑証明書の発行手数料に用いる勘定科目と仕訳例
印鑑証明書の発行手数料に用いる勘定科目と仕訳例(デザイン:吉田咲雪)

 印鑑証明書はさまざま発行方法があり、発行手数料の支払いの仕方もいくつかあります。ここでは、複数のパターンに分けて、具体的な仕訳例をご紹介します。なお、勘定科目は便宜的に租税公課に統一します。

 法務局に行き、印鑑証明書を発行しようとする際には、事前に発行手数料分の収入印紙を販売している窓口で購入するのが一般的です。その場合は、以下の仕訳を起票します。

(例)印鑑証明書の発行手数料分(450円)の収入印紙を購入し、印鑑証明書を発行するための申請書にすぐに貼付して法務局に提出した。

借方 貸方
租税公課 450円 現金 450円

 会社によっては収入印紙を大量に購入して、社内の金庫などに保管しているところもあるでしょう。

 ストックしてある収入印紙を使って発行手数料を支払った場合でも、購入時に上記の仕訳を起票していれば、使用時に追加で仕訳を起票する必要はありません。

 一方で、もし月や年度をまたいで未使用の収入印紙が残っていた場合、月末や年度末のタイミングで残りの在庫数を調べ、貯蔵品として計上することが一般的です。

 貯蔵品として仕訳処理した収入印紙を申請書に貼付し、法務局に申請した場合は、次のように仕訳を行います。

①収入印紙購入時

 まずは、収入印紙の購入代を租税公課で仕訳します。

(例)収入印紙を10,000円分現金で購入し、会社の金庫に保管した。

借方 貸方
租税公課 10,000円 現金 10,000円

②収入印紙振替時

 年度末(もしくは月末など)のタイミングで収入印紙が残っていたら集計し、貯蔵品に振り替えます。

(例)年度末の棚卸の結果、収入印紙は6,000円分在庫があった。

借方 貸方
貯蔵品 6,000円 租税公課 6,000円

③印鑑証明書発行時

 貯蔵品としてストックしてあった収入印紙を、使用した際に租税公課に振り替えます。

(例)貯蔵品の収入印紙450円分を使って、法務局で印鑑証明書を発行した。

借方 貸方
租税公課 450円 貯蔵品 450円

 印鑑証明書は、オンラインで発行を請求することも可能です。その場合はインターネットバンキング、モバイルバンキング又は電子納付対応のATMを利用して、発行手数料を支払うことになります。

(例)印鑑証明書の発行をオンラインで申請し、支払手数料410円を現金で支払った。

借方 貸方
租税公課 410円 預金 410円

 なお、オンラインで請求をすると、窓口での依頼よりも安くなります。

 個人の場合、マイナンバーカードを作っていれば、コンビニのコピー機で印鑑証明書を発行できます。個人事業主として印鑑証明書をコンビニエンスストアで発行した場合は、以下の仕訳になることが一般的です(なお、支払手数料で仕訳を起票するとした場合)。

(例)コンビニのコピー機を使い、印鑑証明書を発行した。そのとき現金で150円支払っている。

借方 貸方
支払手数料 150円 現金または事業主借 150円

 印鑑証明書の発行手数料を仕訳するときは、次の点に気をつけるようにしましょう。

  1. 印鑑証明書の発行は非課税取引
  2. 勘定科目はむやみに変更しない
  3. 租税公課や支払手数料を使う取引は意外と多い

 印鑑証明書の発行は、非課税取引になります。そのため、支払手数料を使って仕訳するときは税区分に注意しなければいけません。支払手数料は、通常、課税取引となるからです。

 一方、租税公課を使用する際には、課税取引になることはほとんどないため、そこまで心配する必要はありません。

 印鑑証明書の発行手数料に用いる勘定科目がいくつかあるのは、前述した通りです。どれを使わなければいけないルールはありませんが、一度使うと決めた勘定科目は継続して使用するようにしましょう。

 会計には、処理方法をむやみに変更せず、一度決めた方法を継続的に採用することを求める「継続性の原則」があります。むやみに変えてしまうと分析をする際に煩雑になるのに加えて、税務調査など外部の人が見たときも、何かを隠蔽しようとしているのではないかと疑念を抱かせることになってしまいます。

 もし変更したい場合は、例えば「雑費で計上していたものの、取得回数が多くなったため、租税公課や支払手数料にする」というような理由が必要です。

 租税公課や支払手数料という勘定科目は、印鑑証明書の発行以外にもさまざまな取引に用いられます。後日、見返したときに、何に支払ったものなのか、わからなくなりがちです。摘要欄に「印鑑証明の取得」と書いておくと良いでしょう。

 印鑑証明書は、事業を運営するなかで、それほど多くはないものの、ふとしたときに提出を求められる書類です。。ここでは、勘定科目や仕訳の仕方とあわせて知っておきたい、印鑑証明に関するさまざまな基礎知識をご紹介します。

 印鑑証明書が必要な主なシーンは、法人では主に以下のようなシーンです。

  • 金融機関での法人口座開設
  • 法人のクレジットカード発行
  • 事務所や店舗の賃貸契約
  • 金融機関からの融資
  • 補助金・助成金を受けるとき

 印鑑証明は会社が実在し、有効な印鑑を押印しているということを証明するものです。重要な契約では法人の実在性の証明が必要になってくるため、印鑑証明書の提出が求められます。

 個人の場合は、主に住宅購入や借入時に必要になることが多いです。そのほか、遺言書や遺産分割協議書の作成時に必要になることもあります。

 印鑑証明書を取れる場所は、本店所在地を管轄する法務局です。法務局に直接出向き、窓口で申請するか、備え付けの証明書発行請求機を利用すれば取得できます。

 窓口では、申請書類が必要になりますが、その詳細は法務局のホームページを参照ください(参考:登記事項証明書(商業・法人登記)・印鑑証明書等の交付請求書の様式丨法務局)。

 ほかにも、次のような取得方法があります。

  • 郵便:法務局に書類を郵送して申請する方法。申請書・収入印紙・返信用封筒・郵便切手が必要
  • オンライン:インターネットを使って法務局に申請する方法。パソコンに専用ソフトをインストールしたり、電子証明書を用意したりする必要がある。詳細は、法務局の「会社・法人代表者の印鑑証明書を取得したい方」を参照のこと

 一方、個人の場合は、管轄が住民票のある市区町村になります。そのため、取得する際は、住民票のある市区町村の役所やその出張センターに申請します。法人の場合と同様、窓口か証明書発行請求機での入手が可能です。

 また、マイナンバーカードを発行していれば、コンビニエンスストアでも発行できます。コンビニでの発行は、手数料が安くなります。

 印鑑証明書を発行する際には、実印を登録しないといけません。法人の場合は、会社設立時と同時に印鑑登録をしていて、すでに済んでいることのほうが多いでしょう。

 印鑑証明書は、提出が求められる際に、発行から3ヵ月以内のものと指定されることがよくあります。大量に入手して保管しておいても、期限切れになることが多いので、必要になったらその都度請求しましょう。

 印鑑証明書の発行手数料に関する仕訳は、自社の方針を定めてしまえば、それほど難しいことはないでしょう。

 また印鑑証明書は、起業時に非常にお世話になることが多いですがある程度事業が軌道に乗って、安定をしてくると疎遠になる書類です。

 起業時の経理に携わったことがない人は馴染みが薄いことが多いと考えられるので、ぜひ迷った際は本記事を参考にしていただければ幸いです。