溶解処理は今や主流 シュレッダーとの違いや業者選びの注意点を解説
社内の書類には、顧客からの重要文書など機密書類が多く保管されています。そうした書類を廃棄する際は、シュレッダーのほか、「溶解処理」という方法があります。この記事では、手間やコストにおいてシュレッダーよりも優れた溶解処理の特徴や注意点などについて、文書管理のコンサルティングを行っている筆者が詳しく解説します。
社内の書類には、顧客からの重要文書など機密書類が多く保管されています。そうした書類を廃棄する際は、シュレッダーのほか、「溶解処理」という方法があります。この記事では、手間やコストにおいてシュレッダーよりも優れた溶解処理の特徴や注意点などについて、文書管理のコンサルティングを行っている筆者が詳しく解説します。
溶解処理とは書類を液体でバラバラに溶かす処理方法のことです。
溶解処理では、段ボールに入ったまま書類を廃棄するので、バインダーの取り外しやホチキス除去などの面倒な作業を省くことができます。
シュレッダーで書類を破棄した場合、裁断片が大きいものだと判読されるリスクがありますが、溶解処理だと紙が完全に溶けた状態となり、情報を読み取ることは不可能となります。
そのほか、溶解されたものはリサイクル(トイレットペーパーなど)されるため、環境保護にも貢献できるといったメリットもあります。
後述するとおり、いくつかデメリットや注意点もありますが、溶解処理はシュレッダーにはないメリットを持った書類処理の方法です。
溶解処理には以下のようなメリットや特徴があります。
シュレッダー作業は、ご存知のとおり時間や手間がかかります。具体的には、以下のような手間(時間)が挙げられます。
しかし、書類を処理する際、溶解処理を行うと、上記のような手間や時間が発生しません。溶解処理では、ホチキス除去などを行わずに段ボールごと業者に出すことができるので手間や作業時間がかからないのです。
また、実はシュレッダー作業にかかる人件費と比べて溶解処理は安価で済むというメリットもあります。具体的には、1箱(3,000枚程度)分をシュレッダーする場合、人件費換算でおよそ1箱あたり3,000~4,000円のコストが発生している計算になりますが、溶解処理だと600~1,500円程度で済みます。
シュレッダー作業と溶解処理を比較した際のそれぞれのメリット・デメリットをまとめると、以下のとおりになります。
シュレッダー作業の特徴 | 溶解処理の特徴 |
---|---|
【メリット】 |
【メリット】 |
【デメリット】 |
【デメリット】 |
自社でシュレッダー作業を行っているところの多くは、破砕された紙片を一般ごみとして処理しているのではないでしょうか。その場合、ほとんどが焼却処理されています。
一方、溶解処理の場合、溶解された書類はトイレットペーパーなどにリサイクルされています。つまり、溶解処理を選択すると「環境保護に貢献できる」というメリットもあるのです。
不要な書類をシュレッダーによって処理している企業は、オフィスの整理整頓が難しくなる傾向があります。シュレッダー作業に手間がかかるため、不要な書類が徐々に社内に蓄積されていき、結果としてオフィスが乱れてしまうのです。
もうすぐ満杯になりそうなシュレッダーBOXに気づき、シュレッダーすることを諦めて、キャビネットに不要書類を一時保管した経験はありませんか。また、カタログなどの機密情報ではない書類はシュレッダー処理せずに廃棄できますが、ゴミ箱に入れるとかさばってしまうので、なぜかキャビネットに保管してしまうこともあるはずです。このような積み重ねがオフィスフロアの書類増加の原因になっています。
しかし、溶解処理に切り替えると、不要となった紙書類はすべて段ボールに入れるという習慣になるので、「書類の破棄が面倒くさい」という気持ちが軽減されます。その結果、オフィス内に不要な書類の蓄積が無くなり、オフィスが整理されやすくなるのです。
一方、溶解処理には以下のようなデメリットや注意点もあります。
溶解処理には、情報セキュリティの面でいくつか注意しておくポイントがあります。
具体的には、輸送時の車両におけるセキュリティの問題や、溶解処理されるまでの間に一時保管されているときのセキュリティの問題に注意する必要があります。
詳しくは後述しますが、業者によっては、どこかの工程でセキュリティを十分に考慮できていない業者も存在します。そのため、業者を選定する場合は、必ず十分な情報セキュリティ体制が構築された業者を選ぶようにしましょう。
溶解処理は、段ボールのまま溶解炉で処理を行います。そのため、基本的に紙書類以外の混入はNGとなるので注意しましょう。具体的には、以下のようなものを一緒に入れることができません。
混入がNGになる代表的なもの | |
---|---|
外部媒体 | FD、CD、DVD、カセットテープ、マイクロフィルムなど |
布製品 | 制服、カーテンなど |
その他雑多物 | 陶器(食器・灰皿)、プラスチック、金属(缶)など |
なお、前述したとおり、溶解処理では書類についたホチキスの芯などを外す必要がありません。そうした「少量であれば混入しても大丈夫なもの」もあるのです。具体的には以下のものが挙げられます。
溶解処理は、廃棄書類が少量しか発生しない会社には不向きです。
溶解処理を依頼できる最小単位の量は段ボール1箱単位となります。そのため、1カ月で1箱(2,000~3,000枚)ぐらい廃棄書類が出る会社でなければ、シュレッダー処理の負担もさほど感じられないため、溶解処理のメリットを感じにくいでしょう。元々紙書類があまり発生しない会社(1カ月で1箱以下)では、溶解処理ではなく、シュレッダー処理で十分です。
では、実際にどのようなプロセスを経て溶解処理を行うのでしょうか。
溶解処理を行う際は、まず会社の方で溶解処理する書類を段ボールに詰めていきます。
書類を段ボールに収納する際、溶解処理できないものは除いて収納します(上述したとおり、ホチキス、クリップ、金具の付いたバインダーなどは少量であればそのままで大丈夫です)。大手運送業者に依頼する場合は、溶解処理専用の段ボールに収納する必要があるので、普通の段ボールを利用しないよう注意してください。
次に、業者へ連絡をとり、溶解処理の依頼を行います。
具体的には、電話やインターネットなどで段ボールの引き取り日程を取り決めます。連絡の際は、箱サイズや箱数、住所(エレベーターの有無)、担当者などの情報を伝えます。
翌日引き取りが可能な業者もありますが、余裕を持ったスケジュールで調整することをおすすめします。
業者に引き取ってもらい、溶解処理が完了すると、溶解証明書が送付されてきます。溶解処理証明書とは、機密情報を完全に消去したことを証明する証明書のことで、機密情報の削除履歴を管理するうえで重要なものです。溶解証明書については、インターネットからダウンロードするタイプの業者もあります。
注意が必要なのは、溶解証明書が発行されるタイミングについてです。溶解処理工場の稼働状況によっては、証明書の発行までに時間がかかります。通常であれば1週間程度で発行されますが、遅いときは1カ月程度してから発行されるケースもあります。近年では溶解処理のニーズが高まっているので、証明書の発行に時間がかかっているともいえます。
溶解処理業者を選ぶ際は、以下のポイントを抑えるとよいでしょう。
一般的には知られていませんが、溶解処理サービスを提供している業者は「大手運送業者」「廃棄業者」「文書保管倉庫業者」の3つのタイプに分類することができます。3つの業者の概要や特徴、利用するのがおすすめのケースは以下のとおりです。
大手運送業者 | 廃棄業者 | 文書管理倉庫業者 |
---|---|---|
ヤマト運輸など、大手の運送会社が溶解処理のサービスを提供しているケース。 |
事務所移転などに伴う事務機器・OA機器の廃棄を行うとともに、書類の溶解処理も行っているケース。 |
文書を専門に保管する倉庫業者で、保管期限が過ぎた書類を溶解処理するサービスを提供しているケース。 |
【特徴】 |
【特徴】 |
【特徴】 |
【注意点】 |
【注意点】 |
【注意点】 |
上述したとおり、溶解処理を行っている業者のなかには、情報セキュリティの面で不安がある業者もあります。
情報セキュリティの体制が整っているか確認する際は、まず認証取得の有無を確認しましょう。
具体的には、Pマーク(個人情報の保護体制に関する認証制度)や、またはISO27001(情報セキュリティマネジメントシステムに関する国際規格)を取得しているかどうか確認します。
また、PマークやISO27001の取得に加え、ISO9001(品質マネジメントシステムに関する規格)を取得している会社であればなお安心できます。大手金融機関では、独自のチェック項目を用いて、溶解処理業者のセキュリティ体制を事前に確認しているケースもあります。例えば以下のようなチェック項目があります。
すでに触れたとおり、溶解処理を依頼すると溶解処理証明書を発行してもらえます。この点は情報セキュリティの観点から重要なポイントなので、証明書を発行するか必ず確認しましょう。
なお、溶解処理サービスを提供している業者のほとんどは、最終処理工場(主に製紙会社)で溶解処理を行っています。そのため、最終処理した業者の証明書も一緒に記載(添付)しているかを確認することも重要です。なぜなら、最終処理された業者の証明書がない場合、途中で焼却処分などされていても判断ができないからです。
冗談と思われるかも知れませんが、オフィスの引越しで発生した廃棄物をトラックの荷台(BOX車両ではなくシートを被せるタイプ)に積み込み、空いてるスペースに溶解処理対象の段ボールを置いて輸送されたケースがありました。
このように輸送時のセキュリティに問題がある業者もいるわけです。そのため、輸送時に施錠ができるBOXタイプの車両で輸送しているか確認する必要があります。
前述した文書保管倉庫会社の場合は、書類の段ボールのみ日々運搬しているので、輸送時のセキュリティも含め安心して依頼することができます。
昔は、溶解処理できない物(金具・ビニールシートなど)を除去するため、箱を開封して金具などを取り外してから溶解処理をしていました。
現在でもそのように開封を行って溶解処理するサービスもあります。しかし最近では、未開封のまま溶解処理するサービスもあります。
セキュリティを重視する企業や、機密性の高い書類を処理する場合などは、未開封で溶解処理を行うサービスの利用をおすすめします。ただし、未開封処理の場合は事前開封される場合と比べて料金が高くなります。
溶解処理サービスを提供している業者のなかには、最終処理工場(主に製紙会社)への立ち会いを依頼すれば現場で確認させてくれる業者もあります。視覚的に確認させてもらえるサービスは、特別重要な書類など、必ず最終工程まで確認する必要がある場合には必要になるものです。
最近では、溶解処理の動画サービスを提供している業者も出てきているので、気になる人は確認しましょう。
最後に、溶解処理を行っている業者の例について紹介します。情報セキュリティの面で十分に信頼できる、代表的な業者としては、以下のところが挙げられます。
大手運送会社のケース | 文書保管倉庫会社のケース |
---|---|
【関東地域の文書保管倉庫会社】 【関西地域の文書保管倉庫会社】 |
前述したとおり、大手運送会社による溶解処理サービスは、地方の会社でも利用しやすいといったメリットがあります。しかしその一方で、溶解処理をメインで行っている業者ではないため、料金が比較的高く設定されています。
関東や関西の主要都市で活動している企業であれば、文書保管倉庫会社の溶解処理サービスを検討するのもよいでしょう。
一括りに溶解処理サービスといっても、業者によって得意分野と不得意分野が異なります。この記事で紹介した内容を参考にして頂き、自社に合致した業者を見つけてみてはいかがでしょうか。
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