目次

  1. 社員食堂の現状
  2. 社員食堂のメリット
    1. 健康経営につながる
    2. 従業員のコミュニケーションを促進
    3. 外食中心の従業員の食費負担を軽減できる
  3. 社員食堂を導入する際の注意点
    1. 運用・導入コストが高額
    2. 外国人労働者に対する配慮が必要
    3. 法律上の問題をクリアしなければならない
  4. 社員食堂を導入せずに食事を補助する方法
    1. オフィス常駐型の配送サービス
    2. 福利厚生代行サービス
    3. 外食代を補助するサービス
  5. 社員食堂は従業員への投資。自社に合った食事補助を

 株式会社リクルートライフスタイルの外食産業に関する調査・研究機関「ホットペッパーグルメ外食総研」が2018年に実施した「社食の利用実態や改善要望を調査」によると、アンケートに回答した約10,000人の22.7%にあたる「昼食で社食が使える人」のうち、実に45.8%の人が「社食があるが利用しない」と回答しました。

 社員食堂を利用しない日の昼食の方法は、「コンビニやスーパーなどでの購入」が47.1%と最も多く、「自分や家族が作った弁当など」の38.9%、「飲食店での外食」の31.1%と続いています。

 要因はさまざまですが、同調査によれば、社員食堂を使いたくない理由のトップ3は「おいしくない」「高い」「メニューの種類が少ない」となっています。

 また、最近は新型コロナウイルス感染拡大も、社員食堂の利用率に少なからず影響をもたらしています。

 例えば、リモートワークの実施によってそもそも会社に行くことがなくなり、社員食堂を使わなくなった、という人も見かけます。総務省「令和3年度版情報通信白書」によると、リモートワークの実施率は2020年3月時点で大企業33.7%、中小企業14.1%であり、緊急事態宣言発出後の2020年4月に大企業83.3%、中小企業50.9%と大幅に増加し、その後、新型コロナウイルスの感染状況での増減はあるものの、直近データの2021年3月時点で大企業69.2%、中小企業33.0%です。

 ほかにも、会社には行っているものの、人が密集しているから避けたいという人もいます。今、上記の社員食堂の利用調査を行ったら、「社食はあるが利用しない」人の割合が少し増えるかもしれません。

 いずれにしても、社員食堂に対して何らかの不満を抱いている人が意外にも多く、あまり利用されていないのが社員食堂の現状です。

社員食堂の現状とメリット、食事補助サービス
社員食堂の現状とメリット、食事補助サービス(デザイン:吉田咲雪)

 社員食堂の需要はそれほどあるわけではないものの、導入方法の工夫などにより、社員と企業の双方にとってのメリットとなります。具体的にどのようなものがあるのか、ご紹介します。

 健康経営とは、社員の健康増進を経営課題として捉え、解決のための戦略を実践して、社員の生産性向上を図る経営手法のことです。

 健康には、食事・運動・睡眠が非常に重要です。社員食堂の実施にあたっては、栄養バランスを意識したメニューを提供することで、食事による健康に大きく貢献できます。

 上記で取り上げた「社食の利用実態や改善要望を調査」では、社員食堂を利用しない日の昼食は、「コンビニやスーパーなどでの購入」が最多となっています。これらの食事がすべて悪いわけではありませんが、自分の中で栄養バランスに対してより高い意識を持っていないと栄養素が偏り、生活習慣病になってしまう可能性が高くなります。

 社員食堂を設置し、栄養のバランスが整った食事を提供することで、社員の健康に寄与し、企業全体の生産性向上を期待できる可能性もあります。

 新型コロナウイルス感染拡大以降のリモートワークの増加により、従業員同士のコミュニケーションの減少も問題になっています。リモートワークでは、仕事上の打ち合わせなどのコミュニケーションは可能でも、日常的な雑談やちょっとした相談事などが難しいためコミュニケーション不足に陥りやすくなります。

 社員食堂があることで、従業員同士での食事がしやすくなり、不足しがちな従業員同士のコミュニケーションの活性化も期待できます。

 福利厚生の一環として、社員食堂での食事の提供価格を近隣の飲食店よりも低くすることで、従業員の食事負担を軽減できます。企業の1つの魅力となり従業員満足度の向上も期待できるでしょう。

 社員食堂を導入する際の注意点としては、運用・導入コストの問題、外国人労働者への配慮、法律上の問題などが挙げられます。以下に各注意点を紹介します。

 社員食堂を導入する場合、社員食堂の食堂スペース、厨房スペースの確保や整備、厨房設備機器の購入と設置など大きなコストが発生します。今は、社員に安心して利用してもらえるように、感染対策用のアクリル板なども必要でしょう。

 さらに社員食堂の設置後も、調理スタッフの雇用による人件費、食材費、水道光熱費など、運営費も継続的にかかります。

 社員食堂を続けていくためには運営費をできるかぎりおさえることが大切ですが、コスト削減を意識するあまり、「社食の利用実態や改善要望を調査」の社食を利用したくない理由としてあげられている、「おいしくない」「メニューの種類が少ない」というようなことになっては本末転倒です。

 そのため、社員食堂の導入にあたっては、導入時にかかるコストに加えて、運営費も考えて検討をしていくことが重要です。

 社員食堂は福利厚生のため、一部スタートアップでも注目されており、特に外国人労働者にはニーズがあります。

 現在、外国人労働者を雇用している企業はもちろんのこと、外国人労働者を雇用していない企業においても、人手不足が叫ばれる昨今において外国人労働者への配慮は重要です。

 社員食堂を福利厚生の一環として実施する場合、労働基準法で国籍や信条などを理由とした差別的な扱いが禁じられます。

 宗教上の理由により、社員食堂のメニューが食べられないことが一概に違法になるとはいえませんが、宗教などへ配慮の工夫が必要です。

 社員食堂を導入するにあたっては食品衛生法、健康増進法などの法律に従い運営しなければなりません。

 食品衛生法による飲食店の営業許可の申請と、健康増進法に基づく申請が必要であり、いずれも地方自治体が管轄する保健所で手続きを行います。

 これらについては、申請をしないと法律違反になってしまうため、社員食堂を運営委託できる業者に依頼することも1つの方法です。

 従業員の食事補助については社員食堂以外にもさまざまなサービスが存在します。

 コスト面や運用面から社員食堂の導入が難しい場合には、以下のサービスも検討してみるとよいかもしれません。

 オフィス常駐型の配送サービスは、オフィスに冷蔵庫や冷凍庫、電子レンジなどを設置することで食事が届くサービスです。

 健康経営を意識した健康的な食事の配送サービスなども多くあります。

サービス名 提供会社 特徴 ホームページ
OFFICE DE YASAI 株式会社KOMPEIZTO オフィスに冷蔵庫(冷凍庫)を設置するだけで新鮮なサラダやフルーツ、無添加や国産食材にこだわった総菜など健康的な食事が届くサービス。
従業員は1つ100円から手軽に購入できる。
従業員の自宅に届く、リモートワークに対応したプランもある。
https://www.officedeyasai.jp/
オフィスおかん 株式会社OKAN すべて国内製造で管理栄養士が監修した惣菜が、オフィスの冷蔵庫に届くサービス。
肉や魚などの満足感のあるメニューから旬の野菜の副菜メニューなど、毎月20種類程度のメニューが届く。
従業員は1つ100円から手軽に購入できる。
https://office.okan.jp/

 福利厚生の代行サービスでも、レストランやカフェなどで食事の割引サービスや、サイズアップサービス、トッピングサービスなどの補助が利用できるものがあります。

 福利厚生代行サービスに関しては、食事補助以外にもさまざまな福利厚生サービスがパッケージになっているので、食事補助に限らず福利厚生の充実を図りたい場合に検討されるとよいでしょう。

サービス名 提供会社 特徴 ホームページ
福利厚生クラブ 株式会社リロクラブ 食事補助に限らず、多くの福利厚生をアウトソーシングできるサービス。
身近な飲食店のランチから、有名ホテルのレストランまで全国のグルメサイトを網羅している。
https://www.reloclub.jp/
ベネフィット・ステーション 株式会社ベネフィット・ワン 人生のあらゆるシーンで利用できるさまざまな割引優待があり、リモートワークによる働き方の変化にも対応してサポートしている。
健康経営を実現するための健康支援のサービスも用意されている。
https://pr.benefit-one.co.jp/bs/

 従業員に対して電子カードや食事券を配布し、全国の対象飲食店で利用してもらうことができるサービスもあります。食事補助に対して福利厚生として計上できるサポートなども整っています。

 外食代を補助するサービスについては外食の食事補助のため、健康的な食事などの健康経営に関する指導を別途社内で実施していくことも大切です。

サービス名 提供会社 特徴 ホームページ
チケットレストラン 株式会社エデンレットジャパン 全国66,000店以上の飲食店やコンビニで毎日利用できる「電子カード」や「食事券」を配布している。
多くのチェーン店が加盟しており全国各地で利用ができる。
https://ticketrestaurant.jp/

 利用率が減りつつある社員食堂ですが、さまざまなメリットも存在します。魅力的な社員食堂は従業員満足度や士気の向上が期待できます。一方で、社員食堂の導入・運用には大きなコストもかかります。

 昨今では健康経営につながるサービスから従業員満足度の向上につながるものまで、食事補助の福利厚生に関わる多くのサービスも登場しています。

 食事は健康とは切っても切れないものです。そして、健康経営の視点からも従業員の心身の健康は経営にとっても非常に重要なものとなっています。

 環境の変化に強い健康的な経営を行っていくためにも、従業員の健康にも意識を向けた食事補助の取り組みを、それぞれの企業に合った形で実施していくことは大切です。